【文学的青春百合短編小説】蒼穹の詩篇 ~不良少女と文学少女~(約7,600字)

藍埜佑(あいのたすく)

【文学的青春百合短編小説】蒼穹の詩篇 ~不良少女と文学少女~(約7,600字)

## 第1章:邂逅の詩


 教室の窓から差し込む春の陽光が、朝倉涼の乱れた制服にまだらな影を落としていた。机の上で足を組み、漫画を読んでいる姿は、まるで学校という檻の中で羽を休める鷲のようだった。長い黒髪は無造作に肩を覆い、制服のリボンは緩く結ばれ、スカートの裾は規定より少し短かった。しかし、その不良めいた外見の中にどこか凛とした美しさがあった。


 その日の放課後、誰もいない教室で一人本を読んでいた向田凛は、突然の声に驚いて顔を上げた。


「ねぇ、向田さん。あんた、いつも本ばっかり読んでるけど、つまんなくない?」


 朝倉涼が、意外にも柔らかな口調で問いかけてきたのだ。凛は読んでいた萩原朔太郎詩集から、ゆっくりと視線を移した。


「つまらない……? そんなことないわ。言葉の中には、現実よりもずっと深い真実があるもの」


 凛の声は静かだったが、芯の通った響きを持っていた。整然と結われた黒髪に、きちんと結ばれたリボン。その佇まいは涼とは対照的だった。


「へぇ……」


 涼は椅子から立ち上がると、凛の机の前まで歩いてきた。その動きには不思議な優雅さがあった。制服の乱れた姿でありながら、まるでバレリーナのような軽やかさだ。


「じゃあさ、これも真実?」


 涼は凛の詩集を取り上げ、無造作にページを開く。夕暮れの教室に、涼の声が静かに響いた。


「『永遠に君を愛してゐる。それは雲より白く深い』……へぇ、なんかすごく切ないね」


 涼の声は、いつもの強さを失っていた。凛は思わず息を呑む。目の前の不良少女が、こんなにも繊細な表情を見せるとは思っていなかった。


「朝倉さん……あなた、ちゃんと本を読めるのね」


「失礼だなぁ。見た目で判断しちゃダメだよ、向田さん」


 涼は微笑んで、凛の肩に手を置いた。その温もりが、凛の心臓を激しく鼓動させる。


「私ね、自由に見えるでしょ? でも実は、誰よりも縛られてるの。このがらんどうな心に」


 涼の言葉は、まるで詩のように響いた。夕陽に染まる教室で、二人の少女の影が重なる。それは偶然の出会いのようで、しかし運命めいた何かを感じさせる瞬間だった。


 凛は涼の手の温もりを感じながら、不思議な感覚に襲われた。今まで本の中でしか出会わなかった何かが、目の前で息づいているような気がした。涼の瞳の奥に潜む孤独が、凛の心を深く揺さぶる。


「朝倉さん、あなたの言う『がらんどうな心』って……」


 凛が言葉を続けようとした時、廊下から部活帰りの生徒たちの話し声が聞こえてきた。涼は素早く凛から距離を取り、窓際に移動する。


「じゃあね、向田さん。また話そう」


 涼は投げやかにそう言うと、夕焼けを背に教室を後にした。その背中は、どこか寂しげに見えた。


 それから数日間、凛は涼の言葉を何度も思い返していた。放課後の図書館で本を読んでいても、涼の存在が頭から離れない。不良少女の仮面の下に隠された繊細な心。それは凛の心に深く刻み込まれていた。


 ある日の昼休み、凛は中庭のベンチで昼食を取っていた。春風が桜の花びらを舞わせる中、涼が一人で木陰に佇む姿が目に入った。


「朝倉さん」


 思わず声をかけていた。涼は少し驚いたような表情を見せたが、すぐに柔らかな笑みを浮かべた。


「あら、向田さん。珍しいね、声かけてくれるなんて」


 涼は凛の隣に座る。二人の間に流れる風が、何かを予感させるように心地よかった。


「この前は、突然失礼なことを言ってごめんね」


 涼が謝るように言った。凛は首を横に振る。


「ううん、私こそ……朝倉さんの言葉で、気付いたことがあるの」


「へぇ、なに?」


「私、本の中の言葉だけを見ていたのかもしれない。でも、現実の中にも、言葉では表せない詩があるんじゃないかって」


 涼は少し驚いたような表情を見せた後、優しく微笑んだ。


「向田さんって、意外と面白いこと言うね」


 涼の手が、そっと凛の手に触れる。その温もりは、春の陽射しのように柔らかかった。


「ねぇ、向田さん。今度、一緒に図書館行かない?」


 涼の言葉に、凛は小さく頷いた。桜の花びらが、二人の間を舞い落ちる。


## 第2章:交錯する言葉


 図書館で二人は再会した。涼は珍しく静かに、文学全集を眺めていた。書架の間から差し込む夕陽が、彼女の横顔を優しく照らしている。


「向田さん、私ね、あの日から詩を読んでるの。なんか、あんたの心が少し分かった気がする」


 凛は本の間から涼を見つめた。夕陽に染まる髪が、まるで燃えているようだった。


「でもさ、本当の詩って、ここにあるんじゃないかな?」


 涼は凛の胸に、そっと手を当てた。


「私たちの鼓動の中に」


 その瞬間、凛は理解した。自分が涼に惹かれる理由を。それは言葉では表せない、深い共鳴のようなものだった。二人の存在が、互いを求めるように引き寄せられている。


「朝倉さん……私、あなたが怖いの。でも、それ以上に……」


「怖いことなんてないよ。それよりも私のことは涼って呼んで?」


 涼の指が、そっと凛の頬を撫でる。その仕草には、これまで見せたことのない優しさがあった。


「涼……私、あなたの中に、自分の知らない世界を見つけたの」


「私も同じだよ、凛」


 二人の影が、夕陽に溶けていく。図書館の窓から差し込む光は、二人の姿を美しく縁取っていた。それは、まるで詩のような瞬間だった。


 その日から、凛の詩は変わり始めた。言葉の端々に、生命の鼓動が宿るようになった。涼はそんな凛の変化を、誰よりも敏感に感じ取っていた。


「ねぇ凛、私たちって、きっと運命だったんだと思う」


 放課後の図書館で、涼はふいにそう言った。


「運命……?」


「うん。私が自由で、あんたが慎ましやかなのは、きっと意味があるの。二人で一つの詩になるために」


 涼の言葉は、凛の心に深く沈んでいった。まるで、永遠の真実のように。


 図書館での時間は、二人にとって特別な意味を持つようになっていた。本棚の間を歩きながら、互いの好きな本について語り合う。時には黙って本を読み、時には小さな声で詩を朗読し合う。


 ある日、涼は凛の詩集を見つめながら言った。


「ねぇ、凛。私ね、あんたが詩を読むとき、すごく綺麗だなって思うの」


 凛は少し赤面しながら答える。


「そんな……涼こそ、詩を朗読するとき、まるで違う人みたい」


「違う人?」


「うん。いつもの強がった感じじゃなくて、すごく……優しい顔になるの」


 涼は少し照れたように髪をかき上げた。その仕草に、凛は胸が締め付けられるような感覚を覚えた。


 二人の関係は、周囲の目にも少しずつ映るようになっていた。不良の朝倉と優等生の向田が一緒にいる姿を、誰もが不思議そうに見つめる。しかし、二人はそんな視線も気にならなかった。


 放課後、二人は図書館から帰る道を一緒に歩いていた。夕暮れの街並みが、オレンジ色に染まっていく。


「ねぇ、凛」


「なに?」


「私ね、あんたと話してると、心が落ち着くんだ」


 涼の声には、珍しく迷いが混じっていた。


「涼……」


「不思議でしょ? 私みたいな人間が、こんなこと言うなんて」


 凛は首を横に振った。


「違うわ。それこそが、本当の涼の姿なんじゃないかな」


 涼は少し驚いたような顔をしたが、すぐに柔らかな笑みを浮かべた。


「凛って、私のこと、よく見てくれてるんだね」


 二人の影が、夕陽に長く伸びていく。それは、まるで二人の心が寄り添うように重なっていた。


 その日の夜、凛は日記を書きながら、涼との時間を思い返していた。不良少女の仮面の下に隠された繊細な心。それは、まるで詩のように美しかった。


 凛は新しい詩を書き始めた。それは、涼との出会いが教えてくれた、新しい世界についての詩だった。言葉の向こうに広がる、生きた感情の世界。本の中だけでは決して見つけることのできなかった、確かな鼓動。


 次の日、図書館で涼はその詩を読んだ。


「凛……これ、私のこと?」


 凛は小さく頷いた。涼の目に、かすかな涙が光る。


「ごめんね。でも、書かずにはいられなかったの」


「ううん、嬉しい。こんなに綺麗な言葉で、私のことを表現してくれて」


 涼は凛の手を取り、そっと握った。その温もりは、二人の心をより近づけるようだった。


 春の終わりが近づいていた。桜の花びらは散り、新緑の季節が始まろうとしていた。凛は図書館の窓から外を見ながら、この春に起きた変化を思った。本の中の言葉だけを見ていた自分が、現実の中の詩に出会った。それは涼という、予想もしなかった形で。


「何考えてるの?」


 涼の声に、凛は我に返る。


「ちょっと、春のことを」


「へぇ……私も春が好きになったかも」


「どうして?」


「だって、あんたに会えた季節だもん」


 涼の言葉に、凛は頬を赤らめた。図書館の静けさの中で、二人の心音だけが響いているような気がした。


## 第3章:心の距離


 梅雨の季節が始まっていた。図書館の窓を叩く雨音を聞きながら、凛は涼との関係を考えていた。最初は不思議な出会いだと思っていたものが、今では掛け替えのない存在になっている。


 その日、涼は珍しく元気がなかった。


「どうしたの?」


 凛が心配そうに尋ねると、涼は少し間を置いて答えた。


「ねぇ、凛。私って、本当にあんたのそばにいていいのかな」


 涼の声には、これまで聞いたことのない弱さが混じっていた。


「どういう意味?」


「私って、結局……不良じゃん? あんたみたいな真面目な子と一緒にいて、私、あんたの邪魔してるんじゃないかって」


 凛は思わず涼の手を取った。


「そんなこと思わないで。涼は私に、とても大切なことを教えてくれた」


「大切なこと?」


「うん。本の中の言葉だけじゃない、生きた言葉があることを。涼との出会いが、私の世界を広げてくれたの」


 涼の目に、涙が浮かんでいた。


「でも、クラスメイトが噂してるの聞いたんだ。私と一緒にいるせいで、凛の評判が……」


 凛は涼の言葉を遮るように、強く手を握った。


「気にしないで。私は涼と一緒にいたいの。それだけ」


 図書館の雨音が、二人の沈黙を優しく包む。涼は凛の手の温もりを感じながら、ゆっくりと顔を上げた。


「凛……私も、凛となら、もっと違う自分になれる気がするんだ」


 その言葉に、凛は胸が熱くなるのを感じた。二人は互いを見つめ合い、その瞳の中に、言葉にできない感情を見つめていた。


 雨は次第に強くなり、図書館の窓を激しく叩いていた。しかし、二人の心の中は、穏やかな温かさに満ちていた。


「ねぇ、涼」


「なに?」


「一緒に帰りましょう」


 凛は立ち上がると、涼の手を引いた。


「でも、雨……」


「私、傘持ってるから」


 図書館を出ると、梅雨の雨が世界を潤していた。一つの傘の下で、二人は肩を寄せ合って歩き始める。


「凛って、意外と積極的だね」


 涼が少し照れたように言う。


「涼と一緒にいると、私も変わっていくの。それが、嬉しいの」


 雨音の中、二人の足音が静かに響く。傘から零れる雨粒が、二人の制服を少し濡らしていく。


「凛、ごめんね。さっきは弱気なこと言って」


「ううん、涼の弱い部分も、私には大切」


 涼は黙ってうなずいた。その表情には、安堵の色が浮かんでいた。


 雨の帰り道は、いつもより長く感じられた。しかし、二人にとってそれは決して退屈なものではなかった。肩が触れ合うたびに、心が震えるような感覚。言葉を交わさなくても、確かに伝わる想い。


 駅に着くと、雨は少し弱まっていた。


「じゃあ、ここで……」


 涼が別れを告げようとした時、凛は思い切ったように涼の頬に唇を寄せた。ほんの一瞬の接触。しかし、その温もりは、二人の心に深く刻まれた。


「また明日」


 凛はそう言って、改札へと向かった。後ろ姿が消えるまで、涼はその場に立ち尽くしていた。頬に残る温もりを感じながら、心臓が激しく鼓動するのを感じていた。


 その夜、二人はそれぞれの部屋で、その日のことを思い返していた。凛は新しい詩を書き、涼は凛から借りた詩集を読み返す。距離は離れていても、心はどこか繋がっているような不思議な感覚。


 翌日、図書館で二人は再会した。少し照れくさそうに視線を合わせる。しかし、その空気には温かな親密さが満ちていた。


「昨日は、ありがとう」


 涼が静かな声で言った。


「私こそ」


 二人は本棚の影で、そっと手を重ねた。その接触は、言葉以上の意味を持っていた。


## 第4章:共鳴する魂


 夏の日差しが強くなり始めた頃、図書館は二人の秘密の場所となっていた。誰もいない本棚の間で、二人は互いの存在を確かめ合うように時を過ごす。


「ねぇ、凛」


「なに?」


「私ね、あんたと出会って、自分の中で何かが変わったの」


 涼は詩集を手に取りながら言った。


「私も同じ。涼と一緒にいると、言葉が生きてくるの」


 二人は微笑み合う。その表情には、これまでにない安らぎが浮かんでいた。


 放課後、二人は図書館から少し離れた公園のベンチに座っていた。夕暮れの空が、オレンジ色に染まっていく。


「凛は卒業したら、どうするの?」


 突然の質問に、凛は少し考え込んだ。


「まだ決めてないけど、きっと文学の道に進むと思う。涼は?」


「私? 私なんて……」


 涼の声が途切れる。凛はそっと涼の肩に頭を寄せた。


「涼の未来も、きっと素敵なものになるわ」


「そう思える?」


「うん。だって、涼には誰も持ってない、特別な感性があるもの」


 涼は凛の言葉に、目を潤ませた。


「凛といると、私も夢を持てそうな気がする」


 二人は寄り添いながら、夕陽を見つめていた。その瞬間、世界は二人だけのものになったような気がした。


 季節は少しずつ変わり、夏の終わりが近づいていた。図書館の窓から見える空には、秋の気配が漂い始めていた。


「ねぇ、凛。私たちの関係って、なんなんだろう」


 涼が突然、そう呟いた。


「それは……」


 凛は言葉を探す。


「友達? それとも……」


 涼の声が震える。


「言葉で表せないものかもしれない」


 凛はそう答えた。


「でも、確かに存在するもの」


 二人は黙ってうなずく。その沈黙は、どんな言葉よりも雄弁だった。


## 第5章:永遠の詩篇


 秋の訪れと共に、二人の関係はさらに深まっていった。図書館での時間は、二人にとってかけがえのない宝物となっていた。


 ある日、涼は一冊の手帳を凛に差し出した。


「これ、読んでみて」


 開くと、そこには涼の書いた詩が綴られていた。不器用な文字で書かれた言葉の端々に、凛への想いが溢れていた。


「涼……」


「へたくそだけど、あんたに伝えたくて」


 凛は涼の手を取り、静かに握った。


「違うわ。これこそが、本当の詩」


 二人の指が絡み合う。その温もりは、どんな言葉よりも確かな意味を持っていた。


 季節は移ろい、木々は紅葉し始めていた。図書館の窓から見える景色は、まるで絵画のように美しい。


「ねぇ、凛」


「なに?」


「私たち、これからもずっと一緒にいられるかな」


 涼の声には不安が混じっていた。


「もちろん」


 凛は迷わず答えた。


「たとえ離れることがあっても、私たちの心は繋がってる」


 涼は凛の言葉に、安心したように微笑んだ。


 図書館の静寂の中、二人は寄り添っていた。窓から差し込む夕陽が、二人の姿を優しく照らしている。


「私ね、凛と出会えて本当に良かった」


「私も」


 二人の心は、まるで一つの詩のように響き合っていた。それは、永遠に続く物語の始まりだった。


 夕暮れの図書館で、二人は静かに本を読んでいた。その姿は、まるで一枚の絵のように美しく、穏やかだった。


「これからも、一緒に詩を読もうね」


 涼の言葉に、凛は優しく微笑んだ。


「うん。私たちの物語は、ここからも続いていくから」


 窓の外では、紅葉が風に舞っていた。それは、二人の未来を祝福するかのようだった。


(終)




# 蒼の共鳴

### 向田 凛 詩集


## 第一章:静寂の調べ


### 孤独な読書

古き本の匂いは

永遠への扉

言葉の海を泳ぎながら

私は私を探している


### 図書館にて

埃の舞う午後

本棚の迷路で

私は黙って

永遠を待っている


## 第二章:出会いの詩


### 予感

制服の乱れた

あなたの瞳に

見慣れぬ光を見つけた

それは詩よりも

確かな何か


### 光と影

窓辺で乱れる髪

あなたは自由に見えて

深い孤独を抱えている

私の心は震えている


## 第三章:共鳴


### 図書館の午後

本の間で交わる視線

あなたが詩を読むとき

言葉が命を持つ

私の胸の鼓動のように


### 雨の帰り道

傘の下で寄り添えば

あなたの温もりが

新しい詩となって

私の心を満たしていく


## 第四章:魂の詩


### あなたの名前

「涼」という文字を書けば

夏の風が吹き抜ける

私の心の奥まで

あなたの声が響いている


### 共鳴する心

二つの鼓動が

一つの詩となるとき

世界は美しく変わる

あなたがいるから


## 第五章:永遠の詩


### 約束

本の海を漂って

たどり着いた場所で

私たちは出会った

それは運命の詩


### 蒼の共鳴

言葉では足りない

この想いを伝えるには

ただあなたの名を

心で呼ぶだけでいい

私たちは既に

一つの詩になっている


## 終章:明日への詩


### 永遠の詩篇

本の中の真実より

確かな何かを見つけた

それはあなたという

生きた詩

私たちの物語は

ここからも続いていく

永遠に響き合う

二つの魂の詩として





# 君という光

#### ―涼の詩ノート―


凛へ。

この下手くそな詩たちは、

全部あんたに向かって書いたものだから。

ちゃんと伝わるといいな。

              涼より


### 4月20日

窓際で本を読む君は

まるで違う世界の住人

でも、近づきたくて

私は今日も声をかける


### 4月25日

詩集を読んでみた

むずかしい言葉の意味も

少しずつわかってきたよ

君の世界が、少し近づいた気がする


### 5月3日

図書館の静けさが

昔は息苦しかったのに

君がいると不思議と

心が落ち着くんだ


### 5月10日

私の言葉なんて

きっと下手くそで

うまく伝えられないけど

君となら話していたい


### 5月15日

制服の乱れを直してくれる君の手が

優しすぎて

胸が痛くなる

こんな私にも触れてくれる


### 5月23日

雨の日の図書館

本棚の影で

君の横顔を見つめてた

言えない言葉がいっぱい


### 6月1日

私の心は

からっぽだと思ってた

でも君が入ってきて

あふれそうになってる


### 6月8日

「涼」って呼ぶ君の声

誰にも見せない表情

全部大切な宝物

失いたくないよ


### 6月15日

私なんかが

こんな気持ちになっちゃって

いいのかな

でも、君となら


### 6月30日

君の書く詩は

きれいで優しくて

私みたいな人間には

もったいないくらい


### 7月7日

七夕の短冊に

書けない想いを

この手帳に書くよ

君が読んでくれますように


### 7月20日

図書館で肩が触れて

ドキドキして

本の内容なんて

頭に入ってこない


### 8月1日

夏の日差しの中

君の笑顔だけが

まぶしすぎて

目を逸らしたくなる


### 8月15日

私の暗い部分も

受け入れてくれる君は

きっと天使なんだ

そう思う


### 9月3日

君の詩が変わっていく

私のせいかな?

でも嬉しい

私も君を変えられるなんて


### 9月20日

このノートを

見せる勇気が出るまで

もう少し

私らしい言葉を探すよ


### 10月1日

秋の空みたいに

澄んでいる君の心が

私の曇った心を

少しずつ晴らしていく


### 10月15日(最後の詩)

君という光が

私の闇を照らす

これが恋なら

きっと永遠に

消えない


追伸:

凛へ

下手な詩ばかりでごめん。

でも、これが私の精一杯の言葉。

あんたに出会えて、私は変われた。

ありがとう。

           涼


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