打ち上げ花火

櫻井

第1話  打ち上げ花火

12/11 冬の花火大会が行われる、君と花火大会に行くのは三度目になるはずだった、15:00に待ち合わせをして、軽くご飯を食べて18:00からの花火大会に約束をしていたのに、君は来なかった。君は夏の花火より冬の花火の方が好きだった。

「夏の花火は見に行く気しないけど、冬の花火大会は行きたいよね」っていうのが口癖で夏の花火大会に誘っても君は行こうとはしなかった。冬の方が空気が澄んでいるので冬の花火の方が夏の花火よりも綺麗にみえるのはわかるが僕は寒いからいやだと思っていたが君が冬の方が好きだと言うから厚着をして毎回行くようになった。

君は15時を過ぎても16時を過ぎても君が来ることはなかった、君は遅刻するのが嫌いで15分前にはついてるので遅刻することは珍しい、僕の煙草の本数だけが減っていく、そろそろ連絡してみるかと思い携帯ポッケから出すと不在着信が5件入っていて5件とも知らない番号で同じ番号だったが掛けなおししようとは思わなかったがポッケにしまおうと思った時に同じ番号から電話がかかってきた。

「もしもし高橋さんの電話番号でお間違いないでしょうか?」と相手の声は少し焦っているようにも思えた。「はい、高橋です」というと「香澄さんが病院に運ばれまして命に係わる状態なのですが病院の方にきていただけますか?」と言われ僕の頭の中は真っ白になった、状況の説明は電話ではしてもらえなかったが君は命に係わる状態らしい、僕は煙草の火を消して駅まで走った、こんな花火大会の会場でタクシーを拾う方が難しかった。花火大会に向かう人並の逆方向を一人で走って駅について電車に飛び乗った、病院までは一駅だったがこんなに駅が遠く感じたのはこれが初めてだった。最寄駅からはタクシーに乗りタクシー乗り込んで病院に向かったがタクシーすらも遅く感じ、タクシーの運転手に怒りそうだったが怒ってもなにもかわらないと自分をなだめてタクシーに乗っていると「目的地に着きました」と言われたので「おつりはいりません」といって5000円を出し、病院に走り受付で「病院から連絡もらったのですが」というと「こちらです」と言い手術室の前に連れていかれると手術室の前には警察官が何人も集まっていた。僕はその瞬間なにか事件にでも巻き込まれたのかと思ったが警察官の話によると、信号無視をしたトラックに轢かれ意識不明の重体だという、今が山場で手術が成功する可能性は40%だという説明をされた。

僕はどうしたらいいかわからなくて、ソワソワしていた、こんな状況になったのは初めてで君が僕の前からいなくなる可能性もまったく想像がつかなかった。

手術は僕がついた時点で3時間たっているという、後一時間ほどで手術が終わると言われたが「助かる保証はないです」となんども先生から言われた。

助かる保証がないってなんだよと壁を殴ったが僕の中の気持ちは変わらなかった。

一時間後手術は成功した、病室に移された君は意識は戻っていなかったが病室から見える花火はいつもの花火と変わらず綺麗だった。

君の口癖の「夏の花火は見に行く気しないけど、冬の花火大会は行きたいよね」が聞こえた気がした。僕はやっぱり「冬の花火より夏の花火の方がいいよ」と返したが君からの返事はなかった。君の意識はすぐには戻らないが三回目の冬の花火をこんな形で見ると思ってなくて涙がでそうになったが、君が頑張っているときに泣くのは違う気がして僕は涙を流すのを我慢した。四回目の花火はちゃんと君と見れますようにと君の手を握り願った。

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打ち上げ花火 櫻井 @usamimi0923

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