第3話 氾濫
3話 氾濫
ウゥーー!
ウゥーー!
っは!このサイレンは?!
俺は飛び起きて上着を羽織りながら電話を掛ける。
クソッ非常事態か繋がりにくい!!
「もしもし半蔵!コレはアレだよな!!」
[街の人もあわてて学校や市役所とかに集まってるみたい!!]
朝5時だもんな、ほとんどの人間は飛び起きてるか。
俺は手袋やブーツを確かめると愛用のナタを確認し鞘に納める。
「せっかく馴染んで来てんだ。お出迎えをしてあげよう!!」
[まったく……アンタのおかげでアタシの手数もバッチシよ!方向は西、主要幹線道路にはすでに警察や駆り出された探索者がいっぱい!でも下道にはちょいちょい抜けがあるからね!北西の山際に工場地帯がある。その辺は後回しにされてるからそこに行きましょうか]
北西は……あっちだな!
「うし、準備完了!」
────────
「ちょっ!早い早い!怖いって!」
「耳元で叫ぶな!」
俺は半蔵暦を背負ってダッシュしていた。
だんだん戦場に近づいて来てるのか遠くから破壊音が聞こえて来る。
「そろそろ害獣どもが見えてくるハズ!!高いところ走って!」
「ムチャ言うな!忍者じゃあるまいし!!それに便利な道具を持ってるでしょうが!!」
俺は背中の暦を掴むと比較的高い工場の屋根の上に向かって放り投げる!!
「何すんのよ!嫁入り前の乙女に対して!!もぉ~!」
肩に掛けたバッグから明らかにバッグよりデカいグリップの付いた槍を取り出す暦。
工場建屋の屋根に狙いを付けてグリップにあるトリガーを引くとワイヤーが付いた槍が打ち出され、そのワイヤーを巻き取りながら屋根に立つ。
「さぁ~て!かくれんぼは好きかな?頼れるパートナーはサポートが上手いからね!!」
肩掛けバッグから今度は長い杖を取り出しアンテナの様なアタッチメントを取り付ける暦。
ぶわり、と暦を中心に風が巻き起こる。
「一番近いのはそのまま真っすぐ!そのすぐ左手にもう一匹!」
でかした!!俺は走りながらナタにエネルギーを込める。
「こっちに来るんじゃないよ!!」
目の前に現れた巨大なネズミを鈍く光るナタを叩き付ける様にして斬り伏せる!!
そのまま減速せずに返す刀で左手の巨大ネズミの脇腹を掻っ捌く。
「次!」
「右手の塀の向こうにもう一匹……待って!後ろから誰か来てる!!」
「俺達の邪魔をしない限りはほっときゃ良い!次!」
3匹、8匹、15匹、巨大ネズミがどんどんと数を増やして来る。
「ちょっと来すぎじゃねぇのか?!どうなってる!」
「イノシシが出たんだってさ!!で、国道の方の警察は手間取ってるみたい!あ、でも高速道路の方に出たのは道路公団が押してるみたいだよ!!そんで、後ろから来てた誰かも凄い勢いでネズミをぶっ飛ばしてる!これは予想より楽に終わりそうよ!!」
ちっ、イノシシか、だったらば仕方ないな!だが、誰かさんも戦ってるのか、こりゃ良いや!
暦のナビに従いながらネズミを殲滅していると最後は目の前の空き地に居る集団だけになった。
「よう、誰だか知らないが物好きも居たもんだな。」
俺は暦のナビに通りにネズミを逃さない様回り込みながら狩っていたから途中から来た探索者に声を掛ける。
「やっぱり、アナタかなり強いじゃない。どうしてすっとぼけてたの?」
細い剣を血振りし、眠そうな顔でこちらを見つめる。
「そのボブカットに赤毛は昨日の………」
「ターヌよ。覚えといてほしわぷ!」
風が吹いてコンビニのレジ袋がターヌの顔に当たる。
「ちょっとトド、いつこんな可愛い娘と知り合いになったのよ!」
「昨日、頼我あいてにサンドバックごっこしてるとき」
すると苦虫を噛み潰した様な顔になる暦。
「もういい加減シバき返したら?情けなくならないの?!」
「だって強いと皆の居る所に居るのが当たり前、みたいな話になるだろ?すると身動き取れなくなる。それにアイツは強いのにどこに行った逃げたのかって騒がれて悪者にされちゃ堪らんからな」
「期待されたく無いから道化芝居してたのね?」
眠そうな目でこちらを見つめるターヌ。
その顔には“何か事情があるのかな?”と書いてる様だった。
「助かるよターヌさん。その様子じゃ言いふらさないな。」
「察しはつく。おおかた“そんなに強いならどうしてもっと早く助けてくれなかったんだ”みたいに責められた?」
「少し違うけど………まあ似たようなモンだよ」
座り込むと暦がターヌに事情を教える。
「コイツのお父さんもそこそこ強かったのよ。で、今回みたいな氾濫の時には駆り出されてたんだけどね?警察の人に助けてくれって呼ばれて手助けする為に一時的に別の場所に行ったんだ。それを見てた避難民が何を勘違いしたか「彼は我々を見捨てて逃げた!」って騒ぎ出してね。事情を話てもパニックになった人間は聞く耳を持って貰えず、アイツは裏切り者だって雰囲気が一瞬で出来上がったんだよ。で、逃げる様にこの町に来たの。ちょうどアタシ達も進学する時期だからこの際ほとぼりが冷めるまで別居しようってなってね」
暦が語った話にターヌは納得する様に頷いた。
「ならば貴方は太田穂得さんの息子か。ますます気に入った。仲間に入れてくれ」
眠そうだったターヌが目を輝かせながら俺の手を取った。
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