第7話 結婚生活


グレオルとエリザローズは魔王城の一室で

暮らすこととなった。

悪魔のエリザローズが人間と暮らすには問題が

多すぎるためだ。


結婚式の夜、エリザローズが一糸纏わぬ姿で

誘惑してくるのでグレオルは理性を保つのに

必死だったというが、それはさておき。


「グレオル様、あーん♡」


豊満な胸元を見せつけるようにエリザローズは

前屈みになりグレオルに跨ってケーキを

食べさせていた。


グレオルは異性に耐性がないので

どこを見ていいか分からず

視線が定まらない。


そんなグレオルにエリザローズはクスッと笑う。


「グレオル様ってば可愛いですわ」


そして、グレオルの唇についたクリームを

自身の舌で掬い取った。


「ん、美味しい♡」


「な、ななななな」


色気溢れる積極的なエリザローズに

グレオルは失神しそうであった。


後ろに控えるメイド達は顔を赤らめている。


「そうですわ、黒薔薇を使った紅茶を

取り寄せたのを忘れていました。

せっかくですから旦那様にも飲んで頂かなくては。

ちょっと待っていてくださいね?♡」


今だ!!


エリザローズが背を向けた瞬間

グレオルは光魔法を展開するがその瞬間

エリザローズが振り返り光の攻撃を跳ね返した。


衝撃でグレオルは石壁に背中を打ち付けられた。


「ぐっ………」


「グレオル様ったら、わたくしが

魔王の娘であることをお忘れですか?」


うふふと笑いながら

エリザローズはグレオルを覗き込み

手を差し出した。


だが、グレオルはその手を取ることはなかった。


「君は……どうして僕と結婚したんだ?

僕の父親が君の母親を

殺したことを知っているだろう?」


唇を噛み締めて俯くグレオル。

そんなグレオルにエリザローズは

一瞬、瞳を揺るがせた。

だが、すぐにふふふっと笑った。


「それが、どうかしまして?

あんな人、わたくしの母親とは

認めませんわ」


エリザローズの悲しげな表情に

グレオルは目を見開く。

彼女のこんな表情は見たことがなかった。


だから

彼女のことをもっと知りたいと思った。


「もし良ければだけど……

何があったか教えてくれる?

あ、いやそもそも僕の父さんが

君のお母さんを殺しちゃったから

僕にこんなこと言う権利ないかもだけど……」


早口で捲し立てるグレオルにエリザローズは

表情を和らげた。


「……あなたは本当に優しいのね。」


「優しくなんてないよ。だって

君を殺そうとしたんだよ?」


「でも、魔力に躊躇いを感じたわ。

本当はわたくしを殺したくはなかったんでしょう?

ふふ……。

わたくしとは正反対」


「エリザローズ……」


「わたくしは母が大嫌いだった」

憎々しげに唇を噛み締め、血が伝い落ちる。

ピチョンと石畳に落ちた血はエリザローズの

心情を表しているかのようだった。






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