第3話 プロローグ ジン
『嫌な位置にいるなぁ〜狙いに難くてしゃーない』
頭まで羽織るマントの下に黒く薄い甲冑を着込んだ、髭面の中年の男は小さく呟いた。
その手には弓が構えられており、今まさに獲物に狙いをつけている所だった。
弓の目指す先には対象となる生き物がおり、生き物は下半身は馬のようで、上半身は人の身体に似ているが、その身体は大きく筋骨隆々に毛むくじゃらの身体を携えその顔は赤く、口元からは噛みつかれたらひとまりない牙と二本の角、黄色い目をした異形の者だった。
木々の先におり、警戒を怠らないその姿勢を確認して中年の男はその時まで精神を集中していた。
異形の生き物が足を進めた矢先、近くの草茂に微かな動きがあり、そちらに異形の生き物が意識を向けた時に中年の男から放たれた矢は異形の生き物の額に炸裂した。
異形の生き物は直ぐに矢の飛んできた方に意識を向けたが自身の視界が自分の身体より下にある事に気付いた瞬間意識が途絶えていた。
中年の男は矢を飛ばし、異形の生き物に矢があたりそれでも生き物を仕留めきれてない事を確認していたが既に、臨戦態勢を解いていた。
そして異形の生き物がいた木々の上から降り立ち、異形の首を跳ねた、自身の仲間の元に足を進めていた。
『こいつ一人ぐらい俺の矢が無くてもお前ならやれただろうが、慎重なのは悪くないが2人でやる事だったかね?』
異形の生き物の亡骸の前にいる男に自身のフードを解き、髪を後ろに編んだ黒髪の髭面をさらけ出し、中年男は眼前の男の言葉を待った。
『まぁその通りかもなんですが、最近になって魔物の動きに違いが出てきてより強力なのも確認していたので…俺自身死ぬのは怖いですし』
そういって魔物と呼ばれた生物の首を、腰に携えた刀で切り落とした男は、フードを取り同じく姿を現した。
まだ若く中年の男と同じ黒髪を眉にかかるくらいで無造作に伸ばしていた。
『強力なやつね、、まぁ何匹か手強いのはいたがね、それが言われてる奴なのか分からんし、結局何とかなってるしな。国からの注意喚起だろうが、他に伝えてくる言葉があるだろうと俺は思うがね、いつも有難う御座います!皆様のような忌み嫌われる方々が死にながら戦うお蔭で私達は平和です!とかね』
中年男が茶化しながら自分達の立場を話すので、青年も笑顔を向けながら
『そんな御礼を言われたら逆に困りますけどね…それより野営場所に戻りますか、ランやキョウが待ってますし』
『そうだな…暗くなるし、腹も減ったなにより明日はどうなるか分からんからゆっくり出来る時間を噛み締めるか』
そういって中年男と青年は亡骸をそのまま足を進めた
暫くして、青年と中年男は焚火がついてる2人の仲間が待つ野営場所に辿り着き、仲間達に青年が声をかけた
『戻りました。一応近くに魔物がいて仕留めましたが、警戒した様子から恐らく見張りの1体かと、死体の処理はしてませんが多分大丈夫だと思います。まぁ見つかったら明日の任務が前倒しになるだけという判断で放置しときました…申し訳ないです。』
青年の言葉を聞き、焚火近くで小さな短刀を研いでいた
黒い髪を中年男と同じよう後ろに編み、細い目をした狐顔の男は青年に返答した
『了解です。』
ただ一言、青年の行動でいまの休息時間が無くなる可能性もあり、青年自身その可能性も低くないから話したが特に気にした様子がなく細い目をした男は自身の作業にまた没頭し始めた。
青年と細い目をした男の簡潔なやり取りを終えたのを確認して、もう一人の女性は青年に声をかけた。
女性はまだ若く青年と同じくらいの年で童顔だった、青年以外の仲間と同じように、黒髪を後ろに編んでいたが男性達より髪は長く、痩せてはいるが胸の膨らみが女性らしさを強調していた。
『ジンやバショウが無事でよかったです。それにジンはこの隊の長なんですから、私達は意向に従うだけです』
ジンと、呼ばれた青年は二人の反応が自身の思った通りであり、そして反応に甘える事にして腰を下ろした。
隣に目を向けると既にバショウは自身の世界に入り、いま一番の目標である食事にありついていた。
そんなジンに先ほどの女性が食事をもって来てくれた。
『ジン、どうぞ、予定通りにせよ前倒しになるにせよ食事は大事なんでしっかり食べてくださいね』
そういって木々の葉を簡易的な薄い皿にして、野営前に仕留めた蛇や簡易的な野草と米を渡してくれた。
豪勢とは言えないが、腹が減っている今や食事にありつけない日もあるなかに比べたら最高だと思い、食事を受け取り女性に感謝を述べた。
『有難う、ラン。用意までさせて申し訳ない』
『いいえ、それに余計かもですが謝るのが癖になっていませんか?いつか大事な時に軽いものになってしまうので控えた方がいいですよ』
ジンの言葉に、少しイタズラっぽくランは返すと自身もジンの近くに腰を下ろして、ジンの食事が終わるのをまっていた。
食事をしながらランやキョウをみると既に二人は自分達が戻る前に食事を終えて、明日の準備をしていた事が察しれた、この時間、共有するのをバラバラにしたのが正しかっただろうかなど考えつつジンも食事を終えた。
ジンの食事が終えたのみて、身体を伸ばして寝転がっていたバショウは身体起こし、短刀を研いでいたキョウも動きを止めた。
ランはジンの横で食事を終えるを待っていた為、特に動きを変える事なく言葉を待っていた。
ジンは全員が話に傾ける準備をしている事を確認して前置きなく、任務の確認を話した。
『明日内容確認、目標はロンライ山の内部、対象は神バルド 先ほどの見張りとして処理した魔物の動きからしても分かる通り既にナーベル族に顕現しており、信仰していた信徒達の一部は魔物として姿を変えられてるか、力を得ていると報告はあるが不透明、その他に人の一部やナーベル族、眷属としての魔物が多数確認。強力な者としてゴーベット等が確認されてる。援軍として狼族等が予定されていたが、バルドの眷属達とナイル河付近で交戦していて作戦前合流は期待できない、だが多数の眷属や強力な信徒はそちらに行った為、今回の対象迄に妨害で予想される数は…300ほど其れらを突破してバルドを討つのが内容です。』
話し終えた後、静寂と共に焚火の音のみが辺りに響いていた、今回の任務内容は神殺し、その他予想だと、300近い敵の相手、それを4人で
無謀な作戦だった、そもそもが作戦でもなかった
ただ言葉巧みに並べただけで内容を伝えるのは簡単だった、後は自分らで何とかしろと此方の命に対して何にも感じてない内容に各々言葉でなく、表情や身体で現した。
バショウは諦めているかのように、自分達には高級なタバコの葉を何処から仕入れたのか、大事そうに火をつけ吸い楽しみ始め、キョウは首にかけていた妻から貰ったという、お守りを眺め始めていた…
ランをみると微笑んで表情を隠そうてしていたが、悲しい笑顔になってしまっていた。
ジン達の大陸はゴリョウ大陸と呼ばれ、ジン達が所属する皇国スイレンが絶大な力をもっていた。
そして絶大な神 永劫のソルメーラが長く治めており、ソルメーラは神子と呼ばれる人間を依り代に皇国の姫と呼ばれていた。
ただし実態は政治事などには口を出さず、国の大元は遥か昔から眷属として仕えてきた者達が行い、ソルメーラが表に出てくる事はなかった。
その為、その姿をみた者は殆どいない、なのに絶大な力や信仰を維持できるのはこの大陸の歪みからだった、ゴリョウ大陸は昔より闘争を好む神の眷属が多く血が絶えない大陸だった、今では魔物と呼ばれ自由に欲望を謳歌している生き物も多く、人は蹂躙されるか隠れるか、その神々に仕えるしかなかった。
しかし最初の神子はソルメーラと誓いを結び戦いを終わらせた。
ソルメーラに選ばれるのは血等関係なかった。その都度神子が途絶えたタイミングで隠れていた者達は反旗を起こした。こうした歴史から、人は守護を求め、ソルメーラの信仰を絶やさないよう多くが見えないもの信じた。
ジンは仲間達に明るく問いかけた
『因みにですが、今ここで逃げて、別の場所で暮らすのを希望する物がいても、俺は追いませんし自由です。戦死者扱いです』
その言葉を聞き、バショウはニヤリと笑い冗談にのかった
『それなら俺はそれに乗っかるぜ、バショウはこの地で戦死したと報告してくれ!あっ、ちゃんと大手柄をあげたと言ってくれよ?んでどうすっかな酒場でもやるかな、ヘッ!タバコでも吸いながら毎日酒を飲みながらよ』
キョウはそんな冗談を呆れながらも、口元を少しニヤリながら静かに
『なら俺はその飲み屋に通わせて貰うとしよう、生まれてくる子供の事を自慢してやる』
ランはキョウの話を悲しい表情は消え、明るい表情で
『でしたら私は近くで診療所を開きますね、バショウがやる飲み屋でしたらきっと怪我人も多いでしょうし、キョウの子供も何かあったら駆け込む所が必要ですし、それに生活には困らなそうですし』
そんな話を聞きながらバショウは
『ジンはどうすんだ?皆逃げて同じ所だとよ、なんならうちで雇ってやろうか?今度から俺のが長だな〜逆らうなよ…?』
ジンはそんな冗談話に笑顔で
『勿論、皆一緒で、ただバショウの下は嫌なんで自分で探しますよ、一応あるんですよやりたい事、妹と一緒にね』
そんなジンの返答を聞きながら、各々複雑な感情を示した後、楽しい時間の終わりを知らせるようにバショウが
『それじゃ…そろそろ寝るとするか、、明日は早いしな、最初の火の番はランからでいいか?』
ランも頷き、其々休みの準備にはいった。
ジンは横になり先ほどの楽しい時間を考える、バショウ達は逃げられない何処へも。
皇の剣と呼ばれる者たちは、ソルメーラに選ばれた時に運命が決まっているのだ、、何処へいようと感知され逃げることは許されない。
戦う為に生かされ、戦う以外の選択肢を用意されない
どんな年齢や性別等関係ない、選ばれたら今までの人生を捨て戦う道を用意される。
何より忌み嫌われるのはその力だ、ソルメーラの力を使えば身体は蝕まれやがて魔物になる、そして選ばれる要因は、皇の剣に何らからで関わった者が多いため
選ばれた者は自ら関わりを捨てる。
その為キョウは妻やこれから生まれるだろう子供にもあえず、バショウも店を捨てた、ランは救う者から殺す側に立たされた。
それにより反旗を翻すもの達も生まれた今回のバルドに与するもの達の中にもいるだろう、それでもジンは戦わないといけなかった。
明確に守りたいものがジンにはあったからだ、他の者達と違い選ばれて皇の剣になったわけではなかったから、真の皇の剣として
自身の刀を振るつもりだったそして、、仲間達も死なせないと、、、
そして目を閉じた
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