第10話 姫は王子のキスで
「エリザ……」
エリザローズの身体は闇に呑まれ
真っ黒に変色してしまった。
もう2度と話すことができない。
そう思うと無性に悔しくなって悲しくなった。
「え、エリザ……?」
エリュクシュエルが恐る恐る娘に近づき
石畳に膝をつく。
娘の長いまつ毛に
縁取られた瞼が閉じられているのを確認すると
彼はは咆哮にも似た悲鳴を上げた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!」
娘の身体を抱きしめ、涙を流す。
「エリザ!! エリザ!!
どうか目を覚ましてくれ!!」
その隙を狙いザイルが植物魔法で毒を持つ花の種子を撃ち込もうとしたがグレオルが
その種子を剣で斬り真っ二つになって
石畳の上に落ちてしまった。
「グレオルっ!! 何すんだ!!」
「もう戦闘なんてやめよう。
これ以上の戦いは悲劇を生むだけだ」
「は?! 魔王討伐のためにここまで来たのに
諦めるって言うのかよ!?」
「そうよ! 悪行を犯した悪魔を許すなんて
随分と絆されたようですね」
ザイルとエレオノーラから非難されるが
グレオルの意思は固い。
「殺すよりも一番の罰がある。
……それは生きて罪を償うことだよ。
感情を知るたび、己のしたことの恐ろしさに
気づくたび、彼は苦しめられる。
だからもういいじゃないか。
争いなんて何も生まない!!」
グレオルの叫びに皆、静まり返った。
「グレオル……なぜ泣いてる」
言われて目元を拭えば自分が
エリザローズの眠りにこんなにも
悲しんでいることを知った。
いつからだったのかは分からないが
きっと彼はエリザローズに
恋心を抱いていたのだろう。
「馬鹿だな、僕は」
今更気づくなんて。
君が永遠の眠りについた後に。
せめて、僕の想いを知っていてほしい。
「グレオル……一体何を……」
エリュクシュエルの問いには答えず
グレオルは横たわる愛しい人の顎に指を添えた。
「好きだったよ、エリザローズ」
彼女の唇に口付けを落とす。
グレオルが目を開け、エリザローズを見つめる。
一瞬ののちに世界が白く光り輝いた。
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