7

「おっはよー」

「は?まい!?」

夏休み明けの大学。

着いてすぐ目の前に現れたのはまい。

「いつ会えるかわからないけどって、言ってたくせに」

「まぁまぁ落ち着きなよ。夏休み中に仕事はたくさん受けたから。あの後ちゃんとお母さんと事務所とも話して、とりあえず仕事をセーブさせてもらうことになった。大学にちゃんと通った方がこれからの売り出し方も増えるんだとか」

「……じゃあ、これからは大学の方に専念するってことか?」

「うん。そうだよ」

にぃっと笑ってまいが歩き始める。

「さ、行こ」

「……うん」

まいと並んで歩き出す。

「陽向くんは、誰かに夢や未来を預けられるタイプ?」

「え、どうだろう?まいは?」

「私が答えたら、陽向くんも答えてくれる?」

こくんと頷き、まいの方を見る。

「私は預けれる。これからも女優として大活躍すること、誰もが知っているような女優になりたい」

「俺は、夢はまだないけど……預けられるような相手だったら、預けれる」

自分の胸ぐらをきゅっと掴む。

「私も、陽向くんにだったら預けれるかな」

「え?」

「本当のことだよ」

「は?」

ワケがわからない。

確かに、まいは大学の友達はいないらしいし、もしかしたら芸能人以外の友達は俺だけなのかもしれない。

「私ね、陽向くんのことが好きなんだと思う。今の色はピンクに近いかなって思って」

「色?」

色の意味がわからなくてサラッと告白を無視してしまったがまいは特に気にしてなさそう。

「心の色。恋と同じ感情はピンクだって考えてるの。陽向くんは私のこと好き?」

「わからない」

「じゃあ質問変えるね。今の心の色はどんな色?」

心の色…?

「わからない」

「そっか。ごめんね、こんなこと言い出しちゃって」

「あ、まって」

「ん?」

「今はまだ、自分の気持ちはわからないけど、いつか返事するから」

まいはほんのり顔を赤らめて、

「うん」

と頷いた。

そんなまいの手をとり、歩き出す。

この時は告白された驚きのせいだと思っていたけど。

胸の鼓動が恋だったことを知るのは当分後の話。


俺ばかり、頼っていると思ってた。

でも違った。女優として生きるまいは、俺ぐらいのドライさがちょうどよかったそうで。

お互い、背中を借りあってきた。

そんなまいも今は夢をおって、ちゃんと近づいてっている。

俺だけおいてけぼりになったような気をするけれど、いつかたまに繋ぐ左手に指輪をはめる日が来るまで、待っていてほしい。

俺にとっては何もない毎日でも、まいにとっては新しい毎日だって思うだけで、俺も幸せを感じれるから。


おしまい

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今の色はどんな色? もか @flare-book

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