第11話 生まれ変わったエリザローズ
その光はエリザローズを優しく包み横たわる
エリザローズは宙に浮かぶ。
光が線を描いて繭のようにエリザローズを包み
霧散すると、そこには黒い姿の
エリザローズはいなかった。
人間らしい色を取り戻したエリザローズが
そこにいた。悪魔の象徴であるツノも
背中の黒い羽根もない。
その様子を一同は見ているだけしかできなかった。
「な、なんだあれ……」
ザイルが漏らし、エレオノーラも
驚いたように手を口元に持ってくる。
エリザローズはゆっくりと
地面に着地し目を開いた。
エリザローズのその白雪のように美しい頰に
透明な涙が伝う。
「グレオル様……」
エリザローズはグレオルに抱きつく。
「エリザローズ……どうして……」
動揺するグレオルにエレオノーラが「あっ」と
声を上げた。
「古い書物に書いてありました。
悪魔は人間に愛されることで己も人間になることが
できる……と」
「まさか娘が人間になったと……!?」
エリュクシュエルがこれ以上ないほど
目を見開き、エリザローズを見た。
「お父様、もう仇討ちなんてやめにしましょう」
「エリザ、いきなり何を言うんだ!
今までロザリーナを迫害した人間どもを殺して」
「お父様には言えてなかったけれど
わたくし本当はお母様が嫌いだった。
お母様が憎くて早く死んでしまえばいい
と思ってたの」
娘の本音にエリュクシュエルは言葉を失くす。
「だけど、グレオル様はそんなわたくしをも
受け止めて、わたくしの心の奥に残されてた
『愛されたかった』という
本音を見つけ出してくれたの。
わたくしは、ずっと、お母様に愛されたかった。
お母様が死んだのはグレオル様のせいじゃないわ。
もう憎しみなんて感情を抱きたくない。
グレオル様みたいに
真っ直ぐに生きていきたいのよ」
わたくしはもう
醜い気持ちに囚われていたくない!!
その言葉にエリュクシュエルは過去の
出来事を思い出した。
エリザローズがロザリーナにプレゼントした
ブローチをお母様に壊されたと泣きながらも悔しげに唇を噛んで訴える愛娘。
そうか、この頃からエリザローズは
愛情に飢えていたのか。
父親だというのに気づいてあげられなかった
申し訳なさと情けなさが胸を締め付ける。
「すまない、エリザローズ……。
俺は、何も気づいてあげられなかった。
父親失格だ……」
「なら、お父様。
許してあげる代わりにグレオル様との
結婚を正式に許していただけますよね?」
エリュクシュエルはうぐっと言葉に詰まる。
人間になったとはいえ
流石は元悪魔。弱ったところに付け入るとは
小賢しい。
エリュクシュエルは軽くため息をついて
頷いた。
「グレオル様!」
歓喜の声を上げて飛びついてくる
エリザローズにグレオルはドキドキを隠せない。
リア充爆発しろ。
「待て待て!
まだ俺たちが納得してないんだが」
ザイルが不満げに腕を組んでいる。
「……まあいいんじゃないか。
自分のした行いを悔いてもう2度とあんなことを
しないと誓えばの話だがな」
アレイルがフッと笑う。
「ええ、誓います。
わたくしは許されないことをしてしまった。
ごめんなさい。
けれど、グレオル様に出会って感情を知った今
それがどんなに恐ろしいことだったか分かる。
だから、グレオル様と共に生きていくことを
許してください」
深々と頭を下げるエリザローズ。
ザイルは呆れたようにため息をつき、
エレオノーラは困ったように笑う。
アレイルは口元に笑みを
浮かべて2人を見つめていた。
そんな3人の結論は
「「「どうぞお幸せに」」」
エリザローズは輝くような笑みを浮かべて
グレオルの手を掴み部屋の外へ飛び出した。
「おい!どこに行くんだ!」
ずっと人間の世界を夢見ていた。
だから、これからは2人で生きていこう。
「ねぇ、どこに行くの?」
「それは……分からない。
でもきっとたどり着いた場所は
素敵な世界に違いないわ」
エリザローズの微笑みにグレオルは
愛しい人の手を強く握り直した。
「そうだね」
生まれ変わったエリザローズは
これからどこへ行くのだろうか。
でも、彼女はもう狭い暗黒の世界で
生きることはない。
2人ならどこへ行っても広く虹色の世界が
続いていることだろう。
終わり
魔王の娘ですが勇者に一目惚れしたので結婚することにしました!! 藤川みはな @0001117_87205
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