第8話 母について
わたくしの母、ロザリーナは自分が腹を痛めて
産んだ子よりお父様が好きだった。
だからいつもお母様はお父様の側にべったり
くっついていて自分の娘すら嫉妬の対象だった。
何度痛めつけられたことか。
その時はまだ愛されることを諦めてはいなかった。
魔法が上達した時も母は冷たい目で
わたくしを見るだけ。
よその子が母親と仲良くしているのを見る度
何度羨ましいと思ったことか。
だけど、ある日を境にわたくしは
母に憎しみを抱くようになった。
「お母様、お誕生日おめでとうございます!!」
わたくしは母の誕生日に
お母様の好きな蝙蝠の羽のブローチを
プレゼントした。
母は冷笑してヒールでブローチを踏みつけた。
「あんたからのプレゼントなんかいらないわ。
私はエリュクシュエル様のプレゼントを
待っているのよ。私はあんたを愛する気が
ないというのに全く健気なものね、プレゼントまで用意してそんなに私の愛が欲しいの?」
まさに悪魔の笑みを浮かべた母が
恐ろしかった。
踏みつけられたブローチの破片を見て
何かの糸がプツンと切れた。
こんな人、死んでしまえばいいのに。
そう思うようになった。
だから、わたくしあなたのお父様が
お母様を討伐してくださってとても嬉しかったの。
嬉しかった……はず、なのに。
「どうして、涙がこぼれるのかしら」
エリザローズはまだ自分が母を愛していることに
気づいていなかった。
悪魔のエリザローズに人間の感情が芽生えるのは
異例と言ってもいいほど珍しい。
「エリザローズ……
やっと分かったよ。君が僕に求婚した理由が」
エリザローズは
涙の溜まった瞳をグレオルに向ける。
「君は家族の愛を欲していたんだね。
だから僕と家族になろうとしたんだ」
「わたくしが……愛を欲していた?
わたくしはただグレオル様に
一目惚れしたから……」
「それもあるかもしれないけど
君はただ純粋に誰かに
愛されたかったんじゃないのかな」
グレオルは優しい微笑みを浮かべ
エリザローズの手を取る。
「父さんがエリザローズの
お母さんを奪ってしまったこと
本当にすまない。
謝っても許されないことをしてしまったけれど
君のこと、知りたいと思った。
こんな僕で良かったら
僕と家族になってくれないか?」
その言葉にエリザローズの顔が真っ赤になる。
それはプロポーズですよ、グレオルさん。
が、その瞬間
城の中に白く輝く光が満ちエリザローズは咄嗟に
防御魔法を展開し、グレオルは警戒体制に入る。
「グレオル様はお優しいからこんなことになると
想像はしていました……。ですから
この私が忌まわしき悪魔を
浄化します!」
その光の源は聖女エレオノーラだった。
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