第5話 プロローグ ジン
薄暗いロウライ山の内部を一列になり、ジン達は進んでいた、ゴーベットを仕留めた穴から出てきた内部へ続く横穴は進んで行くにつれて徐々に広くなってきていた。
人が一人通れる横穴で敵に挟まれたら厳しいものになっていた。
しかし予想されていた敵の妨害もなくその気配も感じられない事がジン達には不気味だった。
『最初の地点から今まで進んで来た方向からみて、ここがロウライ山の内部で間違えはないかと思いますが…』
ランは声を落としながら呟いた
『このままバルドがいりゃいいが、300近く予想されていた敵なんて最初のゴーベットのみで、何ともキナ臭えな』
ランの呟きに応えるようバショウも怪訝な顔で答え
『仕方ない、道も広くなってきてはいる、他者の手で道が作られてるのは確認できるしこのまま進むしかない』
キョウは意見に賛同しつつも冷静に歩みを続けることを進言していた。
そんな仲間達の声を聞きながら先頭歩いていたジンはバルドの情報を思い出していた。
神 バルド
闘神と呼ばれる神から生まれ、理念のバルドと伝わる
昔スイレンが国として立ち上がる前より、多くの神々達が眷属達を使い戦っていた。
神を殺す方法の1つとして信仰する物を皆殺しにする為だ、なんて無茶苦茶な方法だろうと思う、だが多くの神がそのようにして戦っておりバルドもそうだった。
かつて世に顕現した際には、自身の眷属ナーベル族の身体を使い、勇猛に戦っていたそうだ。
しかし神々の戦いでソルメーラが力をつけていき、戦いに敗れるとこの山の近くで消えて今まで、痕跡を絶っていた。
それが今になって顕現して近隣の村や町を襲い始めた。
しかし何故今なのだろう?
それこそ今まで隠れていた神が何故今になって、村や町を襲い…勝てない闘いに興じるのか。
ゴリョウ大陸にはソルメーラだけでなく、均衡を保っている強い神は他にもいる、先の闘いでナイル河で闘った狼族の神、不浄のナナクニもそうだ。
ジンはバルドの考えを何とか探ろうとしていたが得られる情報だけで読み解くのは不可能だった。
考えにふけり歩いていると、赤く照りつく光が見えてきた、歩いてきた道を抜けその明かりを確認したジン達は驚愕した。
そこはただ広く、先の先まで広い空間だった、遥か上空には微かに、空の広がりが確認でき、そして下方には明かりの元となる溶岩が存在していた
赤くグツグツと煮え立ち、神秘的にもみえる真っ赤な湖は自身の存在以外全てを溶かすよう熱気を放っていた。
『こりゃ、、落ちたら一溜まりもねぇな、この溶岩があるのに、ここを作った奴らはすげぇな』
バショウは感嘆したように、今まで自身が通ってきた道、溶岩の周りに見える道や格子をみて呟いた。
『しかし相変わらず敵の姿は確認できませんね…ここまで来て何も確認できないとなると、ここから先はかなりリスクがありますが、、ジンどうしますか?』
ランは下の溶岩を見ながらジンに答えを求めた
『罠の可能性も捨てきれないが、何より少し異常だと思う、ここまで敵の気配が感じ取れない時点で300近い敵の情報が誤りか、何かここで起きた可能性が高いとみて、ここからは二手に分かれよう、二人は待機残り二人が下に確認にいき何も確認できなければ撤退、もしバルドがいるならそれはそれで仕留める。先行した二人が戻らなければ待機した二名は帰還して報告にしよう』
ジンは仲間達に指示をした。
キョウは指示を受け、何か言いたそうな表情を隠しジンに確認した
『振り分けは?』
『先行には勿論俺が行きます。バルドがいるなら討ち取らないとですから、魔法を使えるランは下方に300もの敵がいるとは思えないし帰還時にもしその敵達と遭遇した際に必要になる為 待機。後、先行するのは、、』
とジンが話してる途中でバショウと目が合いジンはその目をみて残りの振り分けを続けた。
『バショウは自分とキョウは待機。』
各々頷き、ジンとバショウは下に降りる梯子を目指して歩き出した。
待機しているキョウとランから離れたジンはバショウに
『有難うございます。バショウ。正直助かりました、キョウは言わないだけで二手に分かれるのは反対みたいな表情だったので…』
『んま正直降りる組は危険だろ、あちぃしよ。俺も深い理由はキョウと違うかも知れねぇが二手になるのは反対だぞ、全員行くか、全員帰還する方が明らかに良いと思ってるからな』
バショウはジンの作戦に対する反対を述べながらも、危険を承諾したうえで、自分が目で行くと告げた本心は語らなかった。
リスクの高い方にキョウが行くぐらいなら自分が行く。
キョウの妻や生まれてくる子供の為、自ら進んでそちらを選んだ、優しい判断だと思う。
だがジンはバショウの優しさ、、甘さは何れ自身を苦しめる物だと思う、、そしてそれに乗っかった自分も…
『確かにバルドがいた場合、全員で行ったほうが生き残るリスクは高いです、俺もそう思います。任務内容もバルドの討伐であって全員の帰還ではないですからね、、ただ全員死ぬかもしれない選択なら、多少でも生き残りがでる選択を取ってしまいました。申し訳ないです。』先に梯子から下に降り立ったジンは自身の判断の甘さを謝ると、続けて冗談混じりに
『ただ、二手に分かれさせた事で一番大手柄が得られる可能性が高いのはこっちですけどね』
格子の上から下に降りてくるバショウに言葉投げかけた。
『実際バルドがいたら殺せるのはお前だけだろうが、、それとも報告に俺がやったって伝えてくれんのか?』
そんなジンにバショウ呆れながらも笑い、格子の途中から飛び降りてジンの横に降りたった。
『まぁそれでいいなら俺も全然構わないですけどね、それより気づきましたか?』
そういいジンは周りを見渡し微かにだが、何かの気配を感じていた。
『ん?俺は何も感じねぇな、お前程、探知に長けてねぇし、俺がまだ感じられない所をみるとまだ先が長げぇんだろうが…しかし外れクジになっちまったな、、気配があるって事は何かいんだろなぁ』
そういいバショウは諦めたように頭を掻いた。
ジンも気配を感じた事で自身の選択の誤りだったと考え、待機している仲間達と合流して先に進むべきか悩んだが自身が二手に分かれさせた意味を思い出し先へと進み始めた。
ジン達が先へと下っていくとその気配は大きなものへと変わっていった、バショウも既にその気配を感じているのか臨戦態勢を取って口数も減っていた。
近づくにつれ、気配は形づき今までに出会った事のない二つの気配だと確信していった。
内部を降りた先にあった一本道の通路を進んでいると、その気配の正体が間近というところで、ジンはバショウに止まるよう指示をした。
『この先に何かいるのが確認できます。バショウは一旦上に戻ってランやキョウに報告を』
バショウは少し戸惑ったようにジンの指示に返した。
『あん?一人でやるつもりか?バカ言えここからただ戻るだけなんて何の為に俺まで降りてきたのかわからねぇじゃないか、それなら最初から二手にした意味が、、』
バショウはジンに投げかける言葉の最中にジンの考えを察し、呆れと怒りの表情に変わり始めた所で、ジンはバショウの言葉を遮り
『命令だバショウ。上に戻って報告、その後三人で降りてきて中部の辺りで俺と合流出来なれけば死んだものして、帰還しろ』
ジンの言葉使いは長が下の者にくださすものへと変わっており、有無いわずの命令に、バショウは反論しようと葛藤していたが、その言葉を抑えただ短く
『了解』
ときた道を素早く戻っていった。
ジンは元々一人で降りると決めていた。
ただそれを告げれば仲間全員に反対されると分かっていた。
ランやキョウに突っ込まれたら自分が口で勝てるわけないと思っていた、しかしバショウならジンの意思を尊重すると考えていた、そしてキョウとバショウのどちらが危険な目に合うとなればバショウは自らから着いてくると、仲間達の事を死なせたくない。
その思いに嘘はなかったが、ジンは何より自分が死にたくなかった。
神との闘いで仲間が危険な目に合えば自身の弱さが出ると考えジンは足手まといと判断した。
バショウを見送ったジンがそのまま進むと道の終わりが見え、広い空間が姿を表した。
周りは山から作られた壁に覆わられ、少し先に溶岩の熱による明かりで光る空洞が見えた。その空洞の手前に
神はいた。
その姿は、2メートル程の大きさであるが、上半身は筋骨隆々で人と変わらぬ姿だった、しかし下半身は蛇の身体をしており、顔は男性だと分かる人に近い顔立ちだが目は黄色く、鼻の位置には二つの鼻腔だけが開いており、鼻の高さ等皆無に等しいナーベル族の出で立ちだった。
自身の近く右手側に大きな太刀を地面に差し、左手側にはジンと同じぐらいの戦斧が同じよう地面に刺さっていた。
ジンは自分の姿をみて襲ってこない相手に対話できる可能性を感じ語りかけた
『皇国スイレンより任務の為、此方の地に失礼しております、皇の剣ジンと申します。拝見されます御姿や壮観たる権威より、遺憾ながら理念のバルド神様でお間違えないでしょうか?』
ジンの発した言葉に返すようバルドが言葉を述べたが
ジンには理解できなかった。
ジンはここにきて後悔した、古くからいる神だから言葉が分かるだろう考えていたが、同化相手のナーベル族と交わって日が浅いのだろうか使用していた言葉は古代語だった。
ランがいれば通訳して貰えたが今は自分一人、どうしたものかと考えていた。
目的はバルドを討ち取る事だが、何故バルドともう一つの気配しかないのか、他の眷属などは?何故にいまになって等、聞きたい事は勿論、仮に話して貰えずとも探りたい事が出来なくなってしまった。
バルドは此方の意図など関係なしに相手に伝える対話をする気がないのか古代語でずっと話しかけてきていた。
何とも言えない空気の中、バルドの後ろの溶岩の溜まる空洞から何か大きなものが動く気配を感じた。
そしてその生き物は空洞から溶岩を飛び散らせながら壁を這うように歩き姿を見せた、非常に大きく、20メートルは有にいく身体はムカデそのもので威圧するようにバルドの近くで待機していた。
そしてその異様な空間の中であることに気付いた、どうやらムカデは食事が得意でないらしくバルドがいる場所から奥、空洞の近くには千切れた鎧や肉片が多少確認とれた。
バルドが食するとはナーベル族がそういう趣向でない限りは無いと考え、目の前のムカデの食事にだろうと予測した。
確かに戦える者の多くをナイル河に回していたら
残ったそこまで強力でない者を、エサにしてこのムカデを強力にした方が良いかも知れないが、、そもそも食らう事でどれだけ強力になってデカくなっているかもわからないがと、、考えとりあえず300の敵問題は解決したと、ジンは考えた。
そんな矢先バルドは言葉を止め何かを命じたのだろう、ムカデはジンに向けて突進してきた。
ジンは突進してきたムカデから横によけその攻撃から避けた
ムカデの大きさが縦だけでなく横にもでかれば一溜りもなかった。
そのままムカデは壁に激突して入り口を防ぐように陣取り、ジンに頭を向けてきた、ジンの後方位置となったバルドが動かずいてくれれば良かったが、そんなつもりはないらしく、バルドはあろう事か右手に太刀、左手に大きな戦斧を持ちジンに向かってきた。
ジンはすぐさま刀を抜くと、その刀をみてバルドは一瞬怯んだ、その隙をみてジンはバルドに斬りかかろうとしたがジンの右から、勢いよく繰り出された後方にいたムカデの尻尾が飛んできた、巻き込まれそうになった、バルドはギリギリ後方によけ尻尾攻撃から退避したが、ジンは刀で防いだものの勢いで左へと弾き飛ばされた。
弾き飛ばされた衝撃が身体のあちら此方から伝わってくるが、ジンは手足の感覚が正常なのを確認して、更に迫りくるムカデの対処へと身体を動かした、ムカデはジンをそのまま捕食しようと二つの牙と口をそのままジンへと迫らせた。
ジンはムカデの頭の隙間下へと身体を滑り込ますとそのままムカデの頭下に切っ先をいれた。
硬い外皮のムカデの為通常だったら刀をいれるのに苦労したかも知れないがどうやら、身体の下部分はそうでもないらしく、ジンの刀はムカデの中へと侵入していき、刀を入れた箇所から溢れだすよう緑色のムカデの血が、飛び出した。
ジンはその血を気にせず、そのまま刀を縦へと切り下ろすよう動かし、ムカデの傷を縦方向に広げた、ムカデに痛覚があるのか疑問だが、ジンによってつけられた傷でムカデは、その大きな身体を立ち上がらせた後逃げるようにジンから距離をおき壁を伝っていった。その間にもジンは今まさにすんでの所まで迫ってきているバルドの対処に身体を動かしていた。
バルドには剣技というものは無いらしく二本の腕から巨大な太刀と、戦斧をまるでこん棒を振るうよう、ジンにふりまわしてきた
ジンは右手から振り下ろされた太刀を防いだ際に、上手い事いなさないと、防いでも単純に力で弾き飛ばされる事を理解してバルドからの攻撃を流すよう立ち回っていた。
バルドの攻撃は読みやすく左手から横払いできた戦斧の一撃をジンは刀を縦にして防ぐと器用にその力を近いその場で一回転して降り立ち、今しがた自身の身体があった場所を通り過ぎたバルドの左手を切り落とした。
バルドは距離をジンから置き苦痛に顔歪め何かを呟き始めた、ジンは魔法を使うとしているバルドに攻撃をしかけようと身体を急がせたが、いつの間にか天井にいたムカデがジンの頭にむけて吐き出した物を避ける事に時間を取られた。
ジンは直ぐ様横に飛び液体を避けたが、ムカデは液体を吐き出し終えると直ぐに天井からジンへと飛びかかった。
ムカデが飛びかかると同時にバルドも魔法を使用させた。
バルド達、神々が使う力は魔法と呼ばれるが少し違う神々は他の神の力を使う事ができない。
神々はそれぞれ自身の力、自身を生んだ神の力を行使する。
万能でなく、あり方全てを変えられる物ではないが
闘いの神より生まれた、理念のバルド
それは人が、その闘いや力をみてつけた名前だ
バルドの魔法は、根本を覆す、ジンがムカデの攻撃を避避けるという理念を攻撃は受けるものだと変えられた。
ソルメーラの力が宿る刀を持つ、ジンに攻撃を受けて死ぬべきもの等に変える事は、いくらバルドのセイクリッドランド内でもその力は及ばないが、ムカデの攻撃を受けるのはそれに等しかった。
ムカデはそのままジンを口の中に入れるより、身体で押し潰そう天井から自身の身体の重み全てをジンに炸裂させた。
ジンはムカデの頭が降り立つ前に、黒く染まった刀をまるで空を切るようにムカデの衝突前に刀を上空に振り抜いていた。
大きな音ともに土埃が舞い上がり、バルドは今しがた打ち合っていた人間が死んだのを確認するまで臨戦態勢はそのまま保っていた。
土埃がはれると其処は辺り一面緑の血の池だった、今しがた飛び降りたムカデは息はあるものの動きは鈍く這うようにその場で身体を、うねらせていた。
ジンは確かにムカデの攻撃を受けていだが、ムカデが降り立つ前にその頭を切り裂いた。
ムカデ頭の内部は柔らかかったが、切り裂いた隙間がなければ危なかった、通常なら刀が頭を切り裂く前に、ムカデの圧で死んでいた。
しかし皇の剣は魔物や神と闘う力を有していた、それはソルメーラが与えた魔物と同じ力。自身の強化だけでなく武器にも宿らす事ができ、通常ではあり得ない弓の威力等を発揮する事ができる力だ。
そしてジンの持つ刀は《《死の神から生まれた、永劫のソルメーラの力が密に宿ったものでありジンが使用したのはその刀の力だった。
》》だった。
ムカデが降り立つ前に放った斬撃は、ムカデを切り裂き分断されたムカデの身体は、衝撃を流す逃げ場を中に作っていた。
もはや虫の息であるムカデを捨て置き、ジンはバルドに向き直った、バルドが魔法使う事に警戒してたジンだったがバルドにはそのような意志は感じられず、また臨戦態勢を解いていた、神だからかそれともナーベル族の為なのかわからないが切り落とした左手の傷は既に塞がっているようだった。
先ほど死闘を繰り広げていた、目の前にいる神から闘う意志が感じられずジンは戸惑っていた。
言葉もわからないなら今の状況の真意も聞けないので、とりあえず立ち尽くして目の前の神を観察しているしかなかった。
そんな時にジンは見知った気配が近づいて来るのを感じまさかの思いと、現状を打破できる存在に歓喜した。
その助けは直ぐにきた、仲間三人は飛び入るように空間に入ってきて状況の確認を行っていた。
もはや痙攣してるのみのムカデと片腕がないバルド、そして全身緑の液体だらけのジンをみて、結論本人に聞いたほうが早いと考え3人ともジンの近くにきた。
ジンは説明を行い今の状況は自分も困っている事をつげると。
『とりあえずバルドを切っちまう選択肢はないのか?このまま話を聞いて切りにくい状況が出てきたらめんどくせぇし』
とバショウが言うと
『いやまずは話を聞くべきだろう、ジンの予想だとムカデの供物と表現していいか分からないが、ムカデの腹の中以外に他の手下がいないと限らない、何より何故そんな事をしたのかも気になるしな』
『私も同感です。まずは話を聞きましょう、それにジンも話を聞きたいから私が来たのを喜んでいたのでしょう?』
ジンはキョウとランの話に頷き、バルドのに語りかけるようランにお願いした。
ランがバルドに語りかけると、バルドはそれに答えるよう話始めた。時折ランは驚いたり、考えたりコロコロ表情を変えていたがバルドはまったくの無表情のままだった。
キョウは分からないはずなのに真剣に話を聞きバルドの動きに警戒していた。
バショウの興味は既にムカデの死体へと移っており
ジンと共にムカデの亡骸見ながら話しかけてきた
『流石我らが長だなぁよく仕留められたな?こんなデカブツしんどかったろ?』
『正直しんどかったですね…結果が全てですが全員で来たら直ぐに終わったと思いますし、バショウが弓でムカデを、バルドの相手は俺が、キョウが上手くムカデの囮をしつつ弓で交戦、ランがトドメの魔法って流れで…助けに来てくれて本当に有難うございます。』
ジンは下手したら死んでいた状況だったのを反省して
バショウと並んでムカデの食事や溶岩の中でも生存できる理由を考察していた。
話の中でムカデがジンに放った液体の場所をみると、液体自体は既に乾いていたが周辺が変色して溶けていた事から毒液だったのを確信して本当に命があって良かったと噛み締めていた。
時間が過ぎランの呼ぶ声でジンとバショウは二人の元へと駆け寄った。
『話を聞きました、質問等あるかも知れませんがまずは会話から知り得た状況を3人に伝えます。』
ジン達は頷き、確認したランは話を続けた、その間もバルドはただ無表情に立ち尽くしていた。
『そうですね、まず300人程のバルドの眷属達ですが予想の通りムカデのエサになったそうです。そもそもそんなに数はいなかったようで実際は100にいくかどうかだったみたいです。これに関しては国の調査能力に疑問がありますが…エサにした理由はジンの考えと違うみたいです。そもそもがあのムカデこそバルドのようです』
ジン達は驚いた。
今しがた交戦したジンは確かに古代語や理念の魔法を使う所をナーベル族の姿をしたものから受けている、しかし口を挟みたい気持ちを抑えつつ、そちらも含むて説明してくれるだろう、ランの言葉をまった。
『ジンの話を聞いていて私も、嘘をついてると考えました。ではジンが受けた魔法は何か、いま私が話してる古代語を使う貴方は誰なのか…』
『彼はバルドから生まれた神のようです。かつてバルドは闘いに敗れ身体を失いました、ここまでは一致するようですバルドは神の世界と言うべきですかね、そちらで他の神がしたように自身の一部から神を作り出しそれが彼のようです。長い年月バルドを経て信仰により神を顕現しようとしたバルドの眷属はあろう事か措置らのムカデに顕現させたそうです』
ジンは何とも言えなくなった、神を顕現させるのは簡単ではない、神は信仰が合わさった時に、自身が生み出した物にのみ通常顕現できる。例外として誓いにより神は誓いの相手に顕現できる。それこそ神が皆人間のような姿を生み出されば簡単であるが、神は新たな生き物を生み出せないのだ。
全ての始まりは、秩序と混沌の神から始まった。
秩序の神のみなら世界は皆同じ姿の生き物になっていただろう、しかし混沌の神は秩序の神とは真逆の力だった。
混沌の力もあり、世界に神々は同じ者は作れない。そして秩序の神により特に神々はその秩序を守るようされていた。
作れないのか、作るよう意志が働かないのか、結局知るものはいないが、だから神は神をつくるのだ新たな生命を作ってもらう為に。
『バルドが昔作った、ムカデは既に殆どが息絶え此方の個体をここで見つけたそうです。眷属達は恐らく強力な物に顕現さそようと良かれと思ったんでしょうが、、それにバルドも最初は気にしてはいなかったそうです。自身の身体なら後でどうとなると思っていたようです。そしてバルドは自身が作った神も顕現させようとしたそうです』
『ですが、この地は既にバルド自身が支配してるセイクリッドランド。この地で彼を顕現する事は叶いませんでした。そこでバルドは他の場所で顕現をさせたようです、しかしその結果隠れて力を蓄えようしていたのが見つかってしまったようです。』
『彼が作った生き物は弱く、直ぐに死に耐えるものだったようです。そこで別の身体が必要となりナーベル族の男性と誓いを立てたようです。』
『彼は身体を、ナーベル族の男性は一族の繁栄を望んだそうです、しかし戻りバルドの前にいった際にバルドは怒り狂ったそうです。自身の眷属の身体を使っている彼に。暴れ何人かを食らったそうです。バルドがそうなった理由としてやはり同化していた事も原因かも知れません、そのバルドの様子に段々と信仰は薄れていきやがて彼をバルドとして信仰し始めたもの達が出たそうです。』
『そして彼自身、ナーベル族の男性の願いの為、そして同化してきた自身の意志により行動するようになったそうです。ですがバルドが望むのは闘争、狼族は既に兵は集め進軍しておりバルドも向かい討つため多くの眷属を力により歪めたそうです、これにナーベル族の男性が願った内容と遠ざかり彼は何とかしようと残りの信者達や眷属をバルドと誓わさせムカデから離そうとしたそうですが、、時は遅く既にバルドは殆どムカデと同化していたそうです』
ジン達はランの話を聞きながら、立ち尽くしてる神をみていた、ただ呼び出されナーベル族の男性と交わった彼を、古代語…神の言葉しか喋れなかった理由もわかった。
もう少したてば喋れるようになるかも知れないがそれは自身が理解したわけでなく、ナーベル族の男性と強く交わった証拠となる。
もしかしたらバルドも望んではいなかったかも知れない、ただ呼び出されムカデになっていく自分をそして自身で最初は繁栄させていた眷属達を自ら食らう、自身の親であり一部でもあるバルドをみてどう思っていたのか、、ジンは思う、神が人を使うのではなく、人が神を言いように使ってるだけだと…
『彼は最初にジンがここに来た時に、諦めていたそうです、ここには既に神はいないとそう言っていたそうですが、バルドは既に交戦の意志があり、自身もバルドの為に闘うことにしたそうです、ですがバルドはジンに倒され自身が闘う意味が見出せず今に至るそうです』
ジン達は話を聞き終えランに一つの質問を投げかけた
『ここまでの顛末はわかったが彼はどうしたいんだろ?闘う意思はなく今はもうただナーベル族の男性の願いの元生きる彼は…』
ランはジンの言葉を伝えた
彼はその場から動かずただ無表情のままランへと返答を返した。
『ナーベル族の男性の願いを叶えたいと…もし闘うならその願いのもと自身は闘うと、だがもし闘いを避けられるならそうしたいみたいですよ』
ランの言葉を聞き、ジンより先にバショウとキョウは口を開いた
『むしが良すぎるだろ、多少なりともは神様に抱く感情ではないかもだが憐れんでるがね、、それでも周辺の村や町、狼族黙ってないぞ』
『確かに、俺たちが見逃しても狼族は許さんだろう、それに今回の任務内容からして国が討てと命じてるバルドは彼だ、それが誤りだったとしても、もしそれを見逃して狼族との関係が拗れれば不浄の神も黙ってないだろう』
ジンもバショウやキョウに同意だった。そもそも先ほど命のやり取りをして自分が死ぬ可能性もあった中で、見逃す発想にはなれなかったあくまで此方が得たい情報の為、話を聞いただけなのだから。
そこでジンは選択肢を彼に投げかけてみる事にした
『ラン彼に伝えて欲しい、見逃す事はできないと。俺は貴方を切ると、、だがもし貴方が、この世から離れれば其処に残るのはナーベル族の男性のみだとならば闘う必要はなくなる、もし貴方がそのまま戦えばそのナーベル族の男性は死に願いは遠ざかると』
ランは彼にそれを伝えた。
しかし始めて彼は悲しみの表情でランに返答した。
そしてランはジンに告げた
『できないと…一度誓いをたて依り代とした身体を出るのは誓いがなくなっても不可能だと…』
ジンはその言葉を聞き、深く落胆した
ジンの中で彼の返答により自身の中で一つの目的から遠ざかったからだ…
ジンは改めて名もなき神を見た。
自身がどうなるか悟っているはずだった、ジン刀、、死の力によって切られれば神ですらその命はない。
ジンは自分の大切な者を思い浮かべ、同じ結末にはしないと何度も繰り返し行ってきた自分への誓いをたてた。
そして今この場での話は終わりを迎えていた
ジンは三人を下がらせ刀の鞘に手をかけた、名もなき神もまた自身の太刀を構え
ジンは歩みよるよう、近づきながら鞘から刀を抜き、太刀の間合いに入った。
彼は力任せに腕を振り上げ太刀をジンへと振り下ろした。
彼が闘いなれてない理由はさっきの話で理解していた。
ただ生きたいと願う渾身の一撃は半歩横に避けたジンの身体からはズレていた、彼はその振り下ろした太刀をそのまま横に力の限り振り抜いた、しかし太刀は深く身体を沈めたジンの頭上を過ぎさりその刹那、刀を強く握ったジンは終わりゆく神に願いをたてた、
神に生まれ変わりがあるなら幸せになってくれと、、
ジンが放った一閃により名もなき神は事を終えた
魔法使いと皇の剣 @1232123
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