第4話 プロローグ ジン

自身に触れようとする気配を察してジンは目を覚ました。

一眠りした事で昨晩の感情は全てリセットされ、今の状況を判断して、自身に触れようと人物に声をかけた。

『有難うございます。キョウ』


ジンはキョウにお礼を言うと、直ぐに頭を目覚めさせ火の番を変わる準備に入った。

一方でキョウは静かに頷くと身体を丸めて寝る準備にはいっていた。


ジンは目の前で揺れ動く、焚火の火を見ながら昨夜の事を思い出した。

気恥ずいやり取りをしながらも確かにあの時に感じていた一体感をジンは大切にしたいと考え仲間達を見渡していた。

バショウは気持ちよさそうに仰向けで寝ていたがいびきをたてることはしておらず、キョウもランも丸まって静かに寝ていた、ジンはそんな仲間達を見て、自分が最後の火の番なので起こさないよう静かにその時をまった。

辺りが明るくなるにつれ、仲間達は自然と身体を起こし、軽い挨拶の後に指示されたわけでなく各々準備を始めた。


ジンも戦いの準備をしつつ、帰ってきた時の為の荷物は最小限の物にして残りは、消した焚火の場所に置いておいた。


『それで、国からの指示なんて適当なもんだったが、ジンには作戦があるのか?我らが長なんだからじっくり火の番しながら考えてくれたんだろう』


バショウは歩きながら皮肉混じりにジンに声をかけた

『勿論です、侵入して切る。簡潔にいきましょう』


バショウはジンの返答を聞き、助けを求めるようキョウに目線を振るとキョウ諦めて首横にふるだけだった。


そんな様子をフォローするようにランは軽快に木々の上から上と飛び移りながら下を歩く、ジン達に声をかけた。


『昨日の見張りが帰ってこない時点で襲撃を疑われてる可能性もあります。今すぐ作戦を決めるより一旦は山の様子をみてみるほうが良いですね、ロウライ山の内部へ何処から侵入するにより、変わりますしね下手に山の頂上から内部に侵入となったら待ち伏せされた時点でちょっと不利ですし』


ランの話を受けバショウは見習えと言わないばかりにジンの脇を肘でついた


『す、すみません、俺も実際いけば何らか案を出せるんですけどちょっと急に質問を投げかけられたので…つい何も考えずに』


ジンは目でランにお礼をいれるとランは困ったように微笑みながら木々から降り立ち仲間の列に加わった。


『もう私達が歩いてるのはロウライ山の麓になります。でも敵の気配は感じませんね…』


ランが言う通り、確かに敵の気配を感じ取ることはできなかった。


『俺たちがいる場所がまだ敵の本拠地から離れているか…もしくは既に内部を固めてる可能性が高いか?』


キョウが静かに言うとバショウは考えながら

『だとしたら奴さん方はよくわからんな、建物の内部に隠れ守りを固めても、俺らが其れこそ内部に毒で撒いたらどうすんだ?』


『恐らくはどちらでもないかもですね、彼らはあくまでバルドの命に従うだけそれこそ信仰者である人間も確認できてますが、戦闘経験がある人達じゃないかもです。そうなった時にバルドから身を固める指示が出たらそうなるんじゃないですかね?ただそうなると山の内部に入れない、大きさの強力な魔物や眷属は外に配置されるかと…そうなったら出くわす敵は強力な者になりそうですね…』

ジンの話を聞きながらキョウは

『下手したら、内部に侵入する前に大仕事になるな』

と静かに呟いた。


仲間達は全員、皇の剣になってから多くの闘いを経験していた。


しかし最初から皇の剣であるジン以外は、ソルメーラの力があるとはいえ、そもそもが普通に暮らしてきた仲間だ、一緒に過ごしてきた年数は2年近くになるが、そもそも誰も欠けずにいる事が軌跡であり、それが今回の任務にも繋がっている。


今回魔物だけならまだ良い、信仰者である人間達が逃げずに立ち向かってきた楽だが、逃走や命乞いをしてきた時に刀をを向ける覚悟が全員にあるかと聞かれば…問題はなかった。


嫌な気持ちこそあるだろうが、既にそれを乗り越えてきた仲間達だ特にランやキョウ等はそうだろう。


そうした考えにふけりながら歩いていると、隣を歩くバショウと目が合い、通じ合った。

最悪俺等でやればいい。

そう言ってるようだった。


今思えばバショウは最初、自分が年長者だから自分が長だやスイレンに帰れた日には酒場で、悪口言われたからと喧嘩し始めろくでもなかった。


だが誰よりも周りを観て、フォローしたり文句を言いつつ自分についてきてくれた。

いまや目で通じ合う関係になった事を考えて一人で笑っていると、3人から少し距離をあけて歩かれてしまっていた。

暫くしてジンは気配を感じ、後ろを離れて歩いていた三人に止まるよう指示をだした。


『何かいる、、三体なのか三人なのかはわからないが』


その言葉聞き、バショウとキョウは弓を構え、ランは木々の上に飛び移った

ジンも弓を構えると徐々に気配が強くなるを感じた。

(三体か、、しかもこれはゴーベットか!)


ジンは構えていた弓を地面に置くと刀を構えた

『ゴーベットが三体』

短く伝え仲間達も、各々武器を持ち替えた。


そして目線の先には人ならざる者が姿を現した

 バルドの眷属 ゴーベット


身体は木々より大きく、3メートルにもなる。

手足はいくつもあり、丸い球体状の身体に大きな口のみついている、目は無く、音や体温に反応する生き物だ


厄介なのは何でも捕まえて口に入れるしか脳がない為、下手な小細工が通用せず、切っても直ぐに再生する治癒力だ、強力な魔法で一気に倒すか、身体の中にある核を潰すかになる、魔法が使えるランを守りつつ核を狙いに行く旨を仲間に伝えて、ジンはタイミングを伺った。


ヒュン、と言う音共にバショウが繰り出した矢が1体のゴーベットに当たった、そのタイミングでジンは近い位置にいたゴーベットに駆け寄ると、近づいてくるジンを捕まえようと動かされた4本の腕を瞬く間に切り落とした。

そのまま近くのゴーベットを通り過ぎ、奥にいたゴーベットに向けて斬撃を繰り出した、奥のゴーベットは何とかジンを捕らえようと木々をなぎ倒しながら無数の手を動かしていたがその度にジンに切り落とされ、隙をみて身体切りつけられていた。


ジンの手前にいたゴーベットはジンに狙いを定めようとしていた矢先、キョウの目にも止まらない斬撃で手足を落とされ、その度にジンを食するかキョウを食するかで悩み動きを止められていた。


バショウは弓で離れた所にいた、ゴーベットを打ち続けていた、バショウの放つ矢は通常の矢ではあり得ない速さと強さでゴーベットを貫いていた。


その矢は矢羽根を散らし矢筈まで埋め込まれていた。

膠着状態が続く中、バショウが足止めしていたゴーベットが乱戦状態のジンとキョウ、2体のゴーベット近くまで向かってきた、そのタイミングをみてキョウとジンはその場から逃げるよう退避をした。


すぐさま逃げた獲物を追いかけようとゴーベット達が追撃しようとしたが、大きな地響きと共にゴーベット達の身体が沈みだし、まるでゴーベット達の周りのみ、下から穴を開けられたかのように大きな円を描き地面が下へと落ちていた


三メートルはあったゴーベット達は重なり合うよう下に落ちると穴からは炎が噴き上げた。

ジン達はゴーベット達が落ちた穴から噴き上げられた炎の柱をみながら魔法の力を痛感すると共に、その魔法を放ったランに声をかけた


『相変わらず、、凄い威力ですね』

ジンの賞賛にランは笑顔で返し、木々の上から下に降り立った。


『ランの魔法は相変わらずスゲェけどよ、これ騒ぎすぎじゃねぇか?絶対気付かれたろ?』


バショウは消えかけていた炎の柱から、ランに目線を移し語りかけた。


『ゴーベットが三体いたので隠密より三人の命を優先しました。それにゴーベットが三体一緒にいた時点で既にバルド側には警戒されてるはずです。ゴーベットは群れませんから』


涼しい顔でいうランにバショウは両手をあげ降参と示していた。

『ジン、俺たちの動きが既に読まれ警戒されているのは予想通りだったわけだがどうする?』


キョウは穴をみていたジンに問いかけジンは


『それなら思った以上にゴーベットと、この場所で交戦できたのはよかったみたいですね』

とキョウに返答した。


三人もその様子に穴の下を確認し、穴の横に2メートル程の横穴を確認すると

バショウが嬉しそうに呟いた。

『近道じゃねぇか』

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