勉強でトップをとれたら告白しよう
烏川 ハル
勉強でトップをとれたら告白しよう
クラスメートの多くが、校庭に出て遊んだり、教室でワイワイ騒いだりしている昼休み。
窓際の一番後ろに座る僕は、外の青空に目を向けることもなく、いつものように一人で勉強していた。
数学の問題集だ。公式や解法パターンを丸暗記しただけでは解けない、大学受験レベルの問題ばかりが載っている。でも、だからこそ解けた時には気持ちがいい。
パズル感覚……といったら大袈裟だけれど、それに近い気分で、僕は鉛筆を動かしていた。
運動も苦手だし、これといって特に趣味もない。特技のない僕が唯一、自信を持てるのが勉強だった。ただし……。
「おい、見ろよ。ガリ
「だけど、あんなに勉強ばかりしてるのに万年2位だろ? 恥ずかしい話だぜ」
教室の前の方から、僕の噂をしている声が聞こえてくる。僕の名前は
数学の問題に集中しているはずなのに、何故かこういう雑音は耳に入ってきてしまう。
しかも彼らの言う通り、僕は勉強に自信があるものの、この学校で一番ではない。いつも決まって2位なのだ。
学年トップは、隣のクラスの
心の中で、つい
そのタイミングで、横からポンと肩を叩かれた。
「気にすることないよ、
ハッとしてそちらを向けば、隣の席に座る
学業も悪くはなく、僕や
「ああ、うん……」
彼女の言葉に、適当に頷いておく。
どうやら彼女は少し誤解しているらしい。「言いたい人には言わせとけ」というのだから、前から聞こえてきた悪口で僕が気を悪くした……と思っているのだ。
いや、それで気を悪くしたのも間違いではないにしても、僕が表情を歪めた理由のメインは、
「
「えっ?」
確か彼女は、友達と一緒に学食へ行っていた。そこでお昼を食べてきたはずだが……。
「間違えて一本多く買っちゃってね。貰ってくれるかな?」
「うん、ありがとう!」
友達のいない僕にも、いつも
そんな彼女の優しさに、いつのまにか僕は惚れてしまい……。
心の中で
――――――――――――
10月半ばの放課後。
一階廊下の掲示板に、秋の実力テストの結果が張り出されていた。
個人の成績表は当然それぞれ個々に手渡されるけれど、それとは別に、成績優秀者上位100名はこうして公表されるのだ。
今度こそ
そんな気合いを込めて臨んだ実力テストだったが、結果はいつも通り2位。
しかし驚くべきことに、
では、誰が今回のトップだったのか。なんと、それは
「……」
目を丸くしながら立ちすくんでいると、後ろからポンと肩を叩かれる。
振り向けば、笑顔の
「残念だったね、今回も2位で。
「ああ、うん。だけど……」
それでも一応、僕の方からは賛辞を述べておく。
「
「うん、ありがとう。ちょっと今回はね……」
はにかむような表情を浮かべながら、彼女は言葉を続けた。
「……『勉強でトップをとれたら』って自分に願掛けしたことがあって、それで頑張れたの!」
そんな「願掛け」ならば、僕だっていつもやっている。それでも無理なのが学年1位なのに……。
「ところで
複雑な気持ちのまま、
そこで彼女の口から飛び出したのは……。
「ずっと前から好きだったの。
「……!」
絶句してしまう。返事もできないほど驚いたが、自然に僕の顔はニヤけていた。
僕が全く気づいていなかっただけで、どうやら彼女は僕と同じ気持ちだったらしい。
(「勉強でトップをとれたら告白しよう」完)
勉強でトップをとれたら告白しよう 烏川 ハル @haru_karasugawa
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