第3話 誓い
俺が魔神に殴り飛ばされたその場所へ……
「おい!ロアンのやつまだ戦ってるぞ!」
「エルミア様は?」
「二人とも地に伏して……いや、まだ生きてる!」
みんな……
どうして?
「魔神の声が聞こえた。生贄に捧げても無意味なのであれば、生贄に捧げるなんて意味がない」
「ふん。神殿が魔神を恐れてどうする!遅くなってすまなかった、ロアン、エルミア様」
おぉ……神殿長……それに、父さんも……。
「申し訳ございません。魔神を封じる役目を帯びた神殿が魔神に恐れをなして逃げるなど」
「みな、エルミア様がロアンに向けて祈った時、神剣の光が強まったのを見ただろう!」
「祈れ!ロアンと、エルミア様と、神剣に!魔神を倒すのだ!!!」
「私の願いは魔神を倒すことだ。矮小な私の力で良ければ全部持って行ってくれ!どうかエルミア様とロアンを!」
「ワシもじゃ。残り少ない命を惜しんで耄碌したワシを許してくれ。どうか、神よ!」
「ロアン!行け!」
「エルミア様!ロアン!」
神官も、神殿騎士たちも……みんな祈ってくれるのか。
ありがとう。
神剣の光が増していく……。
「うっと~し~な~。全部滅ぼしちゃうぞぉ~~」
まぶしそうに手で顔を覆う魔神。
させねぇよ!
「おぉ!光が!空だ!!!」
なんと、黒く染まった空からも無数の光が降ってくる。
全て俺の手にある神剣に。
覚悟しろよ、クソ魔神!
この俺の、神殿の、世界の怒りを!
エルミアを渡すわけねぇだろ!!!!!!!!!
俺は湧き上がる力を受けて魔神の足をどかして立ち上がり、光に慄く魔神に向けて神剣を振った。
「なっ……なに~~~~~~~~~~……………………………………」
神剣は魔神を真っ二つに割り、神剣の光が周囲を包み、魔神の姿は光の中に消えていった……。
魔神がどうなったのかはわからない。
少なくとも気持ち悪い声を響かせていたクソ魔神がいまは神殿から消え去ったことはわかる。
しかしそれが魔神の消滅を意味するのか、再び眠りについたのかはわからない。
だから俺たちは記録した。
魔神を恐れず、みなが……世界中が祈る中であれば、神剣で魔神を倒せることを。
いつかまた俺とエルミアのような悲しい想いを覚えるものをなくすために。
そして……
「エルミア……」
「ロアン……」
「ではここに、聖女エルミア様と、神殿騎士団長ロアン殿の結婚を宣言する。お二人に神のご加護があらんことを」
俺とエルミアは神殿のみんなに見守られる中、誓いの口づけをした。
泣き顔ばっかり記憶にあるけど、それは今日で最後にしような、エルミア。
***
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