第6話 また、凧を揚げよう

 ぼくはウォルトの後を追うように滝壺に落ちた。「助かった」と涙を流すビリーと、ウォルトの濡れたスーツだけがボートに残っていた。ウォルトの姿は、もうどこにもなかった。


 ……ぼくは、またウォルトを救えなかった。


 スーツの中に、一枚の赤いベストがあった。ウォルトによく似合う、赤いベスト。それはよく見ると、形が変わっていた。木で張った骨がある。凧だ。ウォルトに渡した黒焦げの凧が、真っ赤に蘇っている。

 ボートは、アトラクションのエンディングの前にたどり着いていた。

 帰ってきたぼくたちを迎えるように、オーディオアニマトロニクスの動物たちが高らかに歌っていた。


 笑おう さあ笑おう

 君は この世の素晴らしさを 知っている

 歌おう さあ歌おう

 声は 風にのり 凧が舞う

 笑えば 明るい世界

 暗闇なんて 思い込み 

 だから笑おう さあ笑おう

 いざや みんなで 笑い合おう


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ラッキーラビットとスプラッシュヒル 山門芳彦 @YYgarakutalover

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