母と祖母

 父は長男というわけではないのですが、祖母そぼと同居していました。

 一緒いっしょに暮らしていると言っても、祖母の家という訳ではなく、こじんまりとした借家住まいです。


 母と祖母は仲が悪く、それぞれがおたがいの悪口を私に聞かせていました。


 覚えている限りでは、私が小学生の頃からこんな感じです。


 こういう時、世間せけんの子供たちがどういう反応をするのか分かりませんが、私はから返事をしつつ、受け流していました。

 泣き虫で、感受性かんじゅせいは豊かな方だったと思うのですが、どこから冷めているところがあたので、特に気にする事もありませんでした。


 祖母がくなり、私も結婚して家を出て、どのくらいった頃でしょうか。

 母が、私に祖母をなつかかしむような、祖母としたしかったような事を言ったのです。


 私は、それを聞いて、反射的はんしゃてきにこたえました。


「おばあちゃんと仲悪かったじゃない」


 時が止まっている母と、苦笑くしょうする父。


「ほら、見られてる」


 父は、そんな事を言っていたような気がします。

 

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わたしのむかしのはなし 汐なぎ(うしおなぎ) @ushionagi

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