僕は実家の近くにある喫茶店に、毎日通うことにした。

毎日、同じ色の服を着ていくのは正直恥ずかしい。

ラジオの話を知らなければ格好のいじりネタだ。

きっと店員にはクスクス笑われているに違いない。

けれど僕は通い続けることにした。

それがおじさんへの礼儀に思えたから。


あれから、旅に出ているとき以外は毎日喫茶店に通っている。

顔も覚えられてしまったので、マスターには事情を話した。

今ではもう顔パスで入れる店だ。

ネットにいたみんなが、あの日のラジオを聴いていた可能性はどのくらいだろうか。

もし誰も聴いていなかったとしたら、ここで待っても未来永劫会うことはない。

いや、聴いていたとしても僕に会いたい人はいるのだろうか。


インターネットがないと不便だ。

話したい人と話すことすらできない。

僕は今でも、毎日スマホのSNSアプリをタップする。

リア充になんかなれやしない。


インターネットは秋には復旧するらしい。

製品の調達が完了し、全て置き換えるようだ。

これでもまだ繋がらなければ、海外に出ようか。

みんなはもう海外でインターネットをしているかもしれない。

海外の街を散策するのも楽しそうだ。

でも、お金がないからそれも無理か。

コーヒーが名残惜しいけど、もうバイトの時間だ。

今日も誰とも会えないまま、喫茶店を後にする。


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インターネットが使えなくなった cloned @cloned

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