第9話 お互いの守りたいもののために

「エレオノーラ!!

やめるんだ!! 彼女は悪い悪魔じゃない!!」


「どうしてそのような甘いことが言えるのです?

それに任務を投げ出すなんて。

ああ、その悪魔の事情を知ったからですよね。

ですが、民に被害を及ぼしたことをお忘れですか?

エリザローズ様、あなたは所詮悪魔。

人間の心など持ち合わせていない。

私達は分かり合えないのですよ!!」


いつもと違うエレオノーラの口調に怯んでいる隙に

彼女は聖杖を構えた。


その瞬間煌びやかな光がエリザローズの結界に

侵入し身体を包み込む。

だが、それも一瞬のことだった。


エリザローズを包み込んだ光が消え、

彼女は荒い呼吸をした。

グレオルはそんな彼女の背中をさする。


「現れましたね、魔王エリュクシュエル」

いつの間にかエレオノーラの横にいたアレイルが

憎々しげに呟いた。


闇の中から現れたエリュクシュエルは

いつもとは違う闇のように

深い黒いオーラを纏っていた。


これが本来の魔王なのだ。


「このような展開となることは

予想していた。貴様の父が私の愛するロザリーナ

を殺し、お前までも俺の愛する家族を殺すとは

万死に値するぞ」


闇の炎を纏った魔王エリュクシュエルに

エリザローズはこの人は悪魔なのだと

改めて実感すると共に狂気を感じた。


エリュクシュエルは人間の間では

禁忌とされている呪術を展開する。


!!


「逃げて!!」


その言葉と同時にエリザローズは父の前に

躍り出た。


「っ!! エリザ!!」 


真っ黒な闇が雷のようにエリザローズに落ちた。


禁断の呪術。

決して目覚めることはない呪いの魔法。


ごめんなさい、お父様。


わたくし、

初めて人を愛するということを知ったの。


今までたくさんの人を殺してきたけど

彼と出会ってから、感情を知ったの。


彼を守りたいと思えたの。


だから、わたくしが死んでも

グレオル様、あなたはどうか生き残って。


必死にわたしの名前を呼ぶグレオル様に

手を伸ばしたと同時に闇に呑まれた。





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