第3話 トゥルーエンド
彼女が亡くなってから数か月。彼女を失った悲しみは未だ癒えないが、それでも状況は少しずつ落ち着いてきた。
お葬式も滞りなく行われ、私達は彼女に最期の別れを告げた。
最期とはこんなにあっさりしているものなのかと、とても切なくなったことを覚えている。
彼女の部屋の片付けも終わり、遺品も整理された。
その際、私は彼女の両親からあるものを渡された。
それは、彼女が使っていたノートパソコンである。
彼女は生前、ノートパソコンを私に渡して欲しいと両親に言っていたらしい。
私本人もそのことは聞かされていた。自分が死んだらノートパソコンは凪咲ちゃんに受け取って欲しいと。
これは彼女が小説を執筆する際に使っていたものだ。
彼女が書き綴った物語の多くが保管されている。
そして、彼女がボツにした、あの物語の別の結末もまた、ここに保管されている。
彼女が死んでまだ時間が浅いうちは、その結末を見れずにいた。
やはり、私にはこの残酷な結末を受け入れる土壌がなかった。嘘でも、彼女はみんなからの声援に満足して、安らかに永遠の眠りについたと思いたかった。
しかし、私はこの結末から逃げるわけにはいかない。
彼女の笑顔を思い出した。
今なら、この結末に向き合える気がした。
私が見届けた彼女の人生、その最後には僅かな希望が確かにあった。
作家としての葛藤を喜んでいた彼女が確かにいた。
もし、私が誰かに彼女の話をする時は、この事実だけは確実に伝えようと、その結末を見た時に誓った。
今、ここに書き記す。
これが、私が書きたかった彼女の物語である。
私が書きたかった物語 正妻キドリ @prprperetto
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます