鷹の目の恋線連磨

透明な唐揚げ

始まりの糸

キミは運命の赤い糸を知っているだろうか

有名な伝説であるそれは決して現実に見ることはできないのに赤色であり

文字通り運命の相手とを結ぶ糸だ

遠い未来か、近い未来かは分からないが糸が切れない限り運命は既に決まって確定している

いつか結ばれる男女は、足首を赤い糸で結ばれているのだ

そしてそれは我が祖国日本では小指で結ばれる


とされている


前書きはこれくらいにしておこうか

そうさ、おおよそはキミの予想通り

これはその糸についての話だ

より具体的にはボクに絡まった幾つもの糸と、そこからくる実体験

要は痴情の縺れの結末さ


ーーーー


生まれて間もない頃から、ボクは普通の子供から大きく逸脱した能力を有していた

生後六ヶ月で多くの簡単な言葉を使いこなし、両親と会話を成立させ、同時に家族全員の名前を覚えた

七ヶ月、二足歩行の習得

八ヶ月、数学を知り、頭の中で独学で数式を解き暇を潰す

他にも色々あるが全て挙げればきりがない

ボクは赤ん坊の頃のことも全て覚えている

言語習得、身体能力、思考力、記憶力、どれをとっても天才の片鱗を見せたボクは所謂ギフテッドと呼ばれる人種だった

それも成長スピードが段違いのハイリーギフテッドだ

とはいえ前述の通り、ボクは全般的に何でもできるというだけで後に語る一芸一能の天才達と比べれば特筆すべき才能はない

その程度の神童だった

ことの発端はそんなボクがまだ自分の能力を隠さずに表に出していた頃

客観的に見ればあまりに短い全盛期の頃だ

三歳になり、幼稚園に入園したボクはそこで初めて運命の相手に出会った

彼女の名前はツカサ

苗字は知らない

彼女を一言で表すならまさに平凡といったところで

それ以上は他の子供と比べ少し容姿が良いくらいしか特徴といった特徴もない普通の女の子だった

正直に言って彼女自体に興味はなかった、もはや黒髪か茶髪だったかも覚えていない

だが自分の小指に巻かれた裁縫に使うような細く赤い糸

それが彼女の小指と結ばれていることを理解した瞬間、ボクは人生で初めて好奇心という感情を抱いた、激情を持った

そう、糸というのはご存知運命の赤い糸だ

ボクには天賦の才とは別に普通の人には見えないものを見るチカラがあった

それは霊視や神託、未来予知などの仮にでまかせであっても先駆者のいるようなまともなジャンルではない

もっと疑わしい、圧倒的に非科学を突き詰めた概念とも言うべき何かを見るチカラだった

ボクは生まれた頃から所謂運命の赤い糸が見えた

糸は自分の小指、両親の小指、人さえいればいくらでもどこにでもあった

たしかにそこにあるが物理的には機能しない

視界に収め、認識することすら通常不可能だ

未だボクは自分の他に糸を視認出来る人間には会ったことがない

このチカラは親から受け継いだものでも、非道な人体実験の末に獲得したものでもない

自然発生、突然変異、あるいは人間に元から存在する第六感を拡張した特異能力か

どうであれこんな説明では誰も納得できないし、少なくともボクは信じない

ボクの経験上、糸で結ばれている2人は相性が良く、一度関係が築かれれば死ぬまで添い遂げる

不思議パワーや神の存在をなしにこれを説明することは誰にもできはしない

そもそもの話ボク以外には見えないので仕組みをいくら考えたところでほぼ無意味だ

存在の証明すら永遠に出来ないだろう

しかし自己満足の実験なら可能だ

ボクは彼女に出会ってすぐにそれを思いついた

今思えばありきたりで誰でも考えられるつまらないアイデアだ

しかし、そのときのボクにはたしかに興味をそそられる禁断の果実に見えた

この頃はまだ糸による事例も少なく、糸の性質が謎に包まれていたこともボクの好奇心に拍車をかけた

自らの小指から伸びる糸、その到達点と生まれて初めて出会って気にならないわけがなかった

ボクは水難事故に見せかけて彼女を殺した

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