第12話 思考のトンネル
遺跡、それは遥か過去の足跡であり歴史が刻まれた場所。あたしは探検が好きだ。古代のお墓、神殿、地下ダンジョン、色んな所をあたしは歩き回って色んな発見をした。古代の杖、宝飾品、聖書の原本の一冊、ワイン、色々手に入れたがどれもこれも最高の経験だった…さぁてここにはどんな宝とか爆弾(宗教的な)ものがあるかな…
「この古代遺跡ってなんの遺跡?」
ふいにカメリアが聞いてきた。
「ここは多分超昔の神が作った神殿跡だと思うわ、壁の模様は神の象徴である調和の曲線、闘争の螺旋が書かれてるし消えない壁の炎は神の技術の一つね」
「神の神殿か、そういえばこの世界の神話ってどんなものなんだ?」
そうか、知らねぇのかこいつ…話しても問題はないだろうし教えるか。
「簡単に説明すると世界が生まれる前に神がいました。そしてその神は地球や星々を作ったあと獣や虫をつくり、そしてそのノウハウを活かして人間を作りました」
「ノウハウて」
「しかし人間の中に愚か者がいて一部の動物と混ざろうとするものが現れました」
「えぇ…」
「そいつらが魔族です。魔族は穢れた存在であり、神の遺志に逆らう物なので人の手で駆逐しなければいけません。これが今までプロパガンダとして利用された偽りの神話」
「えっ、事実は違うのか?」
カメリアはびっくりした様子で聞いてきた。
「うん、嘘。事実はこうよ。神は実は多重人格で好奇心旺盛な側面と真面目な側面が二つあったの。真面目な神は人を作って好奇心旺盛な神が動物を作ったのよ。そしてある時動物が進化して人と同じくらいの知能を得たの。それが魔族。当時の魔族と人間は価値観の違いから恐れ、互いに威嚇しあう仲だったけど結局両者とも神が作った生物だし次第に脅すよりも関わらないほうがいいと判断してずっと離れてそれぞれで暮らしていたの。でも人も魔族もどんどん増えて技術もどんどん上がっていくから衝突して今に至るってわけ」
「そう聞くとこの世界は案外最近作られたように聞こえるが」
「どうかしらねぇ、結局人間も魔族も100年以上生きたやつは滅多にいないし過去のことなんてわかんないからね。ましてや歴史修正とかが横行するところもあるしはっきり言って自分で見ないと信用できないのさ」
「そうか…」
「あんたも」
あたしは彼の胸を指で軽くつつきながら言った。
「何を信じるべきか、何が真実なのか、ちゃんと見極めれる人間になったほうが良いぞ。そうじゃないと一生虚偽の世界で生きることになるからな」
「肝に銘じておくよ」
「ほんとに銘じなさいよ?よく知らないのに他者を傷つけたり、有名なだけの人間の言葉を鵜呑みにしたり、正義を騙った差別のもとで過激なことをする人間に惹かれたりしてない?」
「し、してないよ」
「…ホントにしないでね?すっごく、ほんとに傷つくから…」
「…されたのか?」
彼は優しく聞いてきた。あたしは心の中でいろんなことを思い出していた。
”一人で逃げてきた臆病者め”“神の教えのもと、敵は殲滅するのです””魔族は皆殺しだ!!人類のために!!”
「……まぁ…色々ね…」
「僕でよかったら聞くけど」
「…平気よ、ありがと。あんたって結構優しいよねぇ」
「これくらい普通だろ」
「そう?」
「うん」
「…」
「…」
「なんでこんな話になったんだ…?」
───────────────────────────
なんだか辛気臭い話になった気がする…せっかくダンジョンに来たんだから宝とかモンスターの話をしてほしい…
「こういうダンジョンって魔獣とかでないのか?」
「でないわ、地下深くに埋まってるのにいるわけないでしょ」
そりゃそうだ
「じゃあ神の作った門番とか…」
「それはいるかもね、最奥で神器や宝を守る神の人形は何度か遭遇したわ」
「ほう…?じゃあそいつと宝を目指そうか。ところでこの道はいつまで続くんだ?」
「無限に巡ってるわこれ…こういう種類のループは壁の模様が不自然に途切れる箇所があるからそこを切り離すか隙間に魔力を流せば道は正常に戻るわ」
彼女はランプを僕に渡すと杖を使ってより強い光を生み出した。壁の模様がはっきりと見える。二人で離れないように壁を調べながら進んだ。
「あっ、これ?」
僕は不自然に模様が途切れた壁を見つけた。
「それよ、あたしが魔力を注入するから────」
「おりゃあっ!!」
僕は剣を抜いて思いっきり隙間をぶったたいた。
ドガァン!!!
大きな音と共に壁が真っ二つに割れ、そしてトンネルが二つに分かれた。僕とバルゼーは分断され、どんどん距離が離れていく。
「バルゼー!」
大声を上げたがその声は突然閉まったトンネルにかき消された。今まで来た通路は戻れなくなってしまった。しばらく壁を殴った後、壊せないことを悟って改めて前を向くと、そこには広大な空間が広がっていた。暗くて細部まではわかりづらいが小さい屋敷と建物が整列しており、小さい町に歓迎されているような錯覚を覚えた。
「ソロになったら本番ってことか」
僕は最奥の白い祭壇に向かって歩き始めた。
魔女は二人で旅をしたい サメサメ伯爵 @Baron-Shark-Mouth2041
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。魔女は二人で旅をしたいの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます