淡い気持ちを抱く私と消え去った君

猫部&KKG所属な茶都 うなべ

この手紙に託して

 23時50分。冬の夜の寒さも相まって、海岸はとても寒い。しかしあと10分の辛抱だ。10分我慢して、この手紙想いを海に投げれば、この淡い気持ちとおさらばできる。これは3ヶ月、私が苦しんだ末に出した私の恋の終末エピローグだ。

 クリスマスまで、あと5分。雪が降ってきた雪の冷たさを味わいたくて、私が今ここに生きてるって実感したくて、まぶたを閉じる。海の香りが私にある風景たちを思い出させる。夏、砂浜で遊ぶ私たち。私のことを優しい微笑みで見つめる彼。私のことが好きな君は、もう私の記憶の中にしかいない。

 それがひどくひどく苦しいし、悲しいし……寂しい。

「12月25日0時0分、誕生日おめでとう。創馬」

 思いっきり海に投げよう。この手紙を、この淡くて切なかった気持ちを。

 いざ、投げようと思っても、体が動かない。

 彼に嫌って欲しくて、忘れて欲しくて、私はここまでやってきたのに。いざとなったら何もできない。

 実際、彼からは嫌われて今に至る。私はこの海に手紙だけではなく、自らをも投げてしまいたかったのだろう。

 だけど、何も動かせない。寒さも、暑さも、眠気もわからない。ただ、あの人を思う気持ちだけはまだ感じることができる。

「こんなにも好きなのに私は……」

 ただ、何もできず。1人私は涙を流していた。

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