第5話 ユウが提案したグリッド

 リバーシをしながらロベルト学園長は僕に質問してきた。


「ユウの目から見て、カリステアのグリッドはどう見えましたか?」


 僕は思ったことを正直に伝えた。


「フィールドに設置してあるカードを集めながら手札を増やし、それで戦うのはスリリングでおもしろいと思いました。しかし、身体能力に恵まれている魔法士に有利な点は気になりました。例えば、身長が低い魔法士はカードを見つけても手が届かず、入手できず、結果的に諦めざるを得ません。危険な行動に出れば、ダメージを受けるリスクもあります」


 彼は真剣な表情で僕の話を聞いてくれた。


「息子から話を聞いていると思いますが、現在グリッドの大会は中止しています。魔法士の人数が足りないこともそうなのですが、ユウが指摘したことも含まれています。そこで今までのグリッドを捨て、一新しようと思っています。しかし、私も年齢を重ねており、アイデアが思い浮かばないのです」


 今までのグリッドを捨てるということは、魔法士に差が生まれないようにしなければならない。


 僕は顎に手を当て、考えた。


「ダンジョンにするというのはどうでしょうか?」


 彼は首をかしげた。


「ダンジョンにエネミーを配置します。エネミーを倒すとカードが入手できます。レアエネミーを倒すと強いカードが入手できます」


 僕の目を見て、うなずいた。


「ユウの考えるグリッド見えてきました」


 僕は説明を続けた。


「ゴール地点に早く到着した魔法士にはペナルティはありません。しかし、後から到着した魔法士には時間に応じて集めたカードがランダムに消滅します」


 彼はうなずいた。


「探索には制限時間が必要ですね?」

「はい、制限時間に間に合わなければ、失格になります。そのためには第三者の存在が必要です」

「第三者ですか?」

「はい、ダンジョンの構造を知り、魔法士に指示を飛ばす役割です」


 笑顔で拍手した。


「ユウ、キミのアイデアは実にすばらしいものだよ。採用してもいいかな?」


 僕は笑顔でうなずいた。


「はい、僕のアイデアでよろしければ使ってください」

「リバーシには勝てなかったが、有意義な会話ができたよ。ユウ、キミを歓迎するよ」


 彼が右手を差し出したので握手した。握手をやめ、彼は立ち上がった。


「あとは私の仕事だから、ユウには第三者を見つけてもらおうかな?」


 僕は意味がわからず、首をかしげた。


「どういう意味ですか?」

「キミは発案者だし、テストプレイは必要だと思わないかな?」


 第三者か。ナナに電話で連絡することにしよう。


「ちょうど知り合いがいます。学園に招いても大丈夫でしょうか?」

「名前、性別、年齢、特徴を教えてくれるかな?」

「名前は神谷ナナ。性別は女性。年齢はわかりません。特徴ですが、髪形はロングヘアです。髪の色はプラチナブロンドに、淡い青色のメッシュが部分的に入っています。瞳の色はエメラルドグリーンで、黒縁メガネをかけています」


 彼は笑顔でうなずいた。


「守衛に伝えておくから、安心していいよ」

「わかりました。それでは、失礼します」


 僕は席を立ち、学園長室を出た途端、不安が口をついて出てしまった。


「さっき別れたばかりだけれど、来てくれるかな?」


 僕は部屋に向かった。


 携帯でナナに連絡を取ることにした。


「ユウ、どうかしましたか?」

「ナナの力を借りたいのだけれど、忙しいかな?」

「私はバカンスの最中です。内容次第になります」


 僕は彼女に事情を説明した。


「――それで私の力を借りたいのですね?」


 電話越しの彼女の笑い声が聞こえた。


「わかりました。引き受けます。報酬は、ユウが魔法士になった後で構いません」

「助かるよ。学園の地図を送るから待っているよ」

「わかりました。また一緒に仕事ができることを光栄に思います」


 僕は通話を切り、彼女に学園の地図を送り、グリフォンを手に取った。電子通貨の存在が気になり、調べると、十一万ポイントを所持していた。


 時間はたっぷりとある。市場調査でもしますか。


 僕はグリフォンと鍵を持って、部屋を出た。

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