現代社会を生きるあなたへ向けたメッセージ

序盤から島国ゆえに共同体社会となった日本の同調•共感の部分に対する疑心や不満、鬱屈した思いが鮮やかに表現された群像劇です。
こう書くと暗い印象を受けますが、決してそんなことはありません。
ミステリージャンルならではの意味深な台詞回しや詳細な情景描写、複雑な心理描写など読みどころはたくさんあります。
多角的よりは主観的に、自分を取り巻く状況への思いであったり人のエゴであったり、或いは不完全さが語られていくのが興味深く感じられました。
そこまで難しく考えなくても、単純に絵をめぐる話、と捉えて触れてみるのもいいと思います。

キャッチコピーにもありますが、これは社会への問題提起をしつつも作者の繊細な感性による「誰か」のために書かれた作品です。
必要としているのは、まだこの作品を読んでいないあなたかもしれません。
ぜひ一度読んでみてください。

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