急 最弱と最強
俺と魔王の力量には、天と地ほどの
『……なゼそこまで
「……言ってろよ……」
俺は
左腕を切り飛ばされた俺は、次に片目を
『気』で無理やり体を動かしてはいるが、
なんなら、このまま放って置かれても死ねそうな気がする。
それでも俺がまだ死ねない、と思っている主な理由は二つ。
一つは、故郷とそこにいる家族を守るため。もう一つは、エミリアを殺したこいつに
『……理解に苦しむガ、ここまデ戦ったお前に
「……くそったれ」
魔王の右手に黒い
その術に込められている
俺は、最後の力を振り
だが次の瞬間には、間抜けにも前のめりにすっ転んで地に
「え……?」
両足の感覚がなくなった。どくどくと熱い液体が、
魔王は俺が黒い渦に気を取られている隙を突き、一瞬で俺の両足を
倒れ込んだ俺のすぐ
魔王は右手をかざし、黒い渦を俺に放とうとする。
『死ネ』
「……ちくしょう……」
残った片目から涙が
結局、
――エミリア、すまねえ……。だが、これでお前に
〝――――私が、守ってあげる――――〟
それから、どれだけの時が
血まみれのボロクズとなった俺は、数秒から十数秒ぐらい意識を失っていたのだと思う。
『……バ、
気づけば、魔王が
……さっさと殺せばいいものを、なにをモタモタしてるんだか。
俺は
柔らかな光が俺を包み込んでいた。
魔王はこの光のヴェールに
俺はどことなく夢見心地のまま、その光に手を
するとその光から
「……エミリア?」
俺の声に反応して、光が
光がふよふよと形を変え、俺のよく知る彼女の顔が浮かび上がる。
〝――アレン、ただいま〟
半透明の彼女の
「やっぱり、エミリアなんだな。お前、どうなっちゃったんだよ。『
俺がポピュラーなアンデッドモンスターの名前を出すと、エミリアはふるふると首を振った。
〝――違うよ! そんなのと一緒にしないで〟
彼女は
そして、彼女は真実を告げる。
――それは俺とエミリアにとって、ある意味で残酷な真実でもあった。
〝――この姿になって初めて気づいた。……私は精霊ミュリエルの生まれ変わり。あなたを助けて、魔王を倒すために生まれたの〟
「――……そうだったのか」
エミリアの言葉によって、俺はようやく精霊がどんな存在かを理解できた。
長年の疑問だったのだ。ご先祖はなぜ精霊について書物に記録せず、
彼女が精霊として真価を発揮するためには、人としての命を
『……おのレ、勇者メ!』
魔王は先ほどまでの比ではないほど濃密な魔力を身に
――だが、もう全く負ける気はしない。
「……じゃあ、とっととあいつを倒すか」
精霊となったエミリアを構成する全ての光の粒子が俺の体に吸い込まれ、全身に爆発的な力が
気づけば、あれだけズタボロだった俺の体は万全の状態にまで復活していた。
彼女の声が俺の内側から
〝……ええ! 私たちは最強なんだから〟
――こうして俺たちは、ニセモノではない〝真の勇者アレン〟になった。
(了)
誓いの果てに〜最弱と最強の勇者〜 卯月 幾哉 @uduki-ikuya
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