雨虹(あめにじ)
雪月すず猫
第1話
すず:(M)容赦なく雨は降り続ける。けれども、私は貴方に逢えた。
すず:貴方は━━私に希望と勇気を与えてくれた。
雹:「僕と一緒に遠いところで一緒に一から頑張ろう?すずがやりたかったことを一緒に沢山…沢山、やろう」
すず:「うん、私も行きたい、貴方と一緒に色んなものを見たい、できることなら、沢山色んな経験をしたい。でも私は雹といけないよ…」
雹:「ッなんで?」
すず:「だって私はこの村のことしか知らない、世間知らずで、きっと雹に迷惑をかけちゃうわ」
雹:「そんなことない!とにかく、僕は諦めないよ!このままじゃ、すずは殺されちゃうんだから!」
すず:「雹?私は大丈夫だから、私は生まれた時から村の生贄だから平気だよ」
すず:(M)私の生活は雹と出会う前は味気ない、死んだも同然だった。20年に一度、水神様に捧げる村の生贄として、育てられ、ずっと、何もさせてもらえなかった。ただ生きて、村のために死ぬ、夢も希望もない生き方をしていた。
すず:変わったのは、私の新しい世話役として、雹がやってきた時。私たちは恋に落ちた。
すず:―――でも、私には秘密があった。
すず:「お父様!やめて!」
雹:「すず!なにがっ!っ!」
雹:(M)夜、物音がしてすずの寝所に駆けつけたら、そこには涙ぐんで抵抗虚しく殴られたあとのすず、もみくちゃにされたシーツ、すずの裸、そこに男に組み敷かれ今も闘っているすずが見えた。僕はかぁとなってすずを組み敷いているすずの父親を殴った。
雹:「やめろ!この外道が!すず、行こう!」
すず:「ごめん!ごめんね!雹!」
雹:(M)僕は泣きじゃくって謝るすずの足枷をとり、手を引っ張ってすずが閉じ込められていた部屋から二人で一緒に逃げる。すずの泣き声混じりの謝罪を何十回も聴きながら、ひたすら、村人達から逃げるように走った。
雹:「(はぁはぁ)ここまで来れば、大丈夫、大丈夫だよ、すず」
すず:「(はぁはぁ)私…生贄にもなれないの。お父様に汚されてなんの価値もない。こんなに汚されて雹に好きになってもらう価値ないの」
雹:「違う!!すずはずっと抵抗してた。すずの怪我には気づいてた筈なのに、すずのSOSに気づかなかった僕こそ、すずに相応しくない」
雹:(M)すずの怪我から村人に与えられた怪我だろうと推測していたが、もっと現実は残酷で、すずの父親が暴力を振るいすずを陵辱していたのだ。僕は悔しくてたまらなかった。無力な自分に。そして、すずを抱きしめ大丈夫としか言えない自分に。
すず:「そんなことないよ!私は雹が大好き!だからそんな事を言わないでよ!」
雹:「それなら僕からのお願いを聞いてくれない?」
すず:「うん…」
雹:「今から振り返らずにこのまま、村外れの船まで走るんだ、良いね?そして絶対に村から離れるまで振り向いちゃダメだよ。」
すず:「雹は?」
雹:「僕は……他の船で後から追いかけるから、ね?」
すず:「うん」
雹:「いつか、一緒に本を見ていた時に行きたいって言っていた西の都に行こう?そしてカフェでアイスを食べよう?綺麗なドレスを着て、一緒に楽しく踊ろう?」
すず:「うん、きっと雹となら楽しい」
雹:「行くんだ!」
すず:「うん!」
すず:(M)本当に大丈夫なの?って聞けなかった。雹の笑顔に私は頷いてしまった。その時の事を私はずっと後悔した。
すず:私はひたすら走って、船にたどり着き乗り込んだ。村の方角に何かが焼ける匂いがしたけど雹との約束で振り返って見ることはしなかった。
すず:「雹、いつくるんだろう?」
雹:「すず……ごめんな?でも……すずならこれから色んなことができるから大丈夫……上ですずが笑ってる姿を見守っているよ…。愛してる」
雹:(M)すずを抱きしめていた時に、後ろから刺された時、助からないと、悟った。だからすずが追いかけられないように村を削(けず)れゆく命で、焼いた。1人を犠牲にしてそれが当然として生き続ける村の在り方に前から嫌悪を抱いていた。すずを救いたかった。
雹:「一緒にいけなくてごめん……」
0:雹の走馬灯
すず:「雹、ここにいたの!探したよ」
雹:「すず、やっと見つけた」
すず:「もう雹ったら大袈裟だなうふふ」
すず:(N)3年後
すず:「ずっと待ってるからね、雹……雹が来なくても私はずっとまってる。雹がくれた勇気とチャンスで私は都で読み書きができることを評価されてお城のお針子として生き直すことができたの。だから、絶対に貴方を忘れない、私は絶対に幸せになってみせるから。私の心から離れないで」
雹:「すず、ずっと、愛してるよ」
雨虹(あめにじ) 雪月すず猫 @mikaduki_0305
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます