殲滅モード? そんな機能が僕に……?
間に合ったとはいえ隊長は瀕死の重症を負っていた。同じく俺も無理したせいでボロボロだった。
結論から言うと隊長は無事だ。
前線基地で待機していた博士のおかげで後遺症もなく戦線にもまた復帰できる。
博士は医療分野にも長けているみたい。天才ってすごいね。
それと今回の作戦だけど生き残ったのは俺と隊長だけだったらしい。
他の部隊は殲滅兵器も含めて全滅。だからなのかVIP待遇で療養してる。
俺の記憶媒体と目覚めた隊長の報告を聞いて宇宙人たちは大騒ぎ。
連日議会に呼び出されている博士の愚痴が止まりません。
相変わらず気密情報を漏らしまくり、俺しか聞いていないからいいんだろうけど。
隊長はすごく落ち込んでいる。
仲間たちを死なせてしまい責任を感じているようだった。
まだ傷が治りきっていないのに隊長は遺族へ謝罪しに行くというので、俺も同行した。
すっごい罵倒された。
殲滅兵器のくせに役立たず!と殴られたり蹴られたり水をぶっかけられたりした。
隊長ではなく俺が。
それが狙いだったから別にいいんだけどね。
申し訳なさそうな顔で謝る隊長から食事を奢ってもらうことになった。
実はこの身体になってまともに食事するのは初めての俺です。
料理が運ばれた段階で俺の身体のことに気付いた隊長が気まずそうな顔を浮かべている。
なんでもないかのように食事を始めた俺を見てホッとする隊長。
ま、味はしないんですけどね。
こうして見ると、普通の十代の少女って感じがして、ちょっとドキドキしてる俺です。
そういえば二十代後半の独身男だったんだよな俺って。
殲滅兵器以前だったらどう接していいのか分からなかった。
今は身体が勝手に動いて喋ってくれるからOK。
ははは、ブラックジョークだよ。
食事が進みデザートを食べていると、隊長がポツリと自分の身の上話やどうして作戦に参加することになったのか語ってくれた。
想像よりもヘビーな話に俺の心の中の涙腺は崩壊寸前だった。
隊長はとある宇宙貴族の養子で、まだ赤ん坊のころ母親と一緒に宇宙を漂流していたところを拾われたらしい。
母親をひと目見て気に入った宇宙貴族は、身分を保証し保護する代わりに自分のものになれと迫ったとのこと。
隊長のことも面倒を見てくれるならと母親は頷いた。
こうして宇宙貴族の15番目の妻となった母親だが、それなりに苦労はしたもののそう悪い生活じゃなかったみたい。
隊長の世話や宇宙貴族との夫婦生活を満喫して2年前に病気でなくなった。
問題はここからで、母親がなくなったあと宇宙貴族もすぐに突然死したみたい。
それが病気かそれとも暗殺かは今となっては分からないけど、隊長の取り巻く環境はガラリと一変したんだ。
財産を没収され、暗殺者を仕向けられ、強制的に結婚させられそうになって、直接的にも間接的にも嫌がらせを受けて、いよいよ身の危険を感じたから対Ωの戦線に志願した。
これで1部隊の隊長にまで上り詰めるあたり才能があったんだろうなと思う。
食事を終えて分かれるとき、隊長から握手と微笑みながら礼を言われた。
互いに次相まみえるときに無事だったらそのときはよろしくとのこと。
たぶん隊長が死ぬよりも前に、俺の殲滅兵器としての役割を終える方が早いんだろうな。
そう思うと少しセンチになる俺です。
研究室に戻ると、珍しく博士が浮かない顔で携帯ゲーム機で遊んでいた。
いつもなら暴言やら大騒ぎしながら遊んでいるのに。
これが虫の知らせってやつなのか漠然とした不安感に襲われた。
博士から語られた次の任務内容を聞いたとき、ああついに来たんだ、と思った。
悔しそうな博士の顔がせめてもの救いだよ。
特殊個体Ω殲滅作戦。
前の任務で見たあの特殊個体のΩを一箇所に誘導し、強化外骨格を着た戦闘体の力で殲滅する。
その任務に選ばれた戦闘体はリミッターを外すことを許可されている。
リミッターを外した戦闘体は制御できない危険物と一緒だ。
確実に暴走し目に入ったものを殲滅するまで止まらない
そして、一度でもリミッターを外した戦闘体は死ぬ。
生身の部分が殲滅モードの出力に耐えきれないからだ。
作戦は1週間後に決行される。
死刑執行を待つ受刑者の気分だ。
はぁ、せめてこの身体が自由に動けるようになったらな。
ついに始まった特殊個体Ω殲滅作戦。
俺は指定座標でΩが来るまで待機。誘導はかつてない規模で編成された正規軍と大量の奴隷と犯罪者を導入をして行っている。
ふぅ、緊張してきた。なんか急に腹が痛くなってきた気がする。ははは、気の所為なんだけど。
遠くの方で聞こえる凄まじい音が徐々に近づいてきている。
思えば大した人生じゃなかったな。
ザ・平凡って感じの毎日を送っていた。
中学校までは真面目に、高校は馬鹿やって怒られた記憶しかない、大学は遊んでばっかりだった。
就職は失敗だったのだろう。超ブラックだったし、何でやめなかったのかと問われたら変化が怖かったんだと今なら言える。
新しいことに挑戦することが怖かった。努力ができなかった。何をするにしても中途半端で決めたことが形になったことはない。
Ωの気配を感じる距離まで近くに来ているのに気づいた。
もし、この作戦が終わってもまだ俺の意識があったのなら、次こそは全力で生きよう。
特殊個体のΩが俺の周りをぐるりと囲む。
1ミリの隙間もないぐらい埋め尽くされたΩ。
完全に包囲されてもはや逃げることはできない。
俺にしか見えない視界に浮かび上がる文字の羅列。
『殲滅兵器被検体E:43895のリミッターを現時点を持って解除。――殲滅モード起動』
同時に俺の意識がブツリと切れた。
宇宙人に身体を改造された俺が対Ω用の殲滅兵器として戦うことになった話。 黒縁 眼鏡 @taketyann
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