僕の友達は性別不詳
わたあめ
プロローグ
私服での通学が可能の月ヶ丘高校に入学してから1カ月が経過した。
(カップル連れが多いなぁ……)
放課後の図書室、勉強に集中している生徒が多い中で、カップル連れは周囲の視線を気にすることはなくイチャイチャしていた。
(場所を間違えたか……? でも、喫茶店も同じだよなぁ)
今日は週の初めの月曜日、図書館は休みで喫茶店は他の利用するお客さんの話し声で集中できないと思って、図書室を選んだのだが、最初は少なったカップル連れは徐々に数を増やしてきた。
(勉強するなら他所でやってよ。喫茶店とか絶対似合うじゃん)
見せつけるためにこの場所を選んだとしたら、地獄に落としたいとカップルを視界に入れないように課題を進める。
「あの……」
始めてから数分が経過するとショートカットの女の子が申し訳なさそうに声をかけてきた。
「隣……いいですか? 他の席、埋まってるみたいで」
女の子は顔の前でお願いするように手を合わせる。他の席は利用する生徒で埋まっており、空いているのは、窓際に腰かけている僕の隣の席だけだった。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
女の子は私の隣の席に腰を下ろす。鞄から出したテキストは1年生の物なので、僕と彼女は同じ学年ということになる。
「あの……隣の席に座らせてもらってこんなことを頼むのも変な話なんですけど……」
女の子は筆箱を開いてから、そこにあるべきものがないことに顔を白くしていた。
「使います?」
「ほんと……ごめんなさい」
僕は自分が使っていた消しゴムを二つに割り、女の子に返さなくていいですよといって渡す。
「同じ学年ってことは課題も同じですよね。 わからない所は聞いてもいいですか?」
他の生徒の勉強の邪魔にならないように低い声で話しかけてくれる。普段、女子と会話することがないので、見せてほしいといわれたのも初めてなので、僕はルーブリーフに『いいですよ』と返答した。
(いい匂いするし、綺麗な顔立ちしてる。女性特有のキレイな肌)
やばい……。勉強よりも隣の子が気になりすぎて集中できない。
『もしかして邪魔してる?』
女の子は僕の様子が気になったのかルーブリーフにて聞いてきた。
『普段、女子と話すことないんで……。気にしないでください』
クラスの女子とまともに接したことないし、近くの席に座っているのも男子だし。
『俺、女に見えます?』
女の子は不機嫌そうに頬を膨らませながら尋ねてきた。
(え? 女の子だよね……? 好きでそんな格好してる男子じゃないよね?)
女の子の問いかけに僕は理解が追い付かずに返答を返せずにいると、女の子は説明するようにルーズリーフにペンを走らせる。
『俺は見た目は女だけど中身は男なので』
え? どういうことだってばよ……?
『心の性別が実際の性別とは違うってこと。ネットで検索してもらえばわかるんだけど』
前にそんな人がいるって聞いたことがある。
『てか、俺とクラスメイトだよ?』
『マジ?』
『俺は見た時に気づいた。初芝慎吾君だよね?』
いやいや……情報量が多すぎて脳がショートしそうなんですけど!?
『俺は三上美愛。同じ学年だし侑でいいよ』
『あ、よろしく……』
下校時刻のチャイムが鳴り響き、校内に残っている生徒は帰宅を促す放送に従うように、昇降口に向かう。
「慎吾。お礼したいから自販機いこうぜ」
「別にいいのに。てか、下の名前で呼ぶんだ」
「下の名前の方が距離感がなくていいだろ」
僕は美愛君……美愛さんと一緒に昇降口で靴を履き替えてから、学校の近くにある自販機に向かった。
僕の友達は性別不詳 わたあめ @purin2025
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。僕の友達は性別不詳の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます