ナチュラルに狂った世界

「第3回無貌賞 私の発狂日記」主催者自身の作品。

狂った世界を描くのは難しい。本当に狂っていれば常人には理解不能であり、ロジカルに構成する小説とは相性が良くない。詩であればまだよいのだろうけれど。

だから「私の発狂日記」と題された作品を、狂っていない(と信じたい)頭で、どう構成し、その狂気をあまさず表現するのか、は書き手それぞれにさまざまなアプローチがある。

この作者の場合は「インスピレーション」に任せたインプロビゼーションの結果として狂気を生み出したのだろう。30分で書いた、とのことだが、30分だからこそ書けた作品だと思う。ストーリーはまあひどい(狂人しか出てこない世界だから)けれど、それを読みながら、やはりどうしても語り部の「オレ」の目を通してその世界を理解しようとしてしまう。その世界のとらえ方自体が狂っているのだからできるはずはないのだけれど、それでも一瞬「オレ」のことは理解できるんじゃないか、と思う瞬間がある。

このバランスは天性のものだろう。