第2話 おかしい

はじまりから次のことが起きるまでの間は長かった。

私もはじまりをすっかり忘れていた程だった。

中学二年生の夏頃、部活で遠征に行った時の事だった。

部活動の友人と遠征先の学校で御手洗に向かって歩いていると、手に人型のおもちゃを持った小さな男の子が5メートルほど先を横切った。

「相手校の弟さんとかかな?」

私がそう聞くと、友人は言った。

「何の話?」

私は小さな男の子が廊下を横切ったことを確認した。友人は首を横にふる。

私たちは男の子が横切った場所まで走って向かった。そこには誰もおらず、男の子が消えた先には、少し古い女子トイレがあるだけだった。

私は見間違いではないかと問われる。だが、絶対に見た違いなんかではない。

そのはずなのに、男の子はどこにもいない。トイレを開けてみても、中を確認しても誰もいない。

果たして、男の子はどこに行ってしまったのか。

友人にどんな男の子だったのか聞かれた私は口を開いたが、何も言えなかった。

思い出せなかった。と言うより、分からなかった。男の子だと思ったのは何故なのか、どんなおもちゃを持っていたのか。

その子の顔も、足も私には見えていなかったのだ。そこだけ黒くモヤがかかったように、まるで最初から、顔も足もなかったかのようだった。


私はようやく気づいたのだ。

「おかしい」ということに。

私には、確実にがみえていたのだ。

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みえちゃった @suzu_myu

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