第4話 混乱

4話 混乱



「父さんを知ってる?」


 俺達は工場地帯を離れ、ファミレスでたむろしていた。暦はクリーム山盛りのメロンソーダ、俺はウーロン茶、ターヌはアップルティーをそれぞれ並べる。


 辺りには先程まで戦っていたであろうハンターがぽつぽつと居てそれぞれ山盛りの食い物を並べていた。


「えぇ、有名だもの。パニックになった市民に殺された戦士だって。それで息子さんが地元から離れて暮らしてるらしいとは聞いてたけど、こんなとこに居たなんてね。」


「そんな事知ってるなんて、アンタの親も狩る側なんだな。」


 げんなりとした様子でアップルティーをすするターヌは残念そうだ。まあ、自分としても残念ではあるが、死んだ訳じゃないしまあいっかなって。


「で、どうして1人で工場地帯で戦ってたの?」


「あそこで作ってる惣菜にお世話になってるから」


「へぇ、世の為人の為って訳じゃないんだ?」


 少し思っていたのと違うかも?と顔に出てるよターヌさん。ワイは聖人君子とは違うんだ。


「だって工場が潰れたら工場で作ってる物が作れなくなって生活に影響が出るじゃないか。だから守った。じゃなけりゃなんでボランティアなんぞするかよ」


 一心不乱にメロンソーダを吸い上げていた暦がダンッ!とジョッキをテーブルに叩き付ける。


「だいたいねぇ~!安全な所から文句言ってるだけの人間を助けたいと思うのかってハナシですわ!アタシのパパも穂得さんの仲間だったから一緒に冷や飯喰らいになったしね!パニックになる民衆が一番クソなのよ!」


 こらこらやめなさい暦さん。声が大きいですよ?前に出なくてもやる事やってくれてる人達も居るんです。そう悪しざまに罵るのはおやめなさい……


「ん、私の父さんもさんざん残酷な男呼ばわりされてた。愚民の目の前に現れた害獣を切り捨ててたら後ろから“可哀想だからやめろ!”って叫びながら何度も石を投げられて、反応が遅れて大怪我した。そのせいで愚民にも怪我人がいっぱい出た。なのにパパが悪い事になった。戦うのが嫌いなのは良いけど邪魔しないで欲しい。」



「あら?召集に応じなかった腰抜けどもが一丁前に打ち上げですか?図々しい。」


 嫌な声がしたと思ったら、向こうから皐月と頼我、それぞれの取り巻きが4匹ほど居た。


「テメェら戦いもしない負け犬が近くに居るとメシが不味くなる。消えろ」


「二人とも、行こうか」


 伝票を持って席を立つ。はぁ、ケチがついたな。帰りにファミチキ買って帰ろう。


「待てよ、そこの赤毛の外国人。お前可愛いツラしてるから俺の為に飲み物取って来いよ。代わりに害獣から守護ってやんよ!」


 ゲラゲラと笑いながら指図してくる頼我、あー、コレは目を付けてたな。


「私より弱いチワワには魅力を感じないの。一昨日来てくださる?」


 シーン………と一瞬無音になる。この娘なかなかパンクだなぁ……暴れだすと面倒なのによくやる。


「それに私はこのトドさんに夢中なんです。二人の邪魔をする人はウマに蹴られて死にますよ?」


 頼我の髪の毛が彼の電気の力で逆立ってスーパーサイヤ人みたいになる。うわっ、顔真っ赤だよいたくプライドが傷ついたんやなって。


「テメェ……俺様をコケにしやがって……ぶっ殺してやるぞ……」


 モテる女の子は大変だね。


「ぶっ殺してやるからオモテに出ろよトド野郎!」


 いや………俺……?勘弁してくれよ。


「まあまあ、頼我。頭を冷やしなよ。」


 お冷をコップに注いで渡そうとすると手が滑ってスーパーサイヤ人の顔に水をぶっかける。



 俺が店のカウンターに1500円と伝票を落としながらダッシュで店を出ると店を破壊しながら頼我が追い掛けてくる!


「ぶっ殺す!!」


「おまわりさーん!ってそうださっきまで害獣が出てたから出払ってる!」


 後ろから電撃が飛んできてあちこちに被害が!

 商店街に被害が出たらいけないな。ならば人間が少ないさっきまで戦闘区域だった国道に!


 国道に出た瞬間!黒い影が目の前を駆け抜ける。イノシシか!国道の警察が手こずってるって言ってたな?!


「ライオン野郎!害獣がまだくたばっちゃ居ない!今はヤツを倒すぞ!」


「俺に指図すんじゃねぇ!テメェをぶっ殺してからブタも殺すゥ!」


 アカン頭に血が昇ってる。警察はバリケードを突破された時にヤツに跳ね飛ばされた人間多数で身動きが取れない様だな。だから人海戦術は小回りが効かないし、範囲攻撃に弱いとあれほど!


 俺は近くのすでにスクラップになっている自動販売機を担ぐと再び突進してくる5メートルサイズの巨大イノシシの害獣に投げつける。


 ガァン!と大きな音がしてイノシシが僅かに減速し、俺の居た場所に雷撃が降り注ぐ。


「術も使えない雑魚は出しゃばんな!殺すぞ!」


「いい加減気づけよ!服にアース仕込んでるから大半の雷撃は地面に逃げてて効いて無いんだよ!いちいち突っかかられるのが面倒臭いからすっとぼけてんのが分かんねぇのかチワワがよぉ!」


 頼我は手から電気弾をパニックになったようにめちゃくちゃに飛ばす!


「アースぅ?!突っかかられるのが面倒ゥ!!!バカにするんじゃねぇーー!!」


「こっちのセリフだ!テメェのプライドを満足させる為に学校行ってんじゃねぇんだよ!!わきまえろボケナスが!!」



 完全に俺しか目に入って無かった頼我が見事に横から突っ込んで来たイノシシに跳ね飛ばされる。ヨシっ!静かになったな!


 方向転換してこちらに走って来るイノシシを真正面に見据えてナタを取り出すとエネルギーを込める。ボンヤリと輝き始めるナタを振りかぶりじっとイノシシの目を見る。ッ!ここだぁっ!


「今夜はボタン鍋だぁ!!」



 キィーーン…………とあまりに大きい衝撃音に耳鳴りがする中、俺の目の前には振り下ろされたナタに真っ二つにされている5メートル超えのイノシシが左右に分かれながら息絶えていた。




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自己防衛したいのが気に入らないのか?! コトプロス @okokok838

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