拳銃

屑木 夢平

拳銃


雨上がりの住宅街

スーパーからの帰り道

おぼつかない足取り

まだ濡れている傘の先端から涙みたいにこぼれ落ちた水滴は

水溜まりに呑まれて消えてしまった


半額の刺身

ロング缶のチューハイ

やけに安いエナジードリンク

そして自決用の拳銃を

買い物袋に詰めこんで西へ西へと放浪する


太陽の光を浴びなさいと心療内科の先生が言った

でも太陽がどの方角から昇るのかわからない

晴れた日の行軍

雨の日のシグナルロスト

曇りの日にはまた一つ墓標をたてよう


中途半端な夢と中途半端な希望を持ち

中途半端な努力ゆえの中途半端な成果を得て

親友達はそれが普通と言うが

僕はその普通さに耐えきれず沈んだのだ


高架下の無人の公園

古びたベンチに誰かが忘れていった銃には

弾丸が一発だけこめられていた

僕はそれを肌身離さず持ち歩き

寝る前に一度だけ引き金を引く

今日がその六回目だ



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拳銃 屑木 夢平 @m_quzuki

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