いつか観覧車〜私も二人で
涼風岬
第1話
クリスマス当日、女子高生がショッピングモールに来てる。連れは兄だ。とある計画のために。
彼をショップに連れ込む。目当てのコートを手に取り、
「似合う?」
「あぁっ」
「可愛い?」
「キモっ!」
「お兄様、こちらを御購入致しますわ」
「んっ?」
上目遣いの彼女に彼は察した。
「金ねぇぞ」
「おバイトなさってるわ」
「そのお嬢様キャラなんだよ。ねぇぞ。金も」
「お兄様のお財布には
「見たのか?」
「えぇ〜?」
「大体、幾らだよ? それ」
「
「高っ! そんなには持ってねぇぞ」
「重々、承知しておりますのっ。御貧乏なお兄様に全額お出ししてとは言いませんのっ。
「てか、残りどうすんだよ」
「朝、スイス銀行から融資を受けてきましたのよっ。なかなかの強敵でしたの〜っ」
「母ちゃんから前借りしたのかよ」
「あっ! バレた?」
「ったく〜、仕方ねえな。ほらっ」
「メルスィ」
彼女は
「観覧車、乗りてぇのか?」
「ん〜っ、どっかなぁ〜?」
彼女は辺りを見回す。すると、前方から女子が二人来る。その中の一人に目配せした。
「あっ、先輩だ」
「あっ、マジ偶然じゃん。何してんの?」
「兄と買い物です」
「おやおやっ、
「おっ!
「本当ごめん、揺」
「もういいよ、恵」
「どした?」
「観覧車のチケット落としてさ」
「そっかぁ」
「先輩。私、コートを買ったらホント偶然チケット二枚貰えたんです。良かったらどうぞ」
「いいの?」
「もちろんですよ〜」
「でも、ウチ気分悪くてさ。揺、乗ってきなよ」
「でも」
「先輩、実は私も体調が良くなくてぇ〜。あっ、そうだ! 兄ちゃん、乗ったらいいじゃん?」
「えっ!」
彼女は兄に目配せする。絶対に断るんじゃないと。
「揺、行きなよ。あんなに乗りたがってたじゃん」
「そうだけどぉ。でも廻君が……」
「兄ちゃん! 観覧車、大好物じゃんね?」
「……おっ、おおっ。もし揺が嫌じゃなければ」
「揺、全然嫌じゃないよ」
「そっかぁ。じゃあ、行こっか?」
「うんっ!!」
初々しい二人は一緒に足並みを揃えて歩き出す。残った二人は温かく見守る。
「ちゃんと金出させた? 廻の金じゃないと意味ないし」
「四千円です」
「えっ! 二千円もボッタの?」
「マッチング料金ですよ〜、先輩〜」
「プラチケだしな。あ〜、ウチらクリスマスに何やってんだろ?」
「先輩が両想いだから引っ付けよって。絶対、クリスマスの日に決行しようって言ったじゃないですか〜」
「だったね〜、
「いいなぁ〜、二人で観覧車」
「ウチが買った二枚余ってっけど。乗る?」
「そういう事じゃないです、
「だよねぇ〜」
「
「ウチも、いつか乗りてぇ」
二人はライトアップされた観覧車を見上げる。
いつか観覧車〜私も二人で 涼風岬 @suzukazeseifu
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