第3話 強敵、リッチー現る

 私達は変なモンスターと対峙した。

 明らかに言葉が通じそうで、まるで僧侶の人みたい。

 だけど全身が黒い布で覆われていて、体中が腐っているっていうよりも骸骨のようで、白骨化しているのに臭いがした。


「な、なにかな?」

「分からないけど、嫌い」

「ねぇ、貴女は何者? ここにいるってことは、よくないものだよね? さっき私達を攻撃して来たのは、貴女でしょ?」


 ウルハちゃんは丁寧に言葉を交わした。

 けれど所々に棘があって、今にも剣を抜きそうだ。


「フハハ、ワガタマシイノヨビカケニコタエヌカ。オモシロイ、オモシロイゾ!」


 モンスターは人間の言葉を発した。

 ゾクリとしたのは私だけかな? 太腿がピクピク震えてしまうと、私は恐怖心を駆り立てられる。

 そんな姿がカメラ越しに映ってしまうと、スマートウォッチの画面にコメントが大量に流れる。



:アスムさんしっかり

:大丈夫、アスムさんなら

:アレ、ヤバいモンスターじゃね?

:リッチーだ。リッチーだよ!

:マジもんか。リッチーは本気でヤバいぞ

:もしかしてリッチーが人間の魂を奪っていたのでしょうか? だとすればすでに消えてしまった人達は……



「ウルハ!」

「うん、このモンスターがリッチー。ってことは今の攻撃は、リッチーが使う有名な技。ソウルハントかな?」


 ウルハちゃんは淡々と知識を披露する。

 ソウルハント。明らかに凄そうな技だ。

 私は警戒しつつ能力を活性化させると、全身をゾクリとする感触に浸る。


「ウルハ!」

「ん?」

「フハハハハ。ソコマデシッテイルノナラ、ナオノコトタマシイガホシクナル。クラエ、ソウルハント!」


 リッチーは布を広げた。すると薄灰色をした腕が二本伸びる。

 その腕の形は悲痛に苦しむ魂のようで、私達を襲う。

 アレを受けたら間違いなくダメ。そんな気がしており、先に警戒が強まった。


「ウルハ、カラン!」

「分かってるよ、アスム」

「見えてるなら、避ければいい」


 私は刀を抜くと、ソウルハントの腕を切り裂く。

 時間まるごど断ち切る刀だからか、ソウルハントも私には届かない。

 おまけにウルハちゃんは翼を広げ、ソウルハントを本体から外し、カランちゃんも全身を電撃で覆った。


 バチン!


 ソウルハントは私達を掴もうとしたけれど、捕まえられなかった。

 簡単に弾き返してしまうと、リッチーは慄く。

 こんなこと想定していなかったのか、険しい顔色を浮かべた。


「ワガソウルハントヲカワスカ。オモシロイガユルセヌナ。マスマスホシクナル!」


 リッチーは私達に牙を剥いた。一体どれだけの人をこの技で飲み込んで来たのか分からない。

 けれど薄灰色の腕がたちまち伸びると、私とウルハちゃんは前に出る。

 リッチーの届かない所から一気に攻撃を繰り出した。


「ウルハ、お願いできる!」

「任せて。よっと」


 私はウルハちゃんに体を支えられると、夜空に飛び立つ。

 するとソウルハントは執拗に私とウルハちゃんを狙った。

 長い長い腕が何処までも伸びると、体を何所でもいいから掴もうと必死だ。


「ニゲテモムダダ。ソウルハントハドコマデモオウゾ」

「追って来てるよ、ウルハ」

「分かってる。このまま惹き付けるよ」


 私とウルハちゃんは全力でリッチーを惹き付けた。

 ソウルハントの数は二本。リッチーの腕と同じ数だ。

 つまり、これ以上ソウルハントが伸びることは無い。それなら話は簡単で、アイコンタクトも無しでカランちゃんは察してくれた。


「充電完了」


 カランちゃんの低いダウナーが聞こえた。

 それを受け、私は刀を振り上げて叫ぶ。

 慣れないせいか、仮面越しでも恥ずかしくて赤面する。


「いっけぇ、カラン!」

「ハッ!?」


 リッチーもこれには動揺が走り、目の前にカランちゃんの姿があった。

 いつの間にそこにいるのか。そして手に持つ見たことも無い武器の正体は何か。

 目玉の無い瞳を向けると、電撃を纏い一瞬で近付いたカランちゃんに攻撃される。


「これでお終いでいいよね?」


 ジャッシャァ―ン♩♩


 カランちゃんが振り下ろしたのは特別なギターだ。

 電撃を纏い、勝手に弦が弾かれると、溜め込んだ電気が一気に発散。

 強烈な一撃をリッチーの体に叩き付けたのだが、何故かリッチーはピンピンしている。


「えっ?」

「フハハ、ヤハリオモシロイ。ソノタマシイ、ワガカテトナレ」


 リッチーはそう言うと、布の中から三本目の腕が伸びた。

 真っ直ぐカランちゃんの首元に伸びると、隠していた本当の腕を見せる。

 リッチーに腕など最初から無い。伸ばした腕の正体。それはソウルハントで取り込んだ人間の腕だって、この時の私は直感した。如何してそう思えるのか、そんな理由私には分からないけれど、空気と一緒に流れ込む「助けて」が生々しかったからだと思う。

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2024年12月12日 21:32
2024年12月13日 21:34

【悲報】豆腐メンタルで底辺配信者な私が、クラスの人気配信者とグループを組んでバズったんだが〜肝試しには御用心の巻〜【短編】 水定ゆう @mizusadayou

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