第6話 野生動物
「……え?」
朝起きて外に出たら、柵の向こう側に人っぽい何かが倒れていた。でも、その周りを大きな野犬が何匹も囲っていて、姿がはっきり分からない。だけど……手が……見えた。あれは人の手だった。ピクリとも動かなかった…。
僕は怖くなってシドを抱いて家の中に急いで戻った。
「………敷地の外は……危険がいっぱい……」
「にゃ〜」
あの本に書いてあった通りなんだ。シドを撫でて気持ちを落ち着かせようとしたけど、ドキドキと鼓動が早い。撫でる手は冷たくなり、小刻みに震えていた。
「家の……そばに来たらどうしよう……。シドを守らなきゃ……」
魔法は本に書いてあった順に練習をしていた。だけど『生活に便利な魔法』と『自分を守る魔法』を先に覚えてたから、『敵を攻撃する魔法』はまだ覚えて無かった。
窓からそっと様子を見ると、一際大きな野犬が柵の外をウロウロしている。こっに入って来ようとしてるの?!
庭との境に立っている柵は、僕の胸くらいの高さしか無い。あんな大きな犬だったら、柵なんか簡単に飛び越えられちゃう!
窓越しに見ていると、大きな犬は家の方へ来ようと足を上げたり飛んだりしていた。でも、柵の内側には来れなかったみたいで、諦めたのかどこかへ行ってしまった。
他の犬はまだ倒れた人の周りにいる。
不意に頭を上げた犬の口が真っ赤になってた。まさかあの倒れた人を……犬って、ドックフードを食べるんじゃないの?!
僕はそれ以上見ていられずに、その場に座り込んでしまった。心配してくれているのか、シドが震える僕の手を舐めてくれた。
「………怖いよ…シド。人を……食べるなんて……あの犬なに?」
「ニュア?」
本当にあれは犬なの?もしかして外は野生動物が沢山いて、弱肉強食の世界なのかな?それなら生身の人間なんて野生動物からしたら、足も遅いし餌には丁度いいのかも……?
「………戦う魔法を覚えないと!」
図書室に行こうとしたけど、足が立たない。僕はそのまま這って進んだ。図書室に置いてある『魔法辞典』を読むために。
「………あ……………」
やっとの思いで手に取った『魔法辞典』には、『攻撃魔法は外で練習しましょう』と書いてあった。
そうか……そうだよね。家の中じゃ危ないよね。なら今日は無理だ。怖くて外には出たくないもん。
その代わりに他の魔法を練習しよう。『怪我を治す魔法』と『物を調べる魔法』を覚えよう。もしかしたら、さっきの犬の弱点とかが分かるかもしれない。
本に集中していたら、知らないうちに手の震えが止まってた。『怪我を治す魔法』は昨日包丁で切った怪我で試したら綺麗に傷がなくなった。良かった……覚えられたみたい。
もっと練習してちゃんと使える様にしよう。
あ、シドにも魔法掛けておこう。怪我はしていないと思うけど。
僕の家と猫 いずいし @isuzu15
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