サンタ試験 【カクヨムコン10 短編創作フェス①「試験」】

結音(Yuine)

試験官も若人だった。

 サンタの世界の高齢化は、深刻だった。


 体力の低下により、そりでの長距離運転に支障をきたした。途中休憩を多くとるようになったため、然るべき時刻に目的地に到着するためには、出発日時を早めなければならなかった。

 積み荷の上げ下ろしも、かつてのように短時間でこなすことができなくなった。道中で荷崩れを起こさないように積むわざも、衰えた足腰では力が足りず、


 腰痛を訴えるものが多くなった。


 それだけなら、良かった。


 認知面での衰えが、誤配を生んだ。

 年に一度の楽しみを間違えられた子どもからの嘆き悲しみが、サンタ業界をさらに苦しめた。


 よって、

 行われたのが、今回の次世代のサンタ採用試験だ。

 これまでの受験資格から、年齢をうんと下げて受験者を募集した。


 結果、応募人数は爆上がり……とはならなかったのが、残念でならない。

 最終試験まで残った若者を目の前に、試験官はつぶやいた。




「あたいの好み……」




 その一言で、志願者が消えたことは伏せておきたい。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

サンタ試験 【カクヨムコン10 短編創作フェス①「試験」】 結音(Yuine) @midsummer-violet

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ