今は冬なはずなのに、春の風を感じられるようなお話でした。
伝えたい言葉はあるのに...なぜだかどこかに消えていく。きっとそれは誰よりも「言葉」を大事に思うから。全て伝えられるようで、意外と伝えられなかったりする。言葉を使う軽さと言葉にする重さとを繊細で叙情的に表現されています。小さな悩み、葛藤の詰め合わせ。いじらしくもほのぼのする。そんな青春が詰まった作品です。
隣の芝生は青い。自分が持っていないものを持っている人に羨望を覚える。これは多かれ少なかれ誰もが通ってきた道ではないでしょうか。この作品は「言葉に溺れる」主人公が文芸部の後輩である先輩との出会いをきっかけに、自分なりに勇気を出して歩んでいくお話です。ひとつの言葉、ひとつの出会いがその人を変えると言うのが全体の根幹にあるので、とても丁寧に関係や心情の変化などが紡がれています。思春期の少年少女がもどかしくも眩しい青春を送る物語をお求めの方はぜひ読んでみてください。