決められないこと

もちっぱち

高校生の受験勉強

「あーー、勉強やだなぁ」


 今年、高校3年生の有希子ゆきこは、大学の受験勉強を彼氏の家でやっていた。過去問の模擬試験を時間を測りながら、やり終えてつぶやく。テーブルに体をゆだねた。


「はい、お疲れさん。はい、生姜湯入れてきた。風邪予防になるよ」

「ありがとう。あったかいなぁ。いただきます」

 

 裕翔ゆうとは、母に頼まれた生姜湯をトレイに乗せて持ってきた。チョコレートのお菓子つきだ。


「調子どう?」

「やっと1枚終わったところだけど、1問だけ全然わからなくて空白にしちゃった」

「え、もったいないな。わからなくても、マークシートなんだから色塗っておきなよ」

「だって、自信なくて、やれるところ次々やりたかったから」

「……有希子、それはやばい」

「裕翔はどうするのさ? 自信なくてわからない時」

「俺は、ほら、これ」

 

 テーブルに置いてあった鉛筆を転がした。頭に疑問符を浮かべる有希子だ。


「4つの選択肢があったら、この辺に番号振って転がすのよ。まぁ、運試しね」


 裕翔は、鉛筆の端の方に数字を書いて転がした。


「迷わないっしょ、これなら」

「あー、そういうことか。空白にするよりいいよね。それなら」

「無駄になるから点数。せっかく取れたかもしれないんだから」

「書かないとね。ありがとう、参考になった」


 有希子は続けて過去問を解き始める。眼鏡が曇るがすぐにふき取る。裕翔は、ずっと有希子の様子を見続けていた。

 2人でいる時間がもったいないと感じるのは自分だけだろうかとふと思ってしまう裕翔だった。



【 完 】



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