night tea time 〜black&white 2〜
ご馳走のあとに待ち受けているのは、もちろんスイーツの時間。
真夜中ティータイムはダイニングテーブルではなく、同じダイニングにあるソファーの前にあるテーブルで楽しんでいる。
「今日のデザートは、キウイのレアチーズケーキです」
百花が綺麗に盛り付けたケーキをテーブルに並べる。
タルト生地の上にレアチーズを乗せ、さらにその上にゼリーでキウイを固めた二層のチーズケーキだ。
お皿にキウイソースでトロロの絵を描き、ブルーベリーとミントをそっと添えている。
「相変わらずおいしそうだね!」
あとは飲み物を用意するだけ。
アルコールの飲めないふたりのスイーツのお供は、もちろんお茶。
百花が濃い目に淹れたブドウフレーバーの紅茶を氷で冷やし、シャンパングラスに注ぐ。
そこに炭酸水を注ぐと、紅茶と混じった炭酸がしゅわしゅわと弾けた。
「食後のティーソーダをお持ちしました」
お店みたいにテーブルにグラスを置く百花に、有紗は面白そうに笑った。
「見た目はスパークリングワインみたいでオシャレだね」
ケーキのゼリーもティーソーダも、部屋の照明でキラキラと輝いて見える。
ソファーで寝ているトロロを真ん中に挟んで、百花と有紗は早速ティータイムを堪能し始めた。
「なんとなくシャンパンの香りがする?」
口元にシャンパングラスを運んだ有紗が問いかけると、百花はケーキを口に運びながら答えた。
「ブドウフレーバーのティーソーダだからだと思うよ」
「ふふ。うちらお酒飲めないけど、グラスと香りだけだとお酒飲んでるみたいだよね」
「面白いでしょ?」
「うん。遊び心があって好きだよ」
香りを堪能した有紗がティーソーダを口にすると、楽しそうに微笑んだ。
「ん~! エナドリ以外の炭酸を飲むのは一週間ぶりだよ。妙だな……健康的な味がする……」
「気のせいだって。平日の日中はカップ麺にエナドリ生活でしょ? そのうち身体壊すよ」
「でも今の仕事、好きなんだよねー。理不尽で嫌なこともいっぱいあるけど」
「私も、カフェをやって良かったよ」
「ケーキも美味しい〜! 甘酸っぱくて、このお茶に合うね」
有紗はケーキを食べながら、しみじみと呟いた。
「こうやって美味しいご馳走が食べられるのってさ、モモがカフェをやるって選んだからなんだよね」
「カフェを選ばなかったら、結婚した方が良いかなって思っていたし」
「ルームシェアだってしてなかったでしょ?」
「……後悔してない?」
有紗は首を傾げて問いかけたのは、二年前に百花が有紗に相談した、カフェをやるか結婚するかの二択の件だった。
「してないよ。感謝してる」
「私さ。モモに色々言ったことで後悔させちゃう選択をさせちゃったかなって、気になってたんだよね」
「あのとき有紗自身が言っていたじゃない。私の気持ちと相談して決めなよ、って」
百花はグラスを傾けながら続けた。
照明に照らされて、グラスは輝いている。
百花の瞳も、前向きでキラキラとしていた。
「選んだのは私の意思で、叶えたかった夢のためだから。後悔なんてしてないよ」
繁盛しているわけじゃないけど、失敗したわけじゃないしね。と付け加えつつ、お茶を飲んだ。
「それならよかった!」
有紗はにっこりと微笑むと、安心して食事を再開した。
数分後、ティータイムが終わるとふたりはソファーにもたれ掛かった。
「ごちそうさま! 今日も美味しかったよ〜!」
「どういたしまして」
「お腹いっぱい食べると眠くなるよね〜」
「朝早くて夜遅いからね」
ふたりは寝ているトロロをもふもふしながら、うとうとし始める。
「ふぁー……。やっぱり食後はもふもふだよね」
ご馳走でたっぷりと癒されたあとは、もふもふに埋もれての心の潤いタイムの始まり。
好きなことに頑張る女子ふたりは、慌ただしい毎日の疲れをこうして癒し、翌週の仕事に備えるのでした。
~了~
はたらく女子の慌ただしい一日と、真夜中のごちそうティータイム 江東乃かりん(旧:江東のかりん) @koutounokarin
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