おっさん裏切り者のホームレス魔法少女を拾う 〜裏切り者のホームレス魔法少女の能力【共有】によって勇者となったおっさんは、ダンジョンに巣食う魔王を倒す配信者になってFIREしたいそうです〜
第5話 おっさん、裏切り者のホームレス魔法少女の所以を知る 2
第5話 おっさん、裏切り者のホームレス魔法少女の所以を知る 2
「あの日は、朝から雨が降り続いていました」
そう話を切り出した私は、まるで小説の朗読をしているような気分だった。まあ、内容的には小説よりも稀有な体験であると思うので、あながち間違いではないのかもしれない。題名はそうだな、『薄幸魔法少女・木澤遥の裏切り生活』とかはどうだろうか?一部の層には刺さるかもしれないなと我ながら思う。
と、冗談はこの辺にしておいて、正直私はこの話を生涯誰にもするつもりはなかった。何故なら、こんな私にだけ都合のいい話、誰も信じてくれるはずがないからだ。だから、おじさんに正体を明かした自分の行動が信じられなかった。正体を明かしてしまった以上、この話をしておじさんに信じてもらわなくてはならないからだ。
でも、今なら理由が少しだけわかる。私は誰かにこの話を聞いてほしかったのだ。そして、その誰かに選んだのはおじさんだった、猫を見てデレデレしていた優しい目をしたおじさんだ。この人ならもしかしたら信じてくれるかもしれない、私は本気でそう思ったのだ。だから私は話を続ける、あの日のことを思い返しながら。
△▲△
「今日はよろしくお願いします、遥さん」
「こちらこそよろしくお願いします、スノードロップさん!」
今日は私にとって記念すべき日だ!何故なら、新参者のダンジョン探索者であるのにも関わらず、ダンジョン攻略隊のメンバーに選ばれたからである。それも、未攻略ダンジョンのだ!そして、今日がそのダンジョンを攻略する日なのである。
「遥ちゃんもしかして緊張してる?そんなに気張らなくても大丈夫さ!なんてったって俺達には力こそ正義の魔法少女スノードロップ様がついてるんだから!きっと拳一つで攻略してくれるさ!」
「
なんだろう、凄い圧を感じる。見た目はとても清楚でお淑やかな感じなのに、何でだろう?その答えを考えていたせいで、返答が遅れてしまった。
「遥さんが固まってしまいました……やはり遥さんに恐れられてしまったようですね……ねえ長槍さん、どう落とし前付けてもらいましょうか……」
「うげ、スノドロちゃん怖いって!……え、何で能力発動させてるのかな?ここダンジョンの中じゃないよ!何々、『長槍さんの背中に虫がいたので追い払おうと思いまして』だと!?やばいって、それ死んじゃうやつだって!アサダー助けてくれ~!」
「僕みたいな雑魚じゃスノードロップさんのような選ばれた人の前じゃクズも同然だから他の人を頼りなよ。はぁ……なんで僕なんかがこんな大役に選ばれちゃったんだろう……」
個性豊かな人たちだなぁ。そう思いながら三人を見つめていたら、攻略隊の最後の一人の方に声をかけられた。
「ごめんね、ダンジョンに入る前からこんなに騒がしくて。でも、こんな奴らだけど腕は確かだから!」
そう言うと彼女は三人に向かって呼びかけた。
「三人とも茶番はそこまでにしなさい!遥ちゃんが困ってるでしょうが!それと、三人ともちゃんと自己紹介しなさい!」
その鶴の一声で、攻略隊メンバーの自己紹介が始まった。
「ではまずは私から、スノードロップです。能力は【
一人目に自己紹介をしたのはスノードロップさんだった。彼女は今話題のダンジョン配信で、人気ナンバーワンを誇るダンジョン配信者だ。綺麗な蒼髪の清楚な見た目に対して、戦い方は脳筋そのものというギャップが、視聴者にバカ受けしたようだった。
「次は俺だな、長槍ボルグだ!能力は【
二人目に自己紹介をしたのは長槍ボルグさんだった。赤髪のワイルドな見た目の彼はダンジョン配信者ではないが、第一から第九ダンジョンを全て単騎で攻略するという前人未到の記録を作り上げたダンジョン探索者である。ダンジョン探索者四天王の内の一人である。
「はぁ、僕の番が来てしまった……僕のことは置物かそこらへんに落ちている石ぐらいの認識でいいよ……でも、瑠夏さんが怖いからちゃんとするよ……アサダーペンドラゴン……能力は【
三人目に自己紹介をしたのはアサダーペンドラゴンさんだった。ただ、私の知っているアサダーさんとは別人すぎて驚いている。彼はスノードロップさんと同じダンジョン配信者で、女性人気ナンバーワンを誇っている。配信者名義は『アサダーペンドラゴン@みんなの心の勇者』であり、配信の中の彼は何というか、金髪で派手な服装も相まって、まるでホストのような感じなのである。そんな彼の本当の姿がまさか根暗で卑屈だったとは……分からないものである。因みに、彼もダンジョン探索者四天王の内の一人である。
「よし、皆ちゃんと自己紹介できたね!じゃあ最後はあたしの番だ!あたしは
四人目に自己紹介をしたのは立花瑠夏さんだった。緑髪で身長の高い彼女は言うなれば、縁の下の力持ちだろう。先程のやり取りを見れば、この攻略隊を支えているのは紛れもなく彼女であることが火を見るよりも明らかである。そして、彼女の性格的にもそのような立ち位置が性に合っているのだろう。まさしく、攻略隊のお姉さんである。
皆さんからの自己紹介を聞き終え、遂に私が自己紹介をする番が回ってきた。
「皆さん初めまして、木澤遥と申します。能力は【共有】という能力で、私の初期ステータスはこの【共有】の能力によって普通よりもかなり高くなっています。また、私が対象に指定した方に、私の初期ステータス値を加算するという能力も兼ね備えています。因みに、指定できる人数は最大三人までです。まだダンジョン探索者になって日がとても浅いので、皆さんの足を引っ張ってしまうかもしれません。ですが、少しでも足枷にならないように精一杯頑張りますので、何卒よろしくお願いいたします!」
私は自己紹介を言い終え、皆さんの反応を待っていたが、なかなか反応がなかった。まさか、何か変なことを言ってしまったかと思い、自分が何と言ったかを思い返していたら、皆さんが急に私のこと絶賛し始めた。
「やはり遥さんの能力はとても強力です。加護系の能力であるため自分に多大な恩恵があるというわけではありませんが、攻略隊のメンバーにいてもらえると、とても助かる能力です。瑠夏姉の能力とも喧嘩をすることもありませんし、二人がいれば私はもっと強くなることができます。端的に言わせてもらいますと、二人とも最高です」
「確かにこの第十三ダンジョン『黒雨』においては最強の能力かもしれないな!能力値が1に固定されちまったら、いくら掛け算しようが意味がねぇ。だが、加算された後なら意味が大有りってもんよ!遥ちゃん、今回の第十三ダンジョン『黒雨』の攻略はお前が生命線だ!期待してるぜ、ルーキー!」
「はぁ……こうやって新人にどんどん追い抜かれて行って、僕はいつか忘れ去られるんだ……いや、今も同じようなものか……はぁ……」
「もう、お前たち!余計な心配を遥ちゃんにかけるんじゃないよ。度々ごめんね、遥ちゃん。でも、皆が遥ちゃんに期待したくなる気持ちも分かるよ。だって、この第十三ダンジョン『黒雨』を攻略するために、遥ちゃんはいなくてはならない存在だから。そして、この第十三ダンジョン『黒雨』を攻略することで、念願の中級以下ダンジョンの完全攻略が達成されるのさ!そんな一大イベントの主役に期待しない奴なんていないよ!まあ、皆こんなこと言ってるけど、遥ちゃんにばかり重役を担わせるつもりはないから安心して!」
皆さんは本当にいい人たちだ。だから、少しでも皆さんのお役に立てるように、私も頑張らないとな!私はそう心に誓い、皆さんに宣言しました。
「皆さんの期待に応えられるように、私精一杯頑張ります!そして、第十三ダンジョン『黒雨』を攻略して、念願の中級以下ダンジョンの完全攻略を達成しましょう!」
私が役者違いな宣言をしたにも関わらず、皆さんは優しい反応をしてくださりました。
「遥さんは、近いうちに大物になるかもしれませんね」
「しょうがねぇなぁ、四天王の座は譲る気はねぇが弟子にならしてやってもいいぞ!」
「はぁ……人間性すらもいいなんて……僕帰ってもいいですか……」
「男衆、バカなこと言ってんじゃないよ!遥ちゃんを見習いな、あんなにしっかりしてるのにまだ新人だよ!そんな新人が宣誓の誓いをしてくれたんだ、そろそろダンジョン攻略を始めるよ、あんたたち!」
そして、瑠夏さんの掛け声によって意識がダンジョン攻略に向いた私たち攻略隊は、第十三ダンジョン『黒雨』の攻略を開始しました。
このときの私はまだ、あんなことが起こるなんて微塵も思っていませんでした。
『遥さん、どうして……』
『おい遥ちゃん、これはどういう冗談だい?流石にこれは笑えないぜ。どういうことなんだい?答えろ遥!』
『ふ、僕の前で悪事を働こうなんていい度胸じゃないか!やはり君が大物になる運命だったのは真実だったようだね!だがしかし!僕の前でその悪の才能が開花してしまったのは運が悪かったようだね!』
『遥ちゃん……あんたには失望したよ……』
『あははは!失望だって?勝手にお前らが期待してただけだろ!あっ、もしかして私を笑い殺そうとしてる?それだったら少しは効果があったかもね!でも、もうお前らには飽きたわ、消えろ』
おっさん裏切り者のホームレス魔法少女を拾う 〜裏切り者のホームレス魔法少女の能力【共有】によって勇者となったおっさんは、ダンジョンに巣食う魔王を倒す配信者になってFIREしたいそうです〜 マロモカ @nyuno1228
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