第17話

『起きてよ、陽茉莉ちゃん』

頭の中で誰かの声が聞こえた。

聞き覚えのある気もするが、はっきりと分からない。そのくせ、ひどく懐かしいのがに落ちなくてつい、声を無視する。思い出せそうで思い出せないもどかしさに寝返りをうつ。

『陽茉莉ちゃん、そろそろ起きなくちゃ』

とは言われても、そう簡単にはいかない。まだ目覚まし時計の音は鳴っていないのだ。あのけたたましくも忌々しいアラームの音が朝を知らせるまでは、一秒たりとも早く起きてやらないと思う。

『陽茉莉ちゃん、陽茉莉ちゃん』

届きそうで届かない理不尽さと疎外感に、鼻の奥がツンとなる。

声はまだ聞こえる。気のせいか体を揺すぶられる。

『目覚ましなら昨日、セットし忘れていたよ』

「、、、え?」

目が覚めた。

さっきまでの眠気は何処へ行ったのやら、目が覚めた。

「おはよう、陽茉莉ちゃん」

「あ、おはよう、、、って呑気に挨拶している場合じゃない!!」

時計の針は七時半過ぎだ。

このまま急がないと確実に遅刻する。

「陽茉莉ちゃん、お困りかな?」

「やばいやばいやばい!!」

急いで高校の制服に身を包み、鞄を持って慌ただしく一階に続く階段を駆け下りる。

「陽茉莉ちゃん、付根を忘れてるよー!」

「あ、ありがとー!」


結局、ギリギリで間に合った。

「もう少し早くノアさんが起こしてくれれば良かったのに、、、」

「陽茉莉も大変だね〜」

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奇術師と不思議な物語 相川美葉 @kitahina1208

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