クリスマスイブ(聖夜)

由南りさ

第1話 聖夜(クリスマスイブ)

 ねぇ、葉月さん覚えてる? 

 僕たちの出逢いを。

 

 2018年のクリスマスイブ、

あの日も月が綺麗だった……。

 

 月の光に照らされて隣で眠る

あなたを見た僕は、

あの瞬間……あなたに恋をした。


 月明かりの公園……。

 運命に導かれるように、

涼はベンチで眠る

葉月のもとにゆっくりと歩き出した。

 

 ひとつの石がふたつに分かれた時、

ふたりの物語がはじまった……。


 静寂の中、月の光が、

あなたが座るベンチまでの道のりを

青白い光で導いてくれる。

 そう、その光景は、とても幻想的で、

月の光はまるでスポットライトのように

ベンチで眠るあなたを照らしていたんだ。

 これが僕らの出逢い。

 

 さっき偶然立ち寄った骨董店の店主から

お礼にと、わざわざストラップにして貰った

 『琥珀色に光る石』。

 

 店主はこの石にまつわる

古い言い伝えを教えてくれた。


 「俺は、この光る石は、このようにふたつに

分かれます……。

 この石を手にした者同士は、

たとえ離れた場所にいても、

互いを引き寄せる石の力で、何年、何十年

かかっても必ず出逢い結ばれる。

 なんとも、作られたような言い伝えで

すけどね……」と。


 だから、僕はあなたとの別れ間際に、

この『光る石』を携帯に結びつけた。

 ベットで眠っているあなたに

見つからないようにそっと……。

 

 あれから、どれくらいの時間が

過ぎたのだろう。

 僕は、スマホの画面を見ながら

あの夜のことを思い出す。


 夜空を見上げると、

白く、フワフワとした雪が

そっと僕の頭の上に落ちて来た。


 吐く息が白い、今年のクリスマスイブ。


 キラキラと光を放つ『琥珀色の石』。

 その輝きに気づいた僕は、

スマホを耳に当てた。


 「涼くん、どこ?」

 人混みの中で不安そうに話すあなた……。


 「葉月さん、ここだよ……」

 僕は一言だけ言葉を発した。


  

 ベンチに座る僕のもとに息を切らして

駆け寄ってくるあなた。


 僕の目の前には、あなた……。

 あなたの目の前には僕……。


 互いに見つめ合い優しく微笑むと、

 「今年は、一緒にいれるね」

 「そうですね。素敵なクリスマスイブだ」


 そう言葉を交わすと、

僕たちは、クリスマスイブで賑わう

人混みの中に消えて行った。


 

 素敵なクリスマスイブに

なりますように……と願いながら……。


 ~完~

 

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クリスマスイブ(聖夜) 由南りさ @yaku7227

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