第4話  『異世界エレベーター』を検証する高校生

***



 俺が動画配信者を始めたのは高校生になってからだ。

 オカルト系の都市伝説などを検証して配信するというものは少々マイナーなジャンルかもしれない。しかし結構友人達と盛り上がるものだし視聴者も喜んでくれていた。


 「タツキ、『異世界エレベーター』の検証だけどお前のマンション使わせてもらっていいか?」

  

 友人の健太郎が訊いてきた。


 『異世界エレベーター』とは都市伝説の1つで成功すれば『異世界』にたどり着くというものだ。  



 やり方は、エレベーターで移動するだけ。

 ただ必ず1人で実行。

 エレベータに乗って4階→2階→6階→2階→10階に移動する。10階に到着したら、5階に移動する。

 5階で『女性』が乗ってきても話しかけてはいけない。ここで『1階』のボタンを押す。

 すると、エレベーターは『1階』ではなく『10階』に上がっていき、『異世界』に到着するという都市伝説だ。



「途中でマンションの人が乗り込んできたら失敗だし、深夜にやるのがベストだろう」

「俺もそう思う。それならお前のマンション10階建てだし深夜に撮影しようぜ!」



 こうして俺たちは『異世界エレベーターの検証について』の動画配信をすることになった。



***



 深夜2時に動画配信の準備をして俺は1人でエレベーターに乗った。

 カメラとスマホを携える。いつもこの瞬間は不安と恐怖と高揚感が高まる。


 幸いなことに途中でエレベーターに乗り込んでくる住人はいなかった。だから検証は中断されなかった。


 エレベーターが『5階』に到着した。


――もし『異世界』に行けるならここで『女』が乗り込んでくるはずだ。ここで出会う『女』は「異世界への案内人」というやつらしい。

 

 

 開いた扉から『女』がすっと音もなくエレベーターに入ってきた。


 (――!)  

 

 その瞬間、エレベーターの中の温度が一気に下がった。

 急に喉が乾き声がでない。体中の筋肉が強張り、腕も手も指先一つ動かすことができなくなった。

 ――これが「金縛り」というやつか。

 

 そして5階で開いたエレベーターに乗り込んできたその『女』を俺は知っていた。

 困惑、驚愕、恐怖、そして絶望が頭の中を瞬間にめぐった。

  

 

――『女』は、せりなだった。



 佐々木せりなは俺の同級生だった。

 たしか5年ほど前、小学6年生の時にマンションの爆発事故で死んだはずだ。

 

 俺は薄れゆく意識の中で当時のことを必死で思い出した。



 5階に住む高田という老夫婦の部屋でガス爆発が起こった。

 それが原因で隣室の佐々木せりなの家も被害があって家族全員が亡くなったはずだ。

 爆発の影響ででマンション全体が揺れた。俺の住む10階の部屋も揺れた。大型マンションだったので倒壊することはなかったが消防隊や警察が来て大変なことになった。


 佐々木せりなは爆発事故で亡くなった。

 間違いない。クラスメート達と葬式に行った。担任の教師も泣いていた。俺も泣いた。

 

 長い黒髪のせりなの姿は小学生のままだったが、表情に陰りがあり陰鬱な表情をしていた。

 そして口を開いた。


 

  

――タツキ君、やっとあえたね。




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都市伝説『異世界エレベーター』を検証してみたら『異世界』に行ける理由が分かった件 山野小雪 @touri2005

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