奈落旅行

５話「花と塵と生命と（1）」

輝いていた世界。優しかった声。

黒く灼かれた世界。何も聞こえない。

涙は流れない。笑いは出ない。

『救い』、『微笑み』、『祝福』、『愛』。私が与え、救った民に与え返されたもの。

私と民達の理想だったもの。夢だったもの。平和だったもの。愛していたもの。望んでいたもの。記憶として……飾ってはならなかったもの。

救済、失望、絶望、哀、苦しみ、悲鳴。民達が嫌ったもの。私と成ったもの。私ではなくなる為のもの。与え続けられたもの。抑圧できなくなったもの。………………全ての努力を無へと帰す為の塵。灰。記憶。

民達が忘れたがった約束の内容。

少し暗い帰り道。

とある人物は明日への約束を楽しみにしていた。

明日は遠い遠い場所へ行く。そこに何があるのかは知らないが、気にならないが。

好奇心で世を歩む。