第5話 家の外
「シドーご飯だよー!」
「ニャニャニャニャ!」
あれから『一人暮らし教科書(異世界版)』を良く読んで勉強をしてる。ご飯の作り方も本を読んで何個か覚えた。失敗もたくさんしたけど、自分でご飯を作るのは楽しい。
魔法も少しずつ使える様になった。水を出したり、風を吹かせたり、本当にちょっとづつ。いつかシドと一緒に空を飛びたいから。
この前、初めて家の外に出てみた。外から良く見ると公園よりも木が多いし、良く見てもやっぱりここがどこか分からなかった。
それに誰も居ない。人が通らないんだ。
寂しくは………無いな。シドが一緒だし。
だけどたまには外で遊びたかったから、家を囲っている庭みたいな場所まで出てみたんだ。
『一人暮らし教科書(異世界版)』に【敷地の外は危険がいっぱい】と書いてあったから、気を付けて出たけど何もなかった。
『敷地の外』って………もしかしてあの柵の向こう側を言ってるの?
でも庭?が広いから向こう側に用は無いや。
毎日ちゃんとご飯を食べて、掃除は『クリーニング』って魔法を毎晩やってる。
僕、クリーニングって洋服を綺麗にするものだと思ってたけど、洋服以外も綺麗に出来てびっくりした。辞書で調べてみたら『掃除』って意味もあった。だから部屋も綺麗になったんだね。
困ったのは、神様?が僕にくれたお家にお風呂が無かったんだよ。しょうが無いから僕自身に『クリーニング』を使った。そうしたら、僕も綺麗になった。少し髪とか肌がカサカサになっちゃったけど……。次は少し弱く魔法を掛けてみようと思う。
「ゴロゴロ…ゴロゴロ……ゴロゴロ……」
「……………………………」
シドのゴロゴロかわいい。両手をグッパッとして、僕のお腹の辺りでフミフミしながら目を瞑ってる。暫くそれをやると満足するのか眠りにつく。
これって子猫の癖なのかな?ちょっと爪を出すからチクチクする。
こうしてシドと一緒にいると、良いも悪いも、好きも嫌いも何も浮かんでこない。
シドはひたすらかわいい。
ここには僕とシドしかいないんだ。僕を他の人と比べたり、何をしても駄目出しばっかりする。そんなお母さんと会わないで済むのがとっても楽。
もしかして、これがストレスフリーってやつなのかな?お母さんの目を気にしないで自由に……これが神様がくれた自由?
でも、そんな物を貰わなくても自由気ままにしている人は沢山いた。僕は無理だったけど。
………もう比べる相手も居ないんだから、考えるの止めよう。いつまでもお母さんが纏わりついてるみたいで嫌だ。
僕は、僕とシドが幸せに暮らせる様にこれから頑張るんだ。
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