酸いも甘いも噛み分けてきた男たちの今と過去、そして。

当主であった父と嫡男であった義兄を追い出し、尾形の当主になった紫月には、三人の忠臣がいる。

野性味のある、領内一の剣豪・樹。
女好きで無敗の軍師、伊織。
女性的だが長槍と火縄銃で右に出るものはいない薬師、周。

そんな彼らには、様々な敵がやって来る。
南条領から差し向けられた忍・乱は、その中の一人伊織を篭絡しようと考えていたが、見抜かれ捉えられる。
「『愛妾』ということにしておけば、尾形領で生きることが出来る」と提案された乱は、名前を「氷室」に変え、伊織と行動をともにする。
伊織と日常を送るにつれ、彼女は自分の過去を思い出し……。

飄々としている彼らだが、その過去には愛する人を踏みにじられたことも、亡くしたこともある。

強い者は弱き者を利用し、弱き者は搾取される過酷な戦国の世。
それでも自分は自分であることを忘れず、意志を貫き通すものたちがいる。
気の抜けば下克上される世界で、酸いも甘いも噛み分けてきた男たちは、はたしてこれから世の中をどう見ていくのか。