家族の全肯定
- ★★★ Excellent!!!
私は親が嫌いです。30代の息子の誕生日に60代の母がケーキを買ってきてくれました。私が食べていると「ぼく、おいしい?」とまるで私が小学生のように尋ねてきました。30代のおじさんは言葉が出なくて返事ができませんでした。
父は地元の公務員募集要項を嬉しそうに私に送ってきます。あなたの息子は都会でアートに人生を捧げてやや失敗してるけど幸せなのに。
小学生の私はもういません。公務員になりたい私はどこにもいません。彼らが私でない人に話しかけているから私は返事をしません。後は葬式にだけ行けばいいかなと思いながらやはり少し罪悪感があります。
なぜおじさんの身の上話をひと様のレビューにつらつら書いているかと言えばこの物語がそんな私さえ肯定してくれたように感じたからです。
社会や思想が家族の役割を個々人に押し付けてきます。ですがそんな普通ではなく、血が通ったあなたが感じたことが正しい。そう教えてくれます。
この話は決して私のような変わった人だけを救いあげるための話ではないことがなにより素晴らしい。暖かい家庭も仲の悪い家庭も、正しいのだと肯定しているように思います。正でも負でも血が通った家族がお互いに抱く感情すべてそれでいいのだと私は読み取りました。
家族は役割の押し付け合いではない。あなたが家族に抱くいかなる感情もかけがえなく大切だ。そんな物語なのだと思います。おすすめです。