私が勃起(♀)したからお姉様を食べる


「結婚しましょう。妊娠してくれませんか、唯お姉様」


「……は?」


「一目惚れした。大好き。見た目がすっごく性癖にストライク。今すぐ妊娠して。そして私の子供を産んで。そしてお姉様の顔面にそっくりな男の子を産んで近親相姦させて3Pするわよ、唯お姉様」


「…………は?」


「は行から始まる返事の言葉の『はい』ね。両思いね、嬉しいわね、当然ね。それでは早速初夜しょやりましょう。本日は絶好の青姦日和よ、唯お姉様」


「………………はぁ⁉」


 初対面の人間に、それも同性の年上の人間に、何度もセクハラと痴漢を受けてきたこの僕を黙らせるほどの勢いと性的語彙力。


 間違いなく、彼女は今までに遭遇してきた変態を優に超す大変態だった。


「ご、ご、ご主人様!? へ、変態ですこの人! た、助けっ……⁉」


「――――――?」


 助けを求めるべく、僕の近くにいる百合園茉奈に声を掛けたが、その彼女もいきなり現れた変態の突飛な言動を前にしてフリーズしていらっしゃった。

 

「フ。あら3P希望だったの? だけど残念、今日は初対面だから2人だけで愛を囁き合いましょう。さぁどうする? 妊娠する? もしくは妊娠する? それとも……に、ん、し、ん? いいのよ、どちらでも。四の五の言わずに性行為と洒落込みましょう」


 というか! 

 僕は!

 男!


 なので妊娠なんて生物学的にも不可能だ!


 ……とは、口が裂けても言えないっ!

 僕の女装事情を知っているお嬢様ならいざ知らず、そんな事を一切知られていない赤の他人にそんな事を言える筈がない!


 だって、今の僕は性別を偽ってここにいるのだから!

 性別がバレてしまう事は、僕が社会的に死ぬ事を意味してしまうのだから!


「……って、ちょっ⁉ やっ! やだっ! いきなり僕の制服を脱がそうとしないでくださいっ!」


「フ。どうしてこんな美少女を前にして制服を脱がないの? 性欲と常識がないの?」


「常識がないのはどう見ても貴女の方ではっ⁉」


「まさか……脱衣無しプレイ⁉ 確かに百合園女学園の制服を着ているのにそれを利用しないだなんて余りにも勿体ないわ……! まさに灯台下暗し! 女性器膣内なか暗し! 貴女の変態レベルが余りにも高すぎてこの私がついていけないだなんて……! 流石は唯お姉様! 好き! 妊娠して! 一生のお願いだから孕ませて! 何なら10回ぐらい貴女を孕ませたい!」


「嫌ですっ! 本当に何ですか貴女⁉ 冗談抜きで警察呼びますよっ⁉」


「フ。セクハラ慣れされている人間ならではの迅速かつ鉄壁の対応。汚れを知らない綺麗な顔をしているのに唯お姉様はもう他人にとことん汚されて警察の方々と肉体関係を持っているのね。……フ。そんなの私の心のアンテナがってしまう。最高。お願いだから孕んで欲しい」


「最低なセクハラは止めてくださいませんか⁉」


「フ。今の発言のどこがセクハラになるのかしら唯お姉様。無学な私にも分かりやすいように具体的に教えて下さらない? 私の発言のナニが男性器を彷彿させるですって? ほら。ほらほらほらほら! 孕めホラァ!」


 全然知らない美人の女の子に詰め寄られてしまうというシチュエーションに、少しばかりの憧れがなかったとは断言できない。


 だが、それは傍目から見る分には楽しいのだろうけれども、当事者になればとても恐ろしいモノに早変わりするのだと僕は思い知らされていた。


「フ。流石にこれ以上のセクハラは流石に止めときましょうか。ごめんなさい、唯お姉様。今のは次の演劇で演じる男役。私は演劇部部長なものだから初対面の人の反応を知りたかっただけなの。不快な思いにさせてごめんなさい」


「そ、そうですよね! ほっ……それなら良かった。今のが先輩の素のキャラクターなのかと」


「フ。素よ」


「…………は?」


 何か我ながら素で冷たい声が出てきてしまった気さえするのだが、当の彼女は至って平静であった。


「フ。どうして本気で信じているのかしら? 今のは処女膜を破瓜させた時に出てくる鮮血のように真っ赤な嘘。素の私はセクハラ大好きな超絶清楚な美少女なの。だって苗字が下冷泉よ。下冷泉のは下ネタのよ。由緒正しき旧華族の下冷泉の苗字が美少女を同じ苗字にするように孕ませろと囁くの。安心しきった唯お姉様の表情に絶望の色を加えさせるの最高に楽しいわ。楽しすぎて女性器から愛液が垂れてくる」


「……嘘、ですよね……?」


「フ。今の私はノーパンだからスカートの中がグチョグチョよ。それでもこの情欲は本心。私は貴女の顔と身体と女性器が好き。大好き。だから私は貴女を犯したい。どうか貴女は私に犯されてほしい」


「どうして初対面の人にそんな最低な事をやろうと思うんですかっ⁉ どういう頭してるんですかっ⁉」


 何だろう。

 この人は間違いなく愉快な人なのだろうけれど、話をしているだけでもごっそりと体力を奪っていく類の愉快な変人だった。


 他人事として遠くから見る分には何ら問題はないけれども、いざ彼女に当時者として関わる分にはごめん被るとしか言い様が無い類の変態だった。


「フ。そういう訳で改めて自己紹介。私の名前は下冷泉しもれいぜい霧香きりか。百合園女学園の高等部3年生の演劇部部長で見ての通りの純粋無垢な美少女。そして処女。そしてノーブラ&ノーパンの床上手。これは好きになる要素しか詰まっていない清楚系美少女の評価待ったなし」


「……まさかの先輩……? コレが……? ……私より一学年上……? ……こんな常識に欠けているとしか思えない生命体が……⁉」


「フ。唯お姉様からそんなありえないモノを見るかのような視線で見られると興奮する」


「あの、下冷泉先輩、でしたか」


「フ。3サイズの質問? あらやだ変態。B87のW57にH88よ。聞いたわねこの変態。これは責任を取って結婚するしかないわね。私は全く不束者ではないけれども宜しくお願いするわね」


「そんな事は本当に全く聞いてません……先輩はどうして私の事をお姉様って言うんでしょうか? 話を聞く限り、私は先輩よりも年下の筈なのですが」


 お姉様。

 本来であれば自分よりも先に生まれた存在に対する敬称であるのだが、生粋のお嬢様学園である百合園女学園においてはその言葉の持つ意味が変わってくる。


 早い話が、自分よりも年上の女子生徒であれば血縁関係がなくてもお姉様と呼称するのがここ百合園女学園の暗黙の了解だと小耳に挟んだ事はある。


 そういう訳で僕は愚かにも、その疑問をこの常軌を逸した日本語みたいな言語で喋り続ける変態に聞いてみた。


「フ。直感。私の全細胞が貴女の妹になりたがっているの。それ以外の理由がいるかしら」


「先輩はすっごく気持ち悪い直感と細胞をなさってますね」


「フ」


 どうやら彼女は本能に従って生きているタイプの人間らしく、彼女にとってのお姉様とはどうにも概念的な存在であるらしかった。


「――はっ。し、下冷泉先輩……! 我が学園の生徒であるのなら、そのような下品な言動は止めるようにと何度も私は言っているだろう……⁉」


 先ほどから不動の姿勢のまま、目と口をぱくぱくと開け閉めしては理事長の椅子に座っていた百合園茉奈だったが、我を取り戻した彼女は顔を思い切り赤面させてはセクハラに対する注意喚起を下冷泉霧香に対して投げかける。


 だかしかし、当の本人は涼しい表情のまま聞き流している始末だった。


「フ。学院内の私は成績優秀かつ品行方正だと思う。むしろ女子寮の個室にエロ本を隠す茉奈さんの方に問題があると思うのだけど」


「それは……そうだが……! いや、本当にそうだけど……! どうして学内ではあぁなのに私の時だけその態度なんだ……⁉ って! 私がエロ本持ってる訳ないだろう⁉」


「フ。ベッドの下の金庫。パスワードは茉奈さんの誕生日。男の娘モノ。3月が終わってからずっと男の娘モノにハマったわね、茉奈さん」


「ああああああああああああああああああああああああああああ⁉」


 いきなり大きな声を出しては悶絶し、その場に座り込んでは大量の胃薬をヤバいブツのように摂取する茉奈お嬢様であった。


 驚いた。

 あの茉奈お嬢様がこうも一方的に可愛がられるだなんて、目の前にいるあの変態はかなりのやり手なのかもしれない。


「ちょっと待ってくださいご主人様。この人、本当に学内では真面目なんですか? こんなのが? 嘘でしょう?」


 初対面でもどうしようもない人間だという事しか分からない下冷泉霧香が学内では普通に真面目であるという事実が私にはどうしても理解できなかったし、想像もできなかったのだが、そんな僕に対して下冷泉霧香は勝ち誇るような薄笑いを浮かべながら答えてくれた。


「フ。要するに私がそういうとして女子生徒に接すればいいだけ。私ね、善人を演じて純粋無垢な女の子を騙してエッチに少しずつ調教させて私無しでは生活できないような変態に育成するのが性癖なの」


「小賢すぎて本当に最低ですね」

 

「……まぁ、何だ……。これが百合園女学園の高等部3年生1番の美人と噂される下冷泉先輩だ。何だかんだで私と合わせて学内2大美女だと周囲の女子生徒が勝手に言っているが……聞いて分かる通り、彼女は変態だ」


「フ」


 どうにも彼女は僕から侮蔑の視線で見られるのがとてつもない程に嬉しいらしく、両頬を恋する乙女のように赤らめている始末であり、本当に救いようが無い変態だった。

 

「……本日はどういう目的でやってきた? 演劇部の部費についての件は以前に話したように増やすつもりだと言っておいた筈だが」


「フ。部費の話じゃない。今日は演劇部関係で来た訳ではなくて、余りに暇だったものだから茉奈さんで遊ぼうと思って来ただけだったのだけど……フ。とんだ掘り出し物だわ。涎と性欲に愛液とムラムラが止まらない」


 本当に嫌そうな表情を浮かべている百合園茉奈とは対照的に、奇天烈極まりない変人である下冷泉霧香は四つん這いの状態で僕の表情を覗き込んでは薄笑いを浮かべている……どころか、僕の脚まで近づいては黒タイツをくんくんブヒブヒと匂っている始末である。


「フ。フヒ。ブヒヒ。この清楚系美少女である私がメス豚になっちまうメスの匂いしてるわねこのお姉様……!」


 なんだ、この人。

 本当にメス豚であらせられるのか、この変態。


 だが、彼女が高校3年生という事実はある意味では吉報かもしれない。


 というのも、この変態と僕が出会ってしまったのは全くの偶然……何とも質の悪い事故のようなもの。


 もしも仮にこの変態と同じクラスだとか同じ学年だとすれば、学校であんな変人っぷりを周囲に披露させられるものならば僕は間違いなく奇異の視線に晒されるだろう。


 そういう意味で考えるのであれば周囲に人がいない今のタイミングで彼女に遭遇したと考えれば、逆にタイミングが良かったと思うべきだろうか。


 ……いや、でも彼女は確か学校では品行方正な優等生というキャラで通しているのだったか。

 

 そう考えるのであれば、先ほどの仮定の話はさほど意味がなくなる。


 何せ、彼女が僕よりも一学年上の先輩という立ち位置である以上、学校生活で彼女と関わる機会なんて滅多に無い筈なのだから。


「そうか。なら話す内容はもうないな? 帰ってくれ。死ねとは言わないから消えろ。頼むから私をこれ以上不愉快な思いにさせるな。先輩と話すといつも常備している胃薬が無くなって仕方が無いんだ……!」


「フ。そこまで頼まれたら仕方ないわね――と、以前の私なら答えていたのでしょうけれど、唯お姉様から直々にメス豚調教を施された天使ブランドのメス豚にして、顔面国宝超絶天才演者にして1000年に1人の美少女メス豚である私はそう答えない」


「頼むから彼女に、唯に、この学園はおかしいのではないかと思わせないでくれ⁉ 彼女は今日から百合園女学園に所属するだけでなく、女子寮を利用する手筈になっているんだぞ⁉ 百合園女学園の厳格なイメージを先輩の所為で損なわせるのは本当に勘弁してくれお願いだから!」


 もしも視線に殺傷能力があったのなら、お嬢様の視線は人を余裕で殺せていたのだろうけれど、残念ながら変人である彼女に対してはノーダメージどころか逆に回復させている始末。


「――フ。なるほど、女子寮」


 そして、当の変態は底知れない不敵な笑みを浮かべていた。


「フ。1つ要件が出来てしまった。理事長代理である茉奈さんに問い合わせるべき案件が」


「……な、何だ……?」


「フ。


「――は?」


「だって、唯お姉様がいらっしゃるのでしょう? であれば妹である私も入寮して唯お姉様から直々に調教して頂くしか選択肢はない。それに私は学内では品行方正で真面目で優秀で優等生にして模範生にして超絶美少女。学校側からしてみても断る理由なんて無いでしょう。良かったわね茉奈さん。今日から貴女と私は唯お姉様の膣姉妹よ」


 とても理解できない思考回路から繰り出される変態の言葉を耳にした僕の主人は「おなかいたい」と泣きそうな声を出しては、腹を両手で抑えながら崩れ落ちた。


 あぁ、僕も胃薬とか欲しいなぁ。

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2024年12月30日 07:21

無自覚に飯テロと性癖破壊テロを繰り返す聖女様の処女が勃起(♂)したら私が死ぬ 🔰ドロミーズ☆魚住 @doromi

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