おれたちの秘密: Throw you to the lion(s)

長尟たぐい

🊁

 俺は匟より五分早くこの䞖に生たれた。

 倧抵のこずは俺の方が早く、そしお芁領良くこなした。匟に手を貞すのを面倒に思ったこずはほずんどない。しかしそれでも、俺が今からするこずを思っお溜息のひず぀くらい぀いおも蚱されるはずだ。


 そんな兄の心䞭を党く察するこずなく、英人ヒデトははしゃぐようにタトゥヌたみれの右手の指先で階段の先を瀺す。ややき぀い募配の階段を昇るず、重厚な朚補の扉があった。ドアノブは回転匏だった。巊利きは優しくないそれを、手銖を捻っお回し、扉を開ける。倧正時代に建おられたずいう和掋折衷圢匏の建物の䞭で唯䞀完党な掋颚造りの郚屋の䞭は、予想に反しお片付いおいた。


 しばらく立ち入る者のなかった郚屋はやや埃っぜい。窓の朚枠に付けられたねじ蟌み匏の鍵を倖しお窓を開け攟぀。

 郚屋の右偎の奥には倩板の䞋に薄い匕き出しが二぀぀いおいる机、巊偎には造り付けのクロヌれット。どちらから取り掛かるべきか。


――Docchi demo iiyo.


 英人はベットの䞊に飛び蟌んで音がしそうなほど倧きな欠䌞をしおいるので、どちらでも良いらしい。ならば面倒な方から取り掛かろう、ずゆっくりずクロヌれットの戞を開ける。䞭身は予想通りずいったずころだ。目線の高さの䜍眮に安っぜい突っ匵り棒が取り付けられ、そこにチンピラ趣味の服がいく぀もぶら䞋がっおいる䞀方で、床面には䞀目で造りが良いずわかる腰ほどの高さの和箪笥が眮かれ、空いたスペヌスには倖囜のものらしき民具や朚圫りの人圢などが鎮座しおいる。英人の脳内を写し取ったような混沌が目の前に広がった。詊しに䞀枚掎んだスカゞャンの背䞭には、金の糞で芋事な獅子が瞫い取られおいた。


――Kite, miru?


 気づくず英人が傍に立っおいた。その芖線は和箪笥の䞀番䞋に泚がれおいる。俺はスカゞャンを手攟し、しゃがみ蟌んで抜斗に巊手を掛ける。数センチ開いたずころで䜕かが匕っかかった。䞭身が䜕かは知らないが物を詰めすぎおいる。敎頓ずいう抂念が英人からほど遠いものだずはわかっおいおも、腹立たしい。右手を箪笥の䞊方に圓お、苛立ちを巊腕に蟌めお抜斗をもう䞀床匕く。

 䞭身は党お同じ皮類のA4サむズのノヌトだった。茶色の衚玙に黒のフェルトペンで通し番号が曞かれたそれらが䜕なのか、俺は知っおいる。

「日蚘、取っおあったのか」

 英人は黙っお頷く。

 ひらがなの「ぬ」の正しい曞き方、カタカナの「゜」ず「ン」を曞き間違えないようにする方法。ふたりの名前を挢字でどう曞くか。それらの党おを俺が英人に教えた。

「字だっお俺の方が芚えるのが早かったからな」


――Alphabet no hikkitai ha ore no hou ga hayakattayo.


 そんな倧口を叩いおもいいのか、ずばかりに英人は目を现める。俺がこういう仕草をするず、盞手は怯えるか怒り出すかのどちらかだが、こい぀が同じこずをしおもそうはならない。俺ずほずんど同じ顔の造りをしおいおも、英人にはなぜかそうした愛嬌があった。

「ああ、でもアルファベットはそうでもなかったか」


――Are no, toku ni hikkitai ha e mitai na mono dattakara.


 抜斗からノヌトを䞀冊取り出しおその衚玙を撫でる。だが、それ以䞊指を動かす気にはならなかった。


 リンゎヌンず重たいチャむムの音が沈黙を砎った。俺はゆっくりず窓蟺に近づき、カヌテンを掻き分ける。


――Lion ga kita.


 英人が子どものように倧きく腕を振る。門扉の向こうに立぀人物がこちらを芋た。無造䜜に䌞びた髪に亀じる金色は、薄暗い曇倩の䞭でも光っお芋える。初めお䌚った時より随分ず身長が䌞びた圌の姿は、前よりも英人に䌌おいる気がした。


   


 倧孊の講矩ぞ半幎近く出垭せず、おたけに䞋宿先から姿を消した英人を探せ。連絡をするず返事はあるから生きおいるはずだ、ず䞡芪に呜じられたのは、俺たちが二十歳の誕生日を迎えおから半幎経った頃のこずだった。その䞉日埌、俺は薄暗くおガラクタがあちこち転がるだだっ広いガレヌゞの䞭で英人ず顔を合わせた。


 その倖芋は半幎前、俺たちの成人を祝うために集った芪戚たちの前で「矎術の孊びにいっそう励み、VUCA時代を先導する皆さたを支えられる人物になれるよう努力いたしたす」ず頭を䞋げた時の、ぎっちりず撫で぀けた黒髪ず正装からは皋遠い姿をしおいた。Volatility倉動性ずUncertainty䞍確実性に満ち、Complex耇雑でAmbiguous曖昧なのは時代ではなくおお前だ、ず蚀いたくなった。長く䌞ばした髪にはちらちらず金色が芗いおおり、腕や指のあちこちには墚が入っおいる。ただ、それらはグラフティにたみれ、幎代物のド掟手な赀い米囜車をはじめずした、さたざたなテむストのオブゞェが無数に眮かれたこの堎が醞す雰囲気によく合っおいた。

 それだけなら蚀うこずはない。問題は、英人の倖芋をそっくり真䌌た少幎がこの堎に居るこずだ。


「その䞭坊はなんだ」

「リオン。おれの匟子」

「  本圓に䞭孊生なのか」


 俺はガレヌゞの床に座り蟌む少幎を凝芖する。それが本圓ならメッシュはずもかく、圫り物を入れるこずは䞍可胜なはずだが。


「うん。リオンのは本圓のタトゥヌじゃなくお肌を染色するヘナ・タトゥヌだし、今だっお日は暮れおるけど、倜曎けに連れ回したりはしおないから心配しないでよ」


 俺の懞念を正確に読み取り、法什は砎っおいないので問題ないず䞻匵しおから、英人はこの半幎のこずを説明した。

 グラフティに興味を持ったが、それを倧っぎらにやるず芞術䜜品を貚幣の䞀皮だずしか思っおいない䞀郚の芪族から咎められるず思ったこず、それで䞀族の䞭で数少ない道楜者である倧叔父にそこを含めお盞談したずころ、この車が四台は停められそうなガレヌゞ付の家を貞し出しおくれたこず、偶然立ち入った公園でアスファルトにチョヌクで芋事な絵を描いおいたリオンず意気投合し、それから互いに垫匠ず匟子ず呌び合い぀るんでいるこず。

 俺はそこたで話を聞いたずころで、芪父たちには適圓に誀魔化しおおいおやる、ず溜息混じりに請け負った。


「ただし、倧孊は四幎で出ろ」

「はいはい、珟圹合栌、ダブりなし、卒業埌は広告代理店ぞの入瀟もしくは海倖倧孊院進孊で箔付しろっおいうあのプランね」

「あのさ」


 䌚話に割り蟌んで来た声は、ただ声倉わりすらしおいなかった。


「゚むトの話は嘘じゃなかったんだな」

「お前やっぱり信じおなかったのか」


 ひでヌな、ず笑う匟を無芖しお、俺は少幎に問う。


「  ゚むトは君に䜕ず」

「『おれは実は結構いいずこの坊ちゃんなんだ』っお。ちょっず疑っおたけど、あんたを芋たら本圓なのが分かった」


 そしお圌はこちらを舐めるように芋た挙句、錻で笑った。俺はこの生意気な子䟛を黙らせおやろうず、口を開く。その瞬間、䜕かが錓膜にぶち圓たった。反射的に手で䞡耳を芆う。それが有名な女性ラッパヌの曲のワンフレヌズだず気が付いたのは、ガレヌゞ内を跳ね回る残響が収たったころだった。


「  なんだ今の爆音は」


 ごめん、最近音量が突然倧きくなるこずがあっおさ、ずヘラヘラずした口調で謝っおから英人は少し身䜓を捻っお、自分の斜め埌方の倩井の䞀角を指さした。小孊校の教宀にあるような汚れたクリヌム色をしたスピヌカヌらしきものが芋えた。


「母屋からの呌び出し音。同居人の䞀人がお遊びで䜜った」

「ここをシェアハりスにでもしおいるのか」

「そう。今は党郚で四人いる。みんなビンボヌで有望。玹介するから呌んでくるよ。  な、心配ないだろ」


 俺の返事を埅たず、英人はそう蚀っお奥のドアから倖ぞ出おいった。

 そのたた突っ立っお埅぀のは埡免だったが、あいにく呚囲のどこにも怅子らしきものはない。俺は車に近づきボンネットに腰を䞋ろす。䜎い車䜓ず長すぎるボンネットずバンパヌがずにかく平たい印象を䞎え、本来は車を衝撃から守るためにあるバンパヌが装食的に尖るこずで生たれたテヌルフィンが攻撃的なシボレヌのむンパラ。よく芋るず傍にはどこから仕入れたのか、海倖アニメやドラマで目にするようなアメリカの雰囲気をたずった消火栓が眮かれおいる。


 俺ずもに残された少幎は、ガレヌゞの匕き戞の䞋もずにゆっくりず歩いおいき、豪快に音を立おお戞を開け攟った。倖は晎れおいお、癜くたばゆい光が差し蟌んできた。


「おれ、これからスプレヌ䜿うから倖に出た方がいいず思うよ、お兄さん。服にスプレヌが぀いたら倧倉でしょ」


 それは気遣いを装った、堎から盞手を排斥するための蚀動だった。そういったものには慣れおいる。それが自分に向けられた時は、堎合によっおは軜い嫌味のひず぀ぐらいは返すが、たいがい芁求自䜓には玠盎に応えるようにしおいる。面倒ごずを避けたいからだ。

 ただ、少幎のそれは正盎な敵意に満ちおいお、様匏めいたい぀もの行動を取るのがなんだか銬鹿らしく思えた。俺はボンネットから立ち䞊がり、手近に転がっおいた猶を拟い䞊げお䞊䞋に振る。カラカラず空虚な音がした。噎出口がどこかもろくに確かめずにノズルを抌し蟌んで、飛び出た青色の塗料を壁に吹き付ける。指先が汚れたがどうでもよかった。そうやっお曞きあげた自分の名前は呆れるほど歪だった。


「俺の名前は海人カむトだ。服䞀匏のどこが汚れようがどうっおこずはない」


 そうしお、ぜかんず呆気に取られたような幌い間抜け顔を軜く睚み぀けおやる。リオンは䜕かず評刀の悪い俺のそうした衚情に怯むわけでもなく、それどころか腹を抱えお笑い出し、そしお詊すような態床を取った自分が悪かったず詫びた。


「カむトず゚むトっお本圓に双子なんだ。怒り方がそっくりだ」


 そう蚀われるのはずいぶんず久しぶりのこずだった。その懐かしさに釣られたのか、気づいた時には先ほど呑み蟌んだ問いが口から溢れおいた。


「君は  なぜ英人を゚むトず呌ぶ」

「ヒデトはもう友達にいる、っお蚀ったらじゃあ゚むトでいいっお」


 シュヌ、ず圌は黒いスプレヌで足元に倧きくず描いた。俺は手に持ったたたのスプレヌ猶を䜿っお矎しい曲線の䞋にひず぀単語を添える。先ほどよりは幟分かたずもな線が匕けた。


「゚むト」

「なんだ読めるのか」

「ダンキヌぜいからっおなめんな」


 顔を顰しかめたリオンはガレヌゞのあちらこちらを歩き回りながら猶を拟い䞊げ、それらを䜿っお䜕かを描き始めた。俺は少し離れたずころでそれを芋守った。


「カむトはこれでいいだろ」


 グラフティらしい装食を斜されたその単語を芋぀め、俺は抌し黙った。なぜ、圌がこれを知っおいるのだろう。リオンがこちらの顔を䞍審そうに芗き蟌んでくる。


「――それならリオンはこうかな」


 い぀の間にか戻っおきた英人が、リオンの手からスプレヌを抜き取っおカラカラず猶を振り、壁面に黄色いスプレヌで単語をひず぀曞いた。


「ずころでカむト、今日はここで倕飯食べおいかない」


 俺が切り出し方に迷った疑問を抌し流すための問いかけだった。それを解った䞊で俺は返事をした。この霢の頃には、そうした暗黙の芁求に埓うこずにおれはもう随分ず手慣れおいた。


   


 あの時俺たちが曞いたものは、今、ガレヌゞのどこにも芋圓たらない。


「前に来た時はただ壁も床も芋えおいたが」


 そう俺が呟くず、英人は肩をすくめお笑い、リオンは少し目線を巊䞊に遣っおからむンパラの車䜓の䞋を指さす。

――Uwagaki ha graffiti no sadame dakara.

「このおんがろ車の䞋ならただコンクリが残っおるず思うけど」


 そしお英人はむンパラのボンネットに音もなく腰掛ける。リオンは拳でこ぀んずヘッドラむトを叩いおから、その足元に収たるように車䜓の前に腰を䞋ろした。


「で、俺に枡すものっお䜕。この車」

――Zannen dakedo chigauyo.

「さすがにそれはない」


 じゃあ䜕だよ、ずリオンは銖を捻る。俺は䞊着の右のポケットに忍ばせたそれに手を䌞ばす。

 同時に、ポケットの巊偎が振動した。取り出したスマホの画面に蚘された発信者名を確認し、俺は電話に出る。芁件はすでに決たっおいた事柄の確認で、至極手短に終わった。

 電話を切るず、こちらを芋䞊げるリオンず目が合った。


「お偉いさんみたいだな、カむト」

「ただ違う」

――"Ima ha" dattesa.


 英人はからかうように笑いながらリオンの髪を匄り回す。俺はリオンの泚意をこちらに向けるように、先ほど出しそびれた物を圌の目の前に出す。リオンはそれを受け取っおパラパラずペヌゞをめくっお䞭身を芋る。


「手垳 䞭身はスケッチず  なんだこれ、英語」

――Sore ha oretachi no himitsu nanda.

「ちがう。それは筆蚘䜓を䜿ったロヌマ字衚蚘の日本語だ。なあリオン――」


――どこに行くのか決められるのは自分だけだ。


 そう声が聞こえお、英人の右腕がぜん、ずリオンの肩を叩いた。リオンは誰もいないはずの自分の埌ろを呆然ず振り返った。


――Kate to Lion no futari nara yomaretemoiiyatuda. Lion, Itsumo hanashi wo kiitekurete Arigatou. Jya-na.


 そしお癜い掌をひらひらず振り、英人はその姿を消した。


「゚むト、本圓に死んじゃったんだな」


 リオンがぜ぀りず呟いた。そう、英人は死んだ。䞉か月前、亀差点で信号無芖をした車に撥ねられ、䞉日病院で粘っおそれから死んだ。俺は心電図の瀺すグラフが氎平になる瞬間を芋お、棺に玍められた硬く冷たい身䜓に觊れ、火葬堎で焌かれた骚を箞で摘み骚壺に入れた。俺の匟はこの䞖のもうどこにもいないずいうこずは俺が䞀番よくわかっおいた。だから英人の姿を取り、意味をなさない声を䞊げお目の前をうろちょろず動き回る人圱は、自分の脳が芋せる幻のようなものだず思っおいた。


 だから、それの身振りや聞き取れない声に察しお、俺はしたいように反応した。無芖したり、笑い飛ばしたり、呆れかえったり、跳ねのけたり、同調しおみせたり。䞖の兄匟たちが互いにそうするように。自分が内なる自分に察しおそうするように。

 でも、それももう消えた。本圓に、消えた。゚むト、本圓に死んじゃったんだな。リオンの蚀う通りだった。

 ある䜍眮で手垳を開いたたた、リオンはしばらく黙り蟌んでいた。そしお、静かに手垳を閉じ、こちらに向かっおずい、ずそれを突き出しおきた。


「カむト、これはおれのためのものじゃない。そうだろ」


 俺はリオンから突き返された手垳を芋぀める。

 幌い頃、俺たちはふたりでひず぀の日蚘を぀けおいた。互いの名前だけ発音の䌌た英単語で蚘し、あずはロヌマ字衚蚘の日本語をお䞖蟞には読みやすいずは蚀えない乱れた筆蚘䜓で綎っただけの拙぀たない暗号。倖来語の倧半をきちんず本来の英単語を䜿っお曞けるようになっおきたころには、ふたりずも飜きお途絶えおしたった俺たちの秘密。俺はそう思っおいた。けれど、英人の遺品のひず぀ずなったこの手垳は、その日蚘ず同じ方法で曞かれおいた。


 英人は俺にならこれを読たれおもいいず思っおいた。そうなのだろう。

 けれど、俺はこれを読むべきなのは俺ではなくリオンだず思った。軜くめくったペヌゞのあちこちに「Lion」ず綎られおいるのが芋えたからだった。Lion。それは動物のラむオン、ではなく英人の匟子のこずに違いなかった。


 英人ぱむトずも読めるから数字のeight、カむトはそのたた空を飛ぶ凧Kite。

 ふたりで぀けおいた日蚘のあちこちに散らばっおいたeightずkiteの文字はざっず目を通す限り、遺品の手垳の䞭には芋圓たらなかった。


「カむト」

 リオンがこちらを芋぀める。


「ふたりの秘密なんだろ。だったらちゃんず守れよ」


 そしお俺の迷いを芋透かすようにそう蚀った。俺は手垳を受け取った。ただ䞀぀、俺の耳に意味のあるものずしお届いた英人の蚀葉を心の䞭で繰り返す。


『どこに行くのか決められるのは自分だけだ』


 きっずこの手垳の䞭に、そういった意味合いのこずは曞かれおいない。俺ならそうしない。だからこの掚枬は倖れないだろう。


 ガレヌゞの倖は盞も倉わらず曇り空だった。

「お前はこれからどうする぀もりだ」


 俺はリオンに尋ねた。日蚘を枡したずき、本圓は「うちの支揎を受けお、海倖で矎術教育を受ける気はあるか」ず口にする぀もりだった。ここに䜏んでいた英人の同居人たちにそれぞれ孊びや掻動の支揎を打蚺したように。

 リオンの回答は明快だった。


「゚むトが䜜るはずだったもの、を越えるものを䜜る」


 匟子っおそのためにいるんだろ ず蚀い攟぀姿は、英人よりずっず䞍敵なものに芋えた。


「  もしそうなったら、俺が最䞊階に座るビルにお前の䜜品を食っおやる」

「そん時は、ビルに収たんないくらいでっかいのを䜜っおるかもよ」


 そう笑った埌に続いたリオンの別れの蚀葉は簡朔だった。きっず英人の最埌の蚀葉もそうだったのだず思う。こちらに背を向けたリオンが緩く振るうその腕にも、その指先にもタトゥヌがないこずに、今になっお気付く。

 雲の隙間を瞫っお光が䞀筋差す。金色に光る長い襟足は少しず぀遠ざかり、やがお芋えなくなった。あたりにはもう誰の気配もない。


〈了〉

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