9.そして終焉へ

 その後、遥香たちは地元の自治会へ屋敷の状態を報告し、行政などの調査の結果、

老朽化が激しく危険な状態だと判断され屋敷は取り壊されることになった。


 取り壊しの日、遥香たちは遠くから屋敷を見守っていた。

古びた洋館が崩れていく様子は、まるで長年の呪いが浄化されていくかのようだった。 

 取り壊しの最中に何柱もの白骨化した遺体が発見され、お祓いしたその後、慰霊碑が立てられる事が決まった。


「これで、おばあちゃんも安心できるかな」

 うろこ雲の隙間から、秋らしい澄んだ日差しが4人に降り注ぐ。


「きっとな」

 悠一が空を見上げながら答える。

「君の祖父が祖母を助け逃げ延びたことで、全てが繋がったんだ。そして僕たちは、2度とあんな呪いには触れてはいけない」

 大樹と美羽は大きく頷きながら、澄み切った空気を吸うために大きく深呼吸した。

 遥香は、祖母の遺品の手紙を胸に抱きしめながら、そっとつぶやく。

「おばあちゃん、ありがとう。私たちは大丈夫だから」


 悠一は素早く遥香の肩に腕を回し、空に届くように叫んだ。

「遥香さんは俺が守りますので、安心してくださーーーい!!」


 突然の悠一の言葉に、顔や耳まで真っ赤にしながら、“ふざけないで”と言わんばかりに彼の背中を強く叩いた。


「終わったんだよな。あの赤いシミも、儀式もぜーんぶ!」

 大樹もまた美羽の肩に手を載せ、目を細め更地になった屋敷の跡をみつめていた。

 

 そんな大樹の言葉を聞きながら、遥香はふと考える・・・・。

(もしかしたら、祖母が逃げたことで未完の呪いが残ったままなら・・・・私たちは本当に“終わらせた”のかな・・・・・)


 そうつぶやきながら・・・・遠くに吹く風が、わずかに冷たく感じた。

 



              

            THE END 



             


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オカルト研究会発足しました~案件1: 消えない赤いシミ~ あさき いろは @iroha-24

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