太陽が消えた日(仮)

ひかり

第1話

「ユカリ、男は星の数ほどいるのに、なんでその人なの?」


幼なじみのカナは昔からどこか大人びていて、私に何か困ったことや悲しいことがある度、よく相談に乗ってくれる頼りがいのある子。


高校の頃から付き合っていた彼と早いうちに結婚して、今は子育て真っ只中。


「男の人が星の数ほどいても、彼は世界に1人しかいないからだよ。」


だって星は無数にあっても、太陽は1つしかないじゃない。


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わたしが彼…アキラと出会ったのは、休日になんとなく入ったこじんまりとしたカフェ。


カフェというよりも純喫茶と呼ばれるような、本当に昔ながらの喫茶店。


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カフェ【モカ】


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モカにはカウンター席があって、その日は私1人だったこともあったのでなんとなく気を遣ってカウンターに座った。


テーブル席は他のお客さんが使うかもしれないし。


私は昔から変なところで気を遣うような性格だった。それで損をするようなこともあったかもしれないけど、別に苦痛ではない。


でもたまに頭をよぎる言葉があった。


「ユカリは上手く立ち回れるように気をつけた方がいい。人生損してる。」


前に付き合っていた人に何度か言われたことがあった言葉。


ふと思い出すだけで、それが傷ついた!といったような思い出ではないけれど。


そんなことをぼんやり考えながら頼んだコーヒーを飲んだ。ほんのり苦かった。でもそれが美味しく感じるようになったのは、いつからだっけ。


持ってきた本をかばんから取り出した。


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星の王子さま


サン・テグジュペリ


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前に一度読んだきり本棚にしまい込んでいた文庫本。


1人でカフェに行くのだし…と、家から出る前にかばんに放り込んでたもの。

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太陽が消えた日(仮) ひかり @hiina-book

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